「WGCメキシコ選手権」で5年ぶりの優勝を挙げた47歳のフィル・ミケルソン、「バルスパー選手権」を2位で終え、あとは復活優勝を待つだけといえる42歳のタイガー・ウッズ。同トーナメントで優勝した40歳のポール・ケイシー。2018年に入り、20代の若手の活躍に40代の“オジさん”たちが「待った!」をかけている。強い40代の秘密を、井上透プロコーチに分析してもらった。

ゴルフはもともとベテランが強い競技

「私がプロコーチになった20数年前は、20代のシード選手は二人しかいなかったんです。言ってみれば中堅は30代後半、ベテランと言えるのは40代半ばになってからというのが、男子ゴルフ界でした。ゴルフはもともと、ベテランが強い競技なんです」

そう語る井上コーチ。これはなにも日本に限った話ではなく、以前は米ツアーでもベテラン勢の活躍は目立っていた。たとえば今から15年前の2003年のPGAツアーの賞金ランクを見ると、賞金王は当時40歳のビジェイ・シン。トップ10の残り7人は30代で、20代はたったの二人。そのうちの一人は当時28歳のタイガー・ウッズだ。

画像: タイガー(左)とミケルソン(右)の21世紀のゴルフ界を盛り上げたライバル対決はまだまだ続く

タイガー(左)とミケルソン(右)の21世紀のゴルフ界を盛り上げたライバル対決はまだまだ続く

一方、2017年のPGAツアーのポイントランクを見てみると、トップ10のうち実に7名が20代。我らが松山英樹も含め、25歳以下も珍しくない。10歳近く平均年齢が引き下がった印象だ。

「ゴルフを早い年齢で始める世代が出てきたことによって、低年齢で活躍する選手がこの20年で増えてきました。相対的に40代の活躍が目立たなくなってきていたと思います」(井上)

フィジカル、最新機器への順応、強い心の“三位一体”が求められる

さて、ここまでは前提のようなもの。その上で、なぜここにきて40代の活躍が目立ち始めたのだろうか。井上コーチは言う。

「ゴルフに限らず、44歳の今も米大リーグで活躍する野球のイチロー選手、51歳で現役を続けているサッカーの三浦知良選手など、40歳以降でも活躍する選手も増えています。これは食生活の改善やフィジカルトレーニングによってかなりの年齢まで競技レベルの体を保てるようになってきたことが大きな要因だと思います」(井上)

イチロー選手といえばトレーニング器具をキャンプ地に持ち込むなど、コンディショニングには人一倍気を使うことで知られる選手。今回のタイガーの活躍も、度重なった怪我から回復し、痛みなくプレーできていることが大きな理由なのは明白だ。

ただ、井上コーチによれば、このようなフィジカル面の影響だけでなく、今の強い40代選手たちは、最新の器具の恩恵を受けられていることも見逃せないという。

「現代は、トラックマンなどの計測器の誕生によって、遠回りせずに技術を高めることができるようになっている時代。今の40代は、キャリアの絶頂期には既に計測器が存在し、それに慣れ親んで違和感なく受け入れています。クラブのヘッド素材がパーシモン(木)からメタル(鉄)に変わり、大きく選手が入れ替わった時代とは違い、彼らは新時代に順応できた世代。そう考えると、今の40代でトップクラスの選手が生き残っていてもまったく不思議ではないと思います」

そうはいっても、もちろんすべての40代が活躍しているわけではない。「長く実戦で戦うことの最大の敵は、怪我などの故障と、モチベーションの低下」だと井上コーチは言うが、結局のところ、40代でも活躍できる選手の共通項は、「戦い続けられる肉体と精神」を持ち合わせているということに尽きるのだろう。

画像: 長く戦うには強靭な肉体だけでなく、モチベーションの低下を跳ね返せるこ航路の強さも必要だ(写真:2018年ザ・ホンダ・クラシック)

長く戦うには強靭な肉体だけでなく、モチベーションの低下を跳ね返せるこ航路の強さも必要だ(写真:2018年ザ・ホンダ・クラシック)

「長い間実戦で戦うことにおいて、怪我とモチベーションの低下の二つを乗り越えることは非常に大変なこと。それを乗り越えてきたからこそ強いと言えるではないでしょうか」(井上)

ただゴルフが上手いだけじゃない。自分の体と真摯に向き合い、長く続けることで生じるマンネリを打ち破る心の強さを持っている。来月に迫ったマスターズでも、“強い40代”の活躍を楽しみにしたい。

写真/姉崎正

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