「ベイカレントクラシック by レクサス」の最終日、アマチュアの長﨑煌心(東北福祉大1年)にとって、それはまさに夢のような18ホールとなった。同組でプレーしたのは、あのリッキー・ファウラーだ。「物心つかないうちから名前を知っていました。小学生ぐらいの時、弟・大星と一緒にプーマの帽子をかぶって、黄色とオレンジのウェアで練習していたんです」。そう語る長﨑にとって、ファウラーは幼い頃からの絶対的なヒーローだった。しかし、憧れの存在を前にしても、初日のような極度の緊張はなかったという。「初日に比べたら全然慣れてきましたね」。夢の舞台で冷静さを保ち、世界最高峰のゴルフを間近で吸収する余裕すら芽生えていた。

間近で見た「世界の戦略」と、最下位回避で得た「自信」

画像: 憧れのリッキー・ファウラーと最終日でラウンドした長﨑煌心。「前日(3日目)の最終ホールをバーディとしたご褒美ですかね」とは帯同していた彼の母の言葉(撮影/山口哲平)

憧れのリッキー・ファウラーと最終日でラウンドした長﨑煌心。「前日(3日目)の最終ホールをバーディとしたご褒美ですかね」とは帯同していた彼の母の言葉(撮影/山口哲平)

憧れのファウラーとのラウンドで、長﨑が最も感銘を受けたのはティーショットの戦略性の高さだ。

「体はそんなに大きくないのに、ほぼミニドライバーを使って、僕のちょっと後ろぐらいにつけてきていた。さすがだなという感じがしました」

4日間の戦いを終え、長﨑は通算6オーバーの単独69位でフィニッシュした。一方のファウラーは通算9オーバーの71位。

「(出場選手の中で)ビリではなかったことに、ホッとしました。ファウラー選手より上で少しホッとしています」

そう本音をこぼす18歳の表情には、安堵とともに確かな自信が漂っていた。ラウンド中、ギャラリーから飛んだ「一人だけアマチュアだぞ、すげえ」という声に「誇らしかった」と胸を張るように、PGAツアーの舞台で4日間を戦い抜いた経験は、彼にとってかけがえのない財産となった。

データが残酷に暴く「世界との差」

しかし、PGAツアーという世界は甘くない。大会公式スタッツは、長﨑が通用した部分と、世界との間に横たわる分厚い壁を残酷なまでにフラットに示している。

通用したのは、本人が「自信になった」と語るショット力だ。4日間のフェアウェイキープ率は66.67%(54位タイ)、平均飛距離は307.50ヤード(22位タイ)だったが、唯一アンダーパーでラウンドした3日目はフェアウェイキープ率は80.00%(9位タイ)、平均飛距離は299.80ヤード(46位タイ)とPGAツアーのトッププロと互角に渡り歩いた。

一方で、スコアメイクの致命傷となったのがグリーン上である。本人が「一番足りないのはパッティング」と痛感する通り、4日間の平均パット数(パーオン時)は1.87で71位とブービー。

「ドライバーは上位に出ているスタッツなのに、パッティングだけが一番下にいる感じだった」

この自己分析が示す通り、PGAツアー特有のシビアなグリーンに対応しきれず、ショットのアドバンテージをパットで失うという厳しい現実をデータが証明している。

松山英樹が繋いだバトンと、次なる肉体改造

画像: 公式練習日の10月6日には松山英樹と初の練習ラウンドが実現した長﨑煌心(撮影/岡沢裕行)

公式練習日の10月6日には松山英樹と初の練習ラウンドが実現した長﨑煌心(撮影/岡沢裕行)

明確になった課題に対し、長﨑はすでに次なるアクションを起こし始めている。海外の体格の良い選手たちを目の当たりにしたが、松山英樹のトレーナーで、長﨑自身も良く練習にいくトミーヒルズアカデミーのトレーナーを務める飯田光輝氏からの「体を分厚く大きくするのではなく、強くしなきゃいけない」というアドバイスに従い、単なる増量ではなく、飛距離を生み出すための「強さ」を求めて肉体改造に取り組む方針だ。

「松山さんがこういう道を開いてくれて、PGAツアーの舞台に立てたことは本当に大きい。自信にもなったし、課題もすごく見えてきた。自分が目指しているPGAツアーに向けて頑張っていきたい」

2日目終了時に目標としていた「4日間をイーブンパーで上がる」ことはできなかったが、偉大な先輩が繋いだバトンを受け取り、世界との距離を肌で知った長﨑煌心。直近の目標である「日本オープンでの予選通過」、そしてその先にある「マスターズ出場」、そして「PGAツアー参戦」へ。18歳の挑戦は、この横浜の地から新たなフェーズへと突入した。(文/山口哲平)


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