タイガーがもし勝てば……伝説が生まれる瞬間に立ち会えるかも
マスターズの前は、いくつになっても毎年ワクワクするものですが、今年のワクワク感はちょっと近年では記憶にないと言ってもいいと思います。
キーワードは「復活祭」と言ったところでしょうか。もちろん、主役はタイガー・ウッズです。2018年にツアーに本格復帰し、ここ数試合は優勝争いの果てに惜しくも勝利には届かないという絶妙な“寸止め”を見せてくれています(笑)。
タイガーが出場する。それだけでテレビ視聴率、チケット売り上げその他は昨年までの「タイガーのいないマスターズ」とはまったく様相を変えるはずです。長く続いた怪我との戦い。その果てに、マスターズで復活優勝……そうなったら、これはゴルフ界を飛び出して、広くプロスポーツの歴史に刻まれるような偉業となる可能性があります。伝説が生まれる瞬間に立ち会えるかもしれない。僕を始め、多くのゴルファーが感じているワクワク感の根元には、やはりタイガーの存在は欠かせません。
主役はタイガーですが、他にも“準主役”というべき役者が揃っています。まずは今年5年ぶりの優勝を果たしたフィル・ミケルソンと、今年2勝と絶好調のバッバ・ワトソンのマスターズ複数回優勝者2名です。どちらもここ数年は少々苦しいシーズンを送っていましたが、ここにきて復活を果たしています。オーガスタはレフティ(左利き)有利が定説。彼らが勝つ可能性は少なくありません。
復活という意味では、マスターズにキャリアグランドスラム(4大メジャー競技すべてで勝利すること)がかかるロリー・マキロイも昨年の未勝利だったのが今年に入って見事な勝利を挙げています。タイガー、ミケルソン、バッバ、マキロイ……それぞれが主役級のゴルファーたちが、それぞれ“復活”して開催地・オーガスタの地に集う。まさに“復活祭”です(笑)。
“復活組”の前に立ちはだかるジャスティン・トーマスとジョーダン・スピース
さて、彼らスタープレーヤーたちの前に立ちはだかるのが、若手の実力者、ジャスティン・トーマスとジョーダン・スピースの二人だと見ています。トーマスは彼の全キャリアの中で今が一番いいスウィングをしている。勢いを見ても、本命はトーマスと言っていいと思います。
ショットがトーマスなら、小技はスピースです。オーガスタは飛ばし屋が有利と言われますが、実は「いいパー」を拾い続ける選手にチャンスがやってくるコース。スクランブラー(ピンチをしのぐことに長けた選手)であるスピースが、この試合で輝く可能性は高いでしょう。
本来であればここに大本命として世界ランク1位のダスティン・ジョンソンが名を連ねるはずなのですが、直近のWGCデル・テクノロジー・マッチプレーで予選落ちするなど、ちょっと調子を落とし気味。本命中の本命として迎えた昨年のマスターズでも、開幕前夜に階段から落下。怪我をして欠場するなど、マスターズとはどこか相性の悪さを感じます。そして、そのことがより混戦を導きそうな気配です。
そして、日本人ゴルファーとしてもっとも応援したいのが、なんといっても松山英樹選手でしょう。左手親指の怪我の影響から、ツアーには復帰したばかり。そのことにより「休養十分」なのか、あるいは「勝負勘が戻らない」かが気になりますが、彼はここ3年、マスターズでは5位、7位タイ、11位タイと毎年上位でプレーしています。コースとの相性の良さから、きっと“間に合う”と思います。
そして、今年は松山選手のほかにも池田勇太選手、宮里優作選手、小平智選手と4人の日本人選手たちが出場します。まずは予選を通過し、その上で上位争い、優勝争いに加わってくれたら、ものすごく盛り上がるのではないでしょうか。
とくに、マスターズは意外と初出場者がポンと上位にいったり、勝ったりといったことがある試合。その意味で、初出場となる宮里・小平両選手には、ダークホース的な活躍を期待したいですね。
史上最高に盛り上がるマスターズとなる可能性を秘めた今年のマスターズ。開幕が待ちきれません。
写真/姉崎正