練習はしなくても構わない。結果が出なければレギュラーから脱落するだけ
「東北福祉大ゴルフ部の特徴は一言で表現できます。それは、練習を管理するのではなく結果を管理しているということ。たとえば、団体戦などに出る際のレギュラーと補欠は、大学選手のランキングで決めます。競技の結果ですべてが決まるのです。そのため、結果を出すためにはどうしたらいいかを選手自身が考えます」
伊丹によれば、東北福祉大ゴルフ部では、自分がどういう選手になりたいのか、その目標を監督とミーティングして決めたら、練習方法は個人の自由。練習をしなくても怒られることはないという。「結果がすべてを決めるので、成績が悪ければレギュラーから脱落するだけなのです」(伊丹)というわけだ。
大学側が用意するのは、打ちっ放しの練習場と、100ヤード近く芝の上からとベアグラウンドから打てるアプローチ練習場、それに試合が近くなると試合会場のスピードに仕上げてくれる練習グリーン。さらに、近くの泉国際CCでは週に3回9ホール回ることができるなど、練習環境は非常に整っている。そこでどう練習するかは、繰り返しになるが選手の自由というわけだ。
「そのため、選手は結果を出すためにどうすればいいかを自分で考えます。なので、自分に足りないところを自覚し練習やトレーニングをしたり、自分の持ち味を伸ばしたりと選手として“自立”できるようになるんです」(伊丹)
また、個人としては自由に練習させ、自立を促すからというと、それぞれが一匹狼の「個人主義」集団のイメージがあるが、チームとしての団結力も高い。
「監督(阿部靖彦監督)が指導するのはゴルフの技術ではなく、礼儀や挨拶など人として大切な部分です。その中でも、試合に臨むモチベーションを高めてくれる、目標をしっかりイメージさせてくれましたね。たとえば、団体戦では2位と15打差をつけて圧倒的な差をつけて優勝するとか、団結力やチームワークを高め、同じ方向を向いて進めるように指導してくれました」
実際、ゴルフ部出身者のネットワークは強固だ。池田勇太はゴルフ部の先輩である正岡竜二と練習ラウンドをともにするし、松山の専属キャディ・進藤大典も、石川遼の専属キャディ・佐藤賢和も同学年のOB(宮里優作、岩田寛と同級生)で、松山・石川がペアを組んだ2016年のISPSハンダワールドカップでは、キャディ同士が情報交換し、日本チームの意思疎通をよりやりやすくしたという。
そして、2017年のマスターズだ。
「谷原、池田、松山の3人は、タイプもゴルフのスタイルも違いますが、選手として自立しているという点では、東北福祉大で学んだことが活かされていると思います。また、大学内では上下関係はありますが、わからないことは聞けるし、教えてもらえる人間関係があります。先輩が後輩に教えてもらうことだってありますから。谷原は38歳、池田は31歳、松山は25歳ですが、お互いに福祉大出身同士ならではのコースや風、グリーンなどの情報交換をすると思いますね。それがいい方向に進んで活躍できると思っています」
マスターズに出場する日本人選手=東北福祉大学ゴルフ部OB。同大出身者ならずとも、その活躍を楽しみにしたい。
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