藤本の大叩きを、「16番でバーディを奪ったことで、心と体が“浮いた”感じになってしまいましたね」と解説するのはプロゴルファーの中村修。16番のバーディで2ホールを残して2位とは3打差。優勝がグッと近づいたことによる一瞬の“浮き”が、17番のティショットのミスへとつながり、行った先のライが悪いという不運も重なって、負の連鎖に陥ったと分析する。
優勝争いをしているプロでさえ陥るミスのスパイラル。これは、我々アマチュアゴルファーでも、「このままいけばコンペで優勝/ベスト更新」といったタイミングで起こりがち。それを防ぐにはどうすべきかが問題だ。
「心が浮いてしまうことは防げませんから、まずは浮ついていることを自覚することが一番大事なステップです。その次に、たとえばグローブを変えるとか、ボールを変えるとか、なにか気持ちを切り替えるスイッチが必要になります。それを、普段から“作っておく”ことが大切です」(中村)
気持ちの面では「守る気持ちに注意が必要」というのはプロゴルファーでコーチとしても活躍中の石井忍。
「上がり3ホールでオーバーパーを打たなければ勝てた、という試合は多くあります。たとえ後続とスコアに差があっても、攻める気持ちは残しておかなければいけません。ボギーでもいいとディフェンスの気持ちが強いと、足元をすくわれてしまいますから」
アマチュアでいえば、ダボでもいいと言ったところだろうか。「〜でもいい」という考え方が、心にゆるみを生み、ゆるんで生まれた隙間にミスが忍び込んでくるというわけだ。
最後に、プロコーチの堀尾研仁に対処法をまとめてもらおう。
「まずは呼吸が浅くなりがちですから、深呼吸をすること。そして、やっぱりルーティンです。大事な場面になればなるほど、正確にルーティンを繰り返すことが大切。また、ネガティブな自分が顔を出してきたら、ポジティブ言葉を声に出すこと。独り言でもいいんです。大丈夫、大丈夫、僕ならできると口に出すだけでも効果があります。マネジメント的には、50パーセントの不安要素があったら避けるべき。たとえば、番手をひとつ大きめにするとか、やさしいほうを選ぶべきです」(堀尾)
冒頭に挙げた中村の意見同様、「それでもミスしてしまったら、グローブを一度つけ直すとか、ガムを噛んだり、自分なりのスイッチを持つといい」ともアドバイスしてくれた。
プロにだって起こる最終盤の大叩き。それを防ぐために、まずは“気持ちを切り替えるスイッチ作り”から始めてみてはいかがだろうか。
写真/岡沢裕行