「体調は良くない」という現状と決意
「プレジデンツカップ」の激闘から2週間。現在の状態について問われた松山は、「コンディションはあまり良くない。できることをやるだけ」と、冷静に自己評価を下した。連戦の疲労や体調への不安を隠すことなく、等身大の言葉で現状を語ったのだ。
一方で、日本のゴルフファンに対する特別な想いが、不調を抱える彼の背中を力強く後押ししている。
「月曜・火曜と、朝7時からファンが見に来てくれている。その前でプレーできるのは特別だし、エネルギーにしたい」
滅多にない日本でのPGAツアー開催において、早朝から熱い視線を送るファンへの感謝と、彼らの声援を自らのパフォーマンスの糧にしたいという決意がにじむ。 自身にとって5年ぶりの日本大会制覇がかかる今週。いまだ勝利を挙げていない横浜カントリークラブを舞台に、「本当に良いプレーをしたい」と勝利への意欲を隠さない。
自身の名を冠した「アマチュア枠」への想い

松山英樹と長﨑煌心。長﨑にとって松山は東北福祉大学の偉大な先輩にあたる。見たい選手を聞かれ、「松山さんが実際に試合しているところ」と応えた。初日・2日目のペアリングでは1組前にいる松山。週末、同組に向けて「そうなるように頑張ります」
昨年から大きな注目を集めているのが、松山が発案した「Hideki Matsuyama Amateur Challenge Presented by LEXUS」の存在だ。この大会を勝ち抜いた大学1年生の長﨑煌心が、見事スポンサー推薦による本戦への出場切符を手にした。
大会直前の火曜日、長﨑は松山本人から「明日ラウンドしようよ」と直接声をかけられ、夢のような練習ラウンドを共にした。かつて合宿でアドバイスを受けた松山から「前よりもスウィングが良くなったね」と成長を認められた長﨑は、「どのショットもほぼ90点台。全ての完成度が高い」と世界のトップの姿を目に焼き付けた。得意のロングアイアンを武器に「過信せず、自分を見失わずに強気で攻めたい」と本戦へ意気込む。
会見で長﨑の活躍について問われた松山は、「彼は良いゴルファーだからここにいる。まだ大学1年生で未来は長い。今週が彼にとって良いスタートになれば」と後輩へ温かいエールを送った。
なお、このアマチュア枠の裏には、日本ゴルフ界の未来を憂う松山の切実な想いと行動力があった。
「過去10年間PGAツアーでプレーしてきて、日本人の選手をもっと見たいとずっと思っていた。せっかく日本で大会があるのだから、地元のアマチュアに枠を作れないか」
そう考えた松山は、自らツアー側に直談判を行ったという。
「ツアー側も快く受け入れてくれ、スポンサーの多大な協力があって実現した」
自らの名を冠した大会が、世界へ羽ばたく日本の若者たちの確かな登竜門となることを、誰よりも強く願っている。
日本ゴルフ界の未来への架け橋として
決して万全ではないコンディションの中で迎える、母国でのビッグトーナメント。しかし、目の前の1打に全力を尽くす自身のプレーを通して、そして未来を担う若者たちへの道標として、松山英樹は戦い続ける。自身の背中で日本ゴルフ界の未来を牽引する孤高のエースが、横浜の地でどのようなドラマを見せてくれるのか。その濃密な1週間に、熱い注目が集まる。
写真/岡沢裕行


