前回、世界ランキング1位在位期間が歴代3位の名選手、ニック・ファルドのゴルフ観を98年当時のインタビューを通じて、紹介した。

今回は、そのインタビューの続き。ファルドの意外な素顔が垣間見えた。

ボクはみんなが思っているほど理性的な人間じゃないよ。感動的で涙もろい

ーーあなたには、スウィングをストイックに追い求めている人、というイメージがありますよね?

ファルド 苦しそうに追い求めているってイメージがあるみたいだね。でも、そうじゃないんだ。ただゴルフが心から好きなだけ。ボクは時間が許すかぎり、毎日コースに出るけど、今まで一度だって飽きたことはない。本当にゴルフが好きでしょうがないんだ。

90年 全英オープン
14歳でゴルフを始めたファルド。その頃の夢は全英オープンで優勝すること

ーーどこが、そんなにおもしろい?

ファルド 1日だって同じ日がない。1打として同じ状況がない。毎日が全く違う。それに同じ球が二度と打てないじゃない。だからコースに出て、つまらないとか飽きたとか思ったことは一度もないんだ。

ーー楽しくて仕方ない?

ファルド 楽しい日ばかりではないけど、少なくとも飽きたりはしない。どうなったらうまくなれるか。少しでも上達できるか。日々それを学んでいるんだよ。

ーー年齢による衰えを感じることはありますか?

ファルド ゴルフ、それ自体に関しては、日々発展途上だと思っているよ。だから衰えは感じない。肉体的な衰えはある程度認めなくちゃいけないだろうけど。

ーー完璧主義者?

ファルド とんでもない。ゴルフに完璧を求めちゃいけないよ。完璧なスウィングが完璧なショットを生むわけじゃない。完璧なショットが完璧な結果を生むわけじゃない。そう考えるとゴルフっていうのは本当に難しいよ。

80年代半ばまではフックボールに悩まされたファルド。スウィング改造をして、87年全英オープンでメジャー初制覇

ーー難しいから、おもしろい?

ファルド 納得のいくショットを打てた瞬間が好きなのかもしれない。ささやかな幸せを感じるね。思い描いたとおりの軌跡を描いて、ボールが飛んでいったときね。180ヤードの距離を、ピン横3メートルにつけたときや、50ヤードのアプローチを寄せたとき。そのたびにささやかな幸せを感じて、心の中で秘かに笑うんだ。

ーーどうして表に現さないのですか?

ファルド そりゃあ、仕事場で白い歯を見せるのは、自分のポリシーに反するからね。プロスポーツ選手は、普通の技を、さらりとやってのけるからこそ評価されるものだよ。黙々と自分の仕事をこなす、そうでなくちゃね。

ーーでも、本当は感情的なロマンチックだったりして?

ファルド イエス。ボクはみんなが思っているほど理性的な人間じゃないよ。本当はとても感動的で涙もろいの。でもそれは、プライベートのときにしか、見せないけどね。それがボクの美学さ。

ーーいつか“自分は花びらのように感傷的”という発言をされていましたが?

ファルド ああ、92年の全英オープンに勝ったときだね。こんなデッカイ図体した大男が、小さく可憐な花の一片のように脆く傷つきやすいんだ、ということを表現したんだよ。

92年 全英オープン

ーー冷徹な男だと思われていた自分を意識してのリップサービス?

ファルド もちろん本音も入っているけど、あまりにみんなから誤解されていたから、たまには本当のことを書いてもらおうと思ってね。

インタビューを通じて分かったことは、ファルドは冷酷無比なスウィングマシーンではない、ということ。グッドショットにささやかな喜びを感じ、人間臭い大男だった。インタビューを終えて、何ともいえない親近感を抱いてしまったのは、その人間臭さの温もりがあまりにも鮮烈だったからかもしれない。

※月刊ゴルフダイジェスト1999年3月号より

HONMA

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