「ジュラシック・パーク」で過ごす極上のワーケーション
「みんなから『なぜそんなに試合に出るのか?』と聞かれるよ」
プレジデンツカップ(カナダ)、日本、メキシコ、そしてこの後は南アフリカと、文字通り世界を転戦する理由について、クラーク本人は極めて合理的な思考を明かしている。
「試合勘を保つため、そしてクラブテストをするためというのが理由の一つ。それと、プレーする場所がどこも素晴らしいからなんだ。日本やメキシコ、南アフリカといった美しい場所へ行くのは、仕事でありながら、ちょっとしたバケーションも兼ねている」
その言葉通り、今週の滞在はまさに「ワーケーション」そのものだ。クラークは会見で、開催地ビダンタ・バジャルタの規格外なスケール感を「まるで『ジュラシック・パーク』のようだ」と表現した。今大会にはクラークのガールフレンドや、弟ブレンダンの婚約者も同行。クラークとブレンダンがコースで真剣勝負という「仕事」に励んでいる間、パートナーたちはリゾート内のスパや高級レストランを満喫。前夜に行われたロビー・ウィリアムズのライブを楽しんだほか、滞在中にはシルク・ドゥ・ソレイユのショーも鑑賞する予定だという。
シードの重圧から解放されているからこそ、温暖な極上リゾートで実践的な調整を行い、同時に大切な人たちとの休暇を慈しむ。これこそが、世界ランク5位の強者が実践する贅沢かつ合理的な秋季戦略である。
「結婚式に呼ばないぞ」弟とのタッグと1億7000万円の祝儀袋

26年ベイカレント C レクサスではビッグウェーブ・デイブがバッグを担いでいた(練習日撮影)
今大会、クラークのバッグを担ぐのは実弟のブレンダン・クラークである。普段キャディを務める「ビッグウェーブ・デイブ」ことデイビッド・ペレクダスは、友人の結婚式に出席するためにイタリアへ渡っており、今週は不在。このキャディ交代劇の裏には、なんともユーモアあふれる兄弟の掛け合いがあった。
デイブの欠場が決まった際、弟・ブレンダンはすかさず兄にこう直訴したという。
「俺がキャディをやる。もしやらせてくれないなら、お前を俺の結婚式には呼ばないぞ」
クラークも「もちろん弟にやってほしかった」と相好を崩す。アリゾナに住むクラークとカンザスシティに住むブレンダンは、普段はなかなか顔を合わせる時間が取れない。「だから今週は、楽しくて特別な1週間になる」と、兄弟でのタッグを心から楽しんでいる様子だ。
もちろん、リラックスしたムードの中にあっても勝負への執念は微塵も失われていない。今大会におけるモチベーションの源泉は、シード権でもポイントでもなく、愛する家族への温かい思いだ。
「もうすぐ結婚する弟のために、素晴らしい1週間にして、結婚式やハネムーンの足しになるような良い賞金を稼ぎたいね」
今大会の賞金総額は600万ドル、優勝賞金は110万8000ドル(約1億7000万円)。世界トップ50の豪快すぎる「お祝い金作り」の結末にも大きな注目が集まる。
ツアー最多3勝の圧倒的強さと新レイアウトへの適応

ウィンダム・クラーク(写真は26年ベイカレント C レクサス練習日)
家族への思いを現実のものとする技術的裏付けも、まさに圧倒的だ。クラークが今季挙げた3勝(バイロン・ネルソン、全米オープン、BMW選手権)は、スコッティ・シェフラーらと並びPGAツアー今季最多勝タイ。「バイロン・ネルソン」の最終日には「60(11アンダー)」を叩き出して通算30アンダー(254)の今季ツアー最少72ホールストローク記録を樹立し、「全米オープン」では初日から首位を譲らない完全優勝を成し遂げた。
さらにShotLinkのデータによると、クラークの今季パー3におけるバーディ以上の獲得率は「20.78%」に達している。これはShotLink導入以降のPGAツアー史上第9位に相当する驚異的な数字であり、風とハザードが絡むリゾートコースを攻略する上で決定的な武器となる。
また、今年から大会側が18番・9番・1番・10番ホールをクラブハウス周辺に集約するコース再編を行ったことに対しても、クラークは「上がりホールが非常に難しくなり、観客やテレビ観戦にとっても素晴らしい変更だ」と絶賛している。
世界最高峰のプロフェッショナリズムと、家族への温かい情愛。大物の余裕と人間味が交差するメキシコの地で、クラーク兄弟がどのようなサクセスストーリーを描くのか期待したい。


