「ビダンタワールド・メキシコオープン」の第3ラウンド。ツアールーキーの平田憲聖が通算13アンダーで9位タイにつけ、中島啓太も通算10アンダーの22位タイで踏ん張っている。しかし、彼らの活躍が霞むほど、リーダーボードの最上段には異次元の数字が刻まれている。通算23アンダー。単独首位を独走するアンドリュー・ノバク(米国)だ。

2日間で19アンダーの衝撃――今季ツアー最少タイ「190」で独走

前日の第2ラウンドで大会18ホール最少タイの「61」を叩き出したノバクは、ムービングデーもその勢いを全く落とさなかった。ノーボギーの「62」(9バーディ)をマークし、2位に6打差をつける独走態勢を築いた。

通算「190」ストロークは、従来の大会記録(193)を塗り替えただけでなく、ビクトール・ホブランやオースティン・スマザーマンと並ぶ今季PGAツアー全体の最少54ホールストロークタイ記録となる。

この快進撃を支えているのが、神がかり的なパッティングだ。

第3ラウンド終了時のパット貢献度(SG: Putting)は「12.328」で堂々の全体1位。さらに3ラウンドを通じて10フィート(約3メートル)以内のパットを37回中37回沈め、「成功率100%」を維持している。

画像: TPミルドのパターのことをノバクは、「クローゼットの奥にあって、錆びついているし古いけれど、ボールが入ることは分かっている。ロフト角もライ角も、今は何度なのか全く分からないよ」と話す

TPミルドのパターのことをノバクは、「クローゼットの奥にあって、錆びついているし古いけれど、ボールが入ることは分かっている。ロフト角もライ角も、今は何度なのか全く分からないよ」と話す

前日の「61」に続き、第3ラウンドでも「62」を叩き出し、直近の2日間だけで実に19アンダーを荒稼ぎしている。今季パット貢献度でツアー158位に沈み、「世界で最もパットが下手な1人」と自嘲していた男が、8月のウインダム選手権から投入した「スペック不明の錆びついた古いパター(TPミルド カスタム)」を相棒に、完璧なパッティングショーを演じている。

「1勝0敗」のメンタリティ――過去に執着しないゾーンの作り方

ビッグスコアを出した翌日は、プレッシャーからスコアを崩しやすいのがゴルフの常だ。しかし、ノバクはその定石を鮮やかに覆した。

「好スコアを維持する秘訣は、陳腐に聞こえるかもしれないけれど、本当に『目の前にあるショットを打つだけ』なんだ。直近の5ホールで4つのバーディを奪ったとしても関係ない。170ヤード先のピンに対して8番アイアンで打つなら、その一打にただ集中する。それまでの結果は関係ないんだ」

成功にもミスにも執着せず、すべてのショットを「1勝0敗(1 and 0)」の独立した勝負としてリセットする。この究極のメンタルコントロールが、ゾーンを持続させる精神的な支柱となっている。

逃げ切り率100%のデータと、2028年へ続く巨大な報酬

ノバクには2025年チューリッヒ・クラシック(ペア戦)の優勝経験はあるが、個人戦でのタイトルはまだ手にしていない。

「スコッティ(・シェフラー)やローリー(・マキロイ)でない限り、ゴルフで何度も勝つことはできない。だからこそ、このチャンスは本当に大きい」

今大会の「54ホール終了時6打差リード」は大会史上最大。今季PGAツアーで3日目を終えて6打差をつけた過去4人(J・ローズ、J・ブリッジマン、C・ヤング、W・クラーク)は全員がそのまま逃げ切っており、逃げ切り成功率は100%を誇る。

現在フェデックスカップ・フォール89位のノバクにとって、優勝すれば来季シグネチャーイベント出場権に絡む53位へ浮上するだけでなく、2027年までのシード権、さらには2028年から導入される新フォーマット「PGAツアー・チャンピオンシップシリーズ」への出場資格まで手に入る。「2028年以降への影響も大きい」と本人が語る通り、手に入る果実は極めて大きい。

「完璧なデータ」の呪縛から解き放たれ、研ぎ澄まされた感覚で覚醒したアンドリュー・ノバク。歴史的圧勝劇の完結に向け、残り18ホールも目の前の一打だけに集中する。

写真/Getty Images


This article is a sponsored article by
''.