異変!? ドライビングディスタンス上位10名が全員「300ヤード超え」
きっかけは、池田勇太だった。2016年、ティショットの平均飛距離が282.82ヤードでランク28位だった池田は、2017年シーズン平均飛距離を306.09ヤード(2017年9月7日現在)でランク4位まで伸ばしている。実に20ヤード以上の飛距離アップだ。
池田の数字を調べる過程で、取材班はあることに気がついた。「他の選手も、飛距離伸びてない?」というものだ。
公式記録を調べてみると、2016年に平均飛距離で300ヤードを超えていたのはチャン・キムと池村寛世の2人だけ。対して、2017年はトップテンの選手全員が300ヤードを超えている。平均で10ヤード以上伸びているのだ。
これは一体どういうことなのか? ツアープロたちが突然飛び始めた……? 答えを探るべく、プロや関係者たちに話を聞いた。
若手たちは「低スピン」で飛ばしている?
今年からヤマハとクラブ契約を結んだ今平周吾も、大きく飛距離アップに成功している。2016年の278.88Yから、2017年は293.13Yと、池田の約20ヤードには及ばないものの、約15ヤードもの飛距離アップに成功している。
「クラブを変えたことも大きいのですが、スウィング的にも打ち出しが高く、スピンが少なくなるように、以前よりアッパーにしています。最近ではコントロールも重視してアッパーにしすぎないようにしていますが……」(今平)
韓国のハン・ジュンゴンも飛距離アップに成功した一人(2016年:280.57ヤード→2017年:294.62ヤード)。ハンは言う。
「ドライバーをホンマのTW727 455SからTW737 455にチェンジしたことで、スピンを減らすことに成功したことが大きいと思います。ボールもタイトリストのプロV1からプロV1xにチェンジしたのですが、そのマッチングもいいみたいです」
稲森佑貴は、2016年の平均飛距離が256.78ヤードでランク99位と“飛ばない屋”だったが、2017年は272.92ヤードと大幅な飛距離アップに成功している。
「ドライバーをゼクシオ9の8.5度にしました。ヒールに当たっても打ち出しが低くならず、強い球が打てるんです。あとは……トレーニングの成果でしょうか」(稲森)
と、飛距離アップに成功した選手たちは、クラブやボールの影響を口にしていた。ベテランの宮本勝昌は言う。
「自分は変わっていませんが、周りが飛んでいる印象はあります。球の飛び方もスピン量の少ないビッグボールで、クラブやボールの進化と、打ち方の技術の進歩の影響が大きいと思います」
実際、宮本の2016年の飛距離は284.72ヤードでランク17位だったが、2017年は285.81ヤードと、飛距離は微増しているにも関わらず、ランクは70位とむしろ大幅に下がってしまっている。
別のあるプロは、「テーラーメイドの“M2”を使っているプロは、軒並み飛んでいる印象」と語ってくれた。M2といえば、高打ち出し・低スピンのビッグボール弾道を打ちやすいので有名なクラブ。そして、ハン、今平、稲森ら大幅に飛距離を伸ばしているプロたちに共通するのも、2017年に入って“スピンを減らしている”という彼ら自身が証言していることだ。
「たまたま」説、「今だけ」説も。答えはシーズン終了後!?
あくまで仮説だが、2016年から2017年にかけて、スピン量の少ない、ランも含めて飛ぶ弾道をクラブやボールの進化で打ちやすくなり、それに(特に若手の)プロたちが順応した結果、ツアー全体での飛距離アップ現象が生じているのかもしれない。
一方で、飛距離を計測した日にたまたま天気が良く、ランの出る日が多かったのでは? という「天候の影響説」や、計測ホールが飛距離の出やすいセッティングだったのではという「コースの影響説」も多く聞かれた。シーズン途中なので、結論を出せる状態ではないという意見もある。
「これから寒い季節になって、自然に飛ばなくなりますから、最終戦まで終了した時点では、昨年と変わらなくなると思います。もし、最終戦が終わっても飛距離がアップしているようだったら、そのときまた取材お願いします」と小平智が言うように、現在の数字はあくまでも“振れる季節の数字”であるに過ぎない可能性もある。
2017年のツアー日程が終了したとき、ツアー全体の平均飛距離は例年のように微増にとどまるのか、あるいは現在の“中間結果”が示すように、10ヤードレベルの飛距離アップとなっているのか。引き続き、ウォッチしていく必要がありそうだ。
写真/大澤進二