マスターズが幕を開けた。狭き門をくぐり抜け出場権を得たのは87名の精鋭たちのうち大会初出場の「マスターズルーキー」はアマチュア5名を含む15名だが、初日はトニー・フィナウが2位タイ、リー・ハオトンが4位タイ、小平智が16位タイと健闘を見せた。マスターズルーキー優勝の可能性は?

マスターズトーメント初出場&優勝は過去に3回だけ

じつは81回の歴史ある大会でルーキーが優勝したのは3回だけ。第一回優勝のホートン・スミスはもちろんだが彼を除けば実質2人。のちにメジャー7冠に輝くジーン・サラゼン(1935年/第二回)とファジー・ゼラーである。

1979年、27歳だったゼラーは格上のトム・ワトソン、エド・スニードとのプレーオフを制し44年ぶりにルーキーによる優勝を達成している。

サドンデス2ホール目で劇的バーディを奪って栄冠を掴んだゼラーだが、最終日前夜の緊張は半端ではなかったらしい。

明日起こるであろうあれこれを考えているうちに眠れなくなり、ホテルのベッドでタバコをふかし始めると止まらなくなった。

ひっきりなしに紫煙をくゆらせもの思いに耽っていたそのとき、火災報知器のけたたましいベルが鳴り響いた。すると信じられないことにスプリンクラーが作動。火災報知器が作動するほどタバコの煙が部屋に充満したのが原因だった。

画像: マスターズに初出場で優勝したファジー・ゼラー(写真左)以来、39年ぶりとなる快挙だ(写真:1979年マスターズトーナメント)

マスターズに初出場で優勝したファジー・ゼラー(写真左)以来、39年ぶりとなる快挙だ(写真:1979年マスターズトーナメント)

優勝前夜の眠れぬ夜はベッドにいながら水浸しになるという笑うに笑えないエピソードつき。だがそれが厄払いになったのか翌日念願のグリーンジャケットに袖を通すことになったのだから笑える話といって良いだろう。

近年ルーキーでもっとも優勝に近づいたのは2014年のジョーダン・スピースだ。最終日バッバ・ワトソンとのマッチレースに敗れたものの、その経験を活かし2度目の挑戦(2015年)で勝利をものにしている。

画像: 初出場の小平智は初日を終えてトップと5打差の16位タイで発進した(写真:2018年マスターズトーナメント練習日)

初出場の小平智は初日を終えてトップと5打差の16位タイで発進した(写真:2018年マスターズトーナメント練習日)

今回もしルーキーが勝てば39年ぶりの快挙となる。宮里優作は出遅れてしまったが小平はまずまずのポジションをキープした。勝負のサンデーバック9まで誰がどこから飛び出してくるかわからない。だからこそ勝つのは難しいが、逆にいえば誰にでもチャンスはあるということ。

大会名誉メンバーとしてジャック・ニクラウスとともにスターターを務めたビッグ3のひとりゲーリー・プレーヤーはマスターズで3勝を挙げているが勝つための鍵は「最後まで決して諦めないこと」だという。

「私は優勝争いの最中にボギーを叩いても神様に“試練を与えてくれてありがとう”と感謝しながらプレーしていたものですよ」

勝利の女神は誰に微笑むのか?

写真/姉崎正

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