伸ばし合い必至のタイガー設計コース――求められる弾道戦略
大逆転を狙う彼らが挑む舞台は、タイガー・ウッズが設計したメキシコの「エル・カルドナル」だ。このコースの特異性は、スタッツを見れば一目瞭然である。
昨季のデータによれば、フェアウェイキープ率は「88.67%」、パーオン率は「81.51%」といずれもツアー屈指の高さ(易しさ)を誇る。その結果、コースの平均スコアは「-3.10」という極端な伸ばし合い(バーディ合戦)となった。つまり、フェアウェイに運んでグリーンに乗せるのは当たり前であり、そこからいかにバーディパットをねじ込み続けられるかが勝負の分かれ目となるのだ。
この極端なバーディ合戦を制するための攻略の鍵は、大きく2つある。
1つ目は「パー3の攻略」だ。昨年の覇者ベン・グリフィンは、最終日にすべてのパー3でバーディを奪う離れ業を演じた。これは1983年以降のPGAツアーにおいて史上3人目となる快挙であり、スコアを伸ばし続けるための決定的な勝因となった。
2つ目は「ピンを刺すためのアプローチ精度とティーショットのアングル」だ。今大会のフィールド最上位ランカーである世界ランク23位のライアン・ジェラードは、事前会見で「ここはティーショットを気持ちよく飛ばせる広いフェアウェイ(ジェラードは「ballpark」と表現)だが、セカンドショットで傾斜を正しく使えないと一気にピンから遠ざかる。アプローチの精度がすべてを決める」と証言した。広いフェアウェイに運ぶのは大前提。そこから「傾斜を使ってピンをデッドに攻められるベストポジション」へ運べるかが勝負を分ける。
金谷の「曲がらない弾道」と、平田の「爆発力×高効率ショット」
昨季ツアーでストレート弾道のティーショットを45回(全体5位)記録している金谷拓実の正確無比なショット精度は、このコースを攻め切るための頼もしい武器となる。
そしてもう一人、直近で絶好調の波に乗る平田憲聖の存在も見逃せない。平田は前週の「メキシコオープン」初日に「63(8アンダー)」のビッグスコアを叩き出して11位タイに入り、現地への高い適応力とバーディ合戦に必要な爆発力を証明したばかりだ。さらに今季のフェアウェイキープ率は68.31%(ツアー第19位)、ティーショットの総合効率を示す「Total Driving Efficiency」でもツアー8位をマーク。
このコースで過去の優勝者が奪ったバーディの9割以上(93%)はフェアウェイから生まれている。広いフェアウェイの中から「ピンをデッドに狙えるポジション」へ確実にティーショットを運べる2人のショット精度こそが、ジェラードの語る「精度の高いアプローチショット」を打つための絶対条件となるのだ。
一打で開く「2028年シード」と「メジャーの扉」

今週のPGAツアー「ワールドワイドテクノロジー選手権」に出場する金谷拓実と平田憲聖
フォールシリーズの優勝者に与えられるのは「500pt」。もし平田や金谷が優勝を果たせば一気に通算ポイントを跳ね上げ、圏外から100位以内のフルシードを即座に確定させる。
それだけではない。優勝者には2028年シーズンまでの長期シードが与えられるほか、翌2027年の「ザ・プレーヤーズ選手権(第5のメジャー)」やメジャー大会「全米プロゴルフ選手権」への切符も同時に手に入る。さらに、51位〜60位に付与される翌シーズンのシグネチャーイベント(格上げ大会)出場権(Aon Next 10)までもが射程に入る。まさに一打で2028年までのシードとメジャーへの扉が同時に開く計算だ。
過去にも100位以下から優勝一発で50位台へ跳ね上がった選手がいる通り、そこには「一打でゴルフ人生が激変する」ロマンが詰まっている。
100位の壁を越えるための厳しいポイント差という「現実」と、タイガー設計コースでバーディを量産するための「戦略」。極限のプレッシャーの中、安全策を捨ててリスクを取り、攻め切ることができるのか。生き残りを懸けた日本勢の熱い戦いが幕を開ける。
写真/姉崎正、岩本芳弘
