35試合中24試合で24歳以下が優勝する低年齢化が進んでいる
現地時間11月20日に閉幕したCMEグループ・ツアー選手権をもって米女子ツアーは2016年シーズンの全日程を終了。20歳のチャーリー・ハル(英)がツアー初優勝を飾った。
注目のタイトル争いは世界ランク1位のリディア・コ(ニュージーランド)をアリア・ジュタヌガーン(タイ)が最終戦で逆転し主要部門を独占。年間女王、最優秀選手賞、賞金女王の三冠に輝いた。
22歳のジュタヌガーンがシーズン5勝。17歳のコが4勝と飛び抜けているが、驚くのが、優勝者が10代、20代のプレーヤーでほぼ占められていること。全35試合中、24試合で24歳以下の選手が勝利し、全米女子オープン覇者のブリタニー・ラング(米)がシーズン最年長。それでも宮里藍世代のジャスト30歳。このご時世“昔の名前で出ている”中堅、ベテランはお呼びではないらしい。
アメリカ人の優勝者はラングとトンプソンのふたりだけだった
さらに加速したのがツアーのグローバル化。もともと韓国勢が本流を占めていたが、彼女たちの強さはそのまま、タイ、中国、スペイン、カナダ、イギリスなど新たな勢力が台頭してきた。ちなみに日本人は野村敏京が2勝を挙げている。
オリンピックで金がパク・インビ(韓国)、銀がコ、銅がフォン・シャンシャン(中国)と、いずれも東洋系の選手がメダルを独占したのは記憶に新しい。
「(グローバル化は)我々が世界最高峰のツアーである証拠」とマイケル・ワンコミッショナーは胸を張るが、その実心中は穏やかではないはずだ。というのも米ツアーと銘打ちながらアメリカ人の優勝はシーズンを通して前述のラングとレクシー・トンプソン2人だけ。悪いがこれではギャラリーを集めようもないし、スポンサーの付きようがない。
実際来季はアメリカ国内で開催する試合が3つ減る。新規開催の打診が2試合あるようだが、シーズン序盤はタイやバハマ、シンガポール、中盤はヨーロッパ各地、終盤はアジアシリーズを敢行と、アメリカ国内開催はやっと半分を超えたところ。世界中あちこちを飛びまわらなければならないため、キャディが「移動がきつい」と悲鳴をあげ、稼業を畳むなんて現象も起きている。
いくらイ・ボミを筆頭に韓国勢が強くても、日本ツアーで日本人の優勝者が年間2人だけというのはあり得ない。もしそんなことになったら盛況な国内女子ツアーでさえ試合数の激減は目に見えている。その危機が米ツアーに迫っているということだ。
クリーマー、ガルビス。かつての人気者たちも苦戦中
かつて一世を風靡したポーラ・クリーマー(米)は今や賞金ランク66位。トランプ次期大統領と仲良しのナタリー・ガルビス(米)など、今季出場機会は8試合のみで、そのすべてで予選落ち。獲得賞金0に終わっている。
つい最近まで世界ランク1位争いを繰り広げていたステイシー・ルイス(米)も「もうランキングのことはどうでもいい。そんなこと考えたくもない」と、優勝候補になることを拒否。賞金ランク16位とトップ10圏外に去った。もちろんジュタヌガーンの飛距離やコのゲームプランは魅力的だが、ギャラリーを呼べる華のある存在かというとクエッションマークがつく。
クリーマーほどの知名度をもってしても「フルネームでサインしないと、ギャラリーに名前を覚えてもらえない」と嘆く昨今。藍が憧れた「THIS IS AMERICA!」の色合いは年々薄れつつある。
「アメリカのジュニアはゴルフ以外にいろいろ興味があるし、やることがたくさんある。韓国人はゴルフ以外やることがない。だから強いんだ」と言ったのはアメリカの某有名コーチだが、果たして米女子ツアーの未来やいかに?