バミューダ島にあるポートロイヤルGC(6828ヤード・パー71)で開催された「バターフィールド・バミューダ選手権」は、最大瞬間風速約18.8m/sにも達する暴風雨の予報により、大会が54ホール競技へと短縮される異例の事態となった。54ホール決着は2024年のAT&Tペブルビーチプロアマ以来であり、54ホール短縮からのプレーオフ突入となると2016年のチューリッヒクラシック以来となった。

暴風雨がもたらした54ホール決戦と「待機の日曜日」

通算16アンダーで並び、プレーオフに進出したオースティン・スマザーマンとシーマス・パワー。二人は日曜日を丸一日、ただ待機して過ごすことを余儀なくされた。スマザーマンは部屋で朝食をとり、ジムでの軽い運動や昼寝、そして町へ出て昼食をとるなどして、この長く重い「心理的空白」の時間をやり過ごしていた。

ここで、興味深いエピソードがある。スマザーマンが昼食のために偶然立ち寄った町中の店は「Flanagan's」というアイリッシュパブだった。「翌日にアイルランド人のパワーと対決することになったのは、少し不吉な巡り合わせだったかもしれない」と本人が振り返る通り、極度の緊張状態の中で起きた些細な出来事が、プロの心理にわずかなさざ波を立てていた。

断崖絶壁の16番と「GCクワッド」が導いた弾道

迎えた月曜日の朝。強風が吹き荒れる中、スマザーマンは周到な準備を怠らなかった。弾道測定器「GCクワッド」を15番ホールへと持ち出し、実際の風の中で数値がどう変化するかを細かく確認していた。

決戦の舞台に選ばれたのは、大西洋の断崖絶壁の上にグリーンが浮かぶコース最難関の名物ホール、16番(パー3・235ヤード)。最大瞬間風速約15.6m/sの海風が吹き荒れる極限の状況下、しかも同じ絶壁のパー3を繰り返すという、ロケーション・設定ともに極めて過酷なサバイバルが幕を開けた。

左からの強烈な風に対し、スマザーマンは「グリーン左奥のカメラマンを狙って打った」と明かす。ボールは風に乗って大きく右へと流され、グリーン右ラフへ着弾した。「自分の感覚と現実がどれほど乖離しているかを示すものだった」と彼が語る通り、弾道データと自然環境を掛け合わせ、風の力を利用してピンへ寄せる、プロならではの高度な思考プロセスがそこにあった。

8番アイアンの打ち分けと明暗を分けたアプローチ

プレーオフでは、両者の技術的なコントラストが明確に分かれた。スマザーマンは、1ホール目の実測178ヤードも、カップが切り直された3ホール目の152ヤードも「すべて同じ8番アイアンで打った」という。風の強弱を読み、低いドローボールで距離を完璧に打ち分ける技術力の高さを見せつけたのだ。

対するパワーは、強風に真っ向から逆らうように「7番アイアンのコントロールショット」でピンを攻め立てる戦略をとった。スマザーマン自身も「あの強風の中で風にぶつけてピンの左へボールを留めるなんて、正直不可能だと思えるほど見事なドローだった。打った瞬間は完璧に見えた」とパワーの圧倒的な技術に舌を巻いていたほどだ。

極限状態の中で超ハイレベルな球筋を打ち続けたパワーだったが3ホール目。ラフからのアプローチにわずかな狂いが生じ、パーセーブに失敗。風の力を巧みに利用して安全圏へと運び、3ホール連続でパーを並べ切ったスマザーマンに軍配が上がった。

人生を変えた2連勝と、崖っぷちからのシード確保

画像: 出場試合2連勝を達成したオースティン・スマザーマン(写真は26年ソニーオープン・イン・ハワイ)

出場試合2連勝を達成したオースティン・スマザーマン(写真は26年ソニーオープン・イン・ハワイ)

勝敗が決した後の彼らの姿は、PGAツアー特有のシビアかつ清々しい現実に満ちていた。

通算99戦未勝利から一転、100戦目のバンク・オブ・ユタ選手権、そして101戦目となる今大会で「2戦連続優勝」という快挙を成し遂げたスマザーマン。彼は初優勝によって得た「自由とプロセスへの絶大な信頼」を胸に戦い抜き、亡き父の矢じりのネックレスとともに勝利を掴み取った。この2連勝によって複数年にわたる長期シード権を確固たるものとし、フェデックスカップ・フォールポイントでも51位へ浮上。来季のシグネチャーイベント出場枠である「Aon Next 10」の最上位へと一気に躍り出た。

一方、敗れたパワーにも決して悲壮感はない。今大会開幕前はポイントランキング103位と、来季のフルシード圏外(100位圏外)の崖っぷちに立たされていた彼だが、この単独2位フィニッシュによってランキングを「68位」まで大幅にジャンプアップさせた。「フルステータス(トップ100)が確定したから文句はない。秋のシーズンとして大きな前進になった」と語る言葉の裏には、シード落ちの恐怖から脱出し、来季の職場を死守したプロゴルファーの極めてリアルな安堵と誇りがあった。

暴風雨、データ、技術、そしてシビアなサバイバル。54ホール決戦の裏側には、PGAツアーの過酷さと奥深さが凝縮されていた。

写真/岩本芳弘


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