世界最高峰の舞台を肌で知る弟のシビアな視点と、初日の公式スタッツ(定量データ)を交差させると、長﨑煌心の「現在地」が浮かび上がってくる。
データと弟の証言が一致する「アマチュアの粗さ」

久常涼の弟・優樹にキャディをお願いした長﨑煌心
大星がこの日、兄のプレーを見て最も「おいおいって感じだった」と指摘したのは、ダブルボギーを叩いた8番ホールだ。グリーン奥の逆目ライからパターを選択して寄せきれなかった煌心のプレーに対し、大星はこう明かして分析する。
「昨年の日本アマに出場した際、8番グリーンを左に外した場合はパターでの寄せが有効だったので、そのことを煌心に話したんです。パターでの寄せが有効という言葉が頭の中にあったんでしょうね。ただ、今回のライや場所は違ったのであそこからはパターじゃなかった。ちょっと冷静さを欠いていましたし、PGAツアーのプロはああいうへんてこりんなミス自体をしないですし、大怪我をせずにパーで抑えてきます」
この弟の指摘する「粗さ」は、公式数値にも如実に表れている。初日のフェアウェイキープ率は46.67%でフィールド72位(最下位)。各プレーの貢献度を示すスタッツでも、「SG: Off The Tee(ティーショット)」は-0.936(60位)、「SG: Around The Green(グリーン周り)」は-1.225(63位)、「SG: Putting(パット)」は-1.260(54位)と下位に沈んでおり、マネジメントとショートゲームの課題が浮き彫りとなった。
「ソニーで2日しか戦えなかった僕からすれば、4日間も学べてうらやましい」

初日を1オーバーの「72」の52位タイで終えた長﨑。最終18番では難しいパーパットを沈めて、歓声を浴びていた
実は、弟の大星自身も「本当は予選会に出てこの大会に出たかった」という強い想いがあった。しかし、今大会の予選会が、丸山ショーンに次ぐ日本人2人目の快挙となった「ジュニアプレジデンツカップ」の日程と重なっていたため、出場を断念した経緯がある。
だからこそ、ロープ外から兄を見る視線には羨望と期待が入り混じる。
「僕がソニーオープンに出た時はカットがあって2日間しか戦えなかった。予選カットがなく、4日間も世界トップの選手たちと回れてコースや雰囲気に慣れることができるなんて、うらやましいです。すごくいい経験になるはずです」
アイアン精度「+1.158」はフィールド14位! 通用する絶対的武器
しかし、スタッツは課題だけを示しているわけではない。長﨑煌心の「通用する絶対的な武器」もまた、数字によって明確に証明されている。
アイアンのキレを示す『SG: Approach to Green(グリーンを狙うショットの貢献度)』において、長﨑は「+1.158」を叩き出し、なんとフィールド全体14位にランクインしているのだ。
弟の大星も、兄のショットのキレには太鼓判を押す。同伴競技者がバーディを奪う中で離されずについていき、自身もバーディを奪い返した2番ホールの精神力。そして「インクレディブルだった」と手放しで称賛した6番ホールのフェアウェイを捉えたティーショット。PGAツアーのシビアなピンポジションに対しても、長﨑のアイアンショット精度は世界レベルに引けを取っていない。
残り3日間の見どころ

兄・煌心のプレーを見守る弟・大星(写真/山口哲平)
弟・大星が「うらやましい」と語ったように本大会は予選カットがなく、出場する全72選手が4日間をプレーできる特有のフォーマットだ。
「初日や2日目は緊張や慣れで損をする部分もあるけれど、3日目・4日目になればPGAツアーの雰囲気に慣れてくるはず。アマチュア特有の粗い部分が戦略や技術でカバーできるようになればもっと伸ばせる。残り3日間のうち2日はアンダーで潜って、最終的に72人中30〜40位には入ってほしい」と、大星はロープ外から期待を寄せる。
世界屈指のフィールドで自らの課題と向き合う濃密な残り54ホール。通用するアイアンショットという武器を手に、長﨑煌心がどこまで戦えるのか注目したい。(文/山口哲平)
写真/岡沢裕行

