規格外の21歳・コイブン——バズった“歩き出し”と圧倒的データ
一人は、先週のプレジデンツカップで勝利した米国チームにおいてただ一人「無敗」という快挙を成し遂げた21歳の超新星、ジャクソン・コイブンである。とりわけ、日曜のシングルス戦18番ホールで見せたティーショット直後の自信に満ちた“歩き出し(walk-off)”の動画は、SNSを通じて世界中でバズを引き起こし、彼の規格外の大物ぶりを見せつけることとなった。
今季の「3Mオープン」において、プロ転向後わずか3戦目にしてPGAツアー初優勝という快挙を成し遂げたコイブン。アマチュア時代には世界ランキング(WAGR)で史上3位となる56週連続1位に君臨し、プロ初優勝以降もアプローチ貢献度(SG: Approach)でツアー4位タイ(+1.03)を叩き出すなど、ルーキー屈指の圧倒的なアイアン精度と安定感(トップ10率37.5%)を誇る。彼の目はすでに次の高みを見据えている。
現在、フェデックスカップ・フォールのポイントランキングで62位につける彼は、来季序盤の「シグネチャーイベント」への出場権が付与される「トップ60(Aon Next 10)」入りを至上命題としている。「トップ60に入って来年を迎えることは非常に重要。このユタでさらに順位を上げたい」と野心を隠さない。
あのバズった“歩き出し”について問われると、「相手に自分が揺らいでいるとか、余計なことを考えていると少しでも思わせたくなかった。ただ自信を示したかったんだ」と振り返る。相手に一切の弱みを見せない強靭なメンタルこそが、今の彼の爆発的な勢いを支えている。
【動画】最終18番Hティーショット後、颯爽と歩くジャクソン・コイブン【PGAツアー公式インスタグラム】
地元ヒーロー・フィナウの決断——「ドライバー封印」と話題のパターグリップ
圧倒的な“勢い”を纏う若き才能とは対照的に、地元ユタで“背水の陣”を敷いているのがトニー・フィナウだ。ツアー通算6勝を誇り、ユタ州出身・在住の地元ヒーローである彼は、意外にも同大会初参戦となる。開幕前の火曜日には、主催者推薦で出場するボーウェン・マウスら地元の若手アマチュア3人から熱望され練習ラウンドを共にするなど、地元の大先輩として背中で強い刺激を与えた。
彼にとって深刻なのは現在の立ち位置だ。フェデックスカップ・フォールランキングは、まさにシード確保の境界線である100位。過去の優勝により2027年までの出場権自体は保持しているものの、「秋を終えてトップ100に入り、自分のステータスと居場所を確固たるものにしたい」と、自身のプライドとフルシード権をかけて必死の形相で這い上がりを狙っている。

フィナウはキャリバーゴルフのグリップに変更し、好印象を抱いている
さらに今週は、名物の溶岩エリアでの大たたきを避けるため「ドライバーを封印し、得意のドライビングアイアンで手堅く攻める」という戦略を選択。また、今季10フィートからのカップイン率がツアー3位(60.61%)と中長距離パットが好調な一方で、ショートパットのフェース向きを安定させるために、約2週間前のビルトモア選手権から話題の異形「ホッケースティック型パターグリップ(キャリバーゴルフ社製)」を実践投入している。
このグリップについて、「すべてがターゲットを指し、フェースと一直線になる。カップに近づくほどエイム(狙い)が重要になるからね」と語る通り、ショートパットの課題を克服し、地元の熱狂的な声援を受けて復活を期す。
異質の難コース「ブラック・デザート・リゾート」での攻防
今週の舞台となるブラック・デザート・リゾートは、「黒い溶岩」がコースを取り囲む異質のロケーションだ。フェアウェイキープ率82.26%(ツアーで2番目に広い)と一見飛ばし放題に見える一方で、「ラフからの寄りにくさ1位(平均58フィート5インチ)」「スクランブリング率(リカバリー率)の難しさ3位」という極端なスタッツを持ち、ひとたび溶岩やラフへ外せば大たたきが待っている。
溶岩のプレッシャーの中で、野心に満ちた若者の豪快なスウィングと、シード権に懸ける地元スターの繊細なパッティングが交錯する時、ユタの地でかつてないドラマが生まれようとしている。
写真/Getty Images
