シン・ジエの最終日に崩れない修正力
とにかく崩れない。シン・ジエのゴルフにそんな印象を持つ人は少なくないだろう。実際、LPGA(日本女子プロゴルフ協会)の部門別データを見てみると、「ファイナルラウンドの平均ストローク」が70.2654で全体の4位と、最終日の崩れない強さはデータからも見て取れる。
しかも、19試合に出場したうち、最終日に順位を落としたのはわずかに3試合のみ。初日の平均ストローク、2日目の平均ストロークにも大差がなく、まるでプレッシャーの少ない初日か2日目のように最終日もプレーしているという印象だ。
最終日、勝つか負けるかのシビれる場面でなぜシン・ジエは崩れることなく淡々とプレーできるのか。プロゴルファーの中村修は「修正力の高さ」を挙げる。
「ゴルフ5レディス最終日18番ホール、シン・ジエ選手はティショットを3番ウッドで戦略的に刻みましたが左のラフ。残り147ヤードを乗せて、長いパットを2パットのパーでしのぎ、プレーオフに突入しました。そして迎えた、18番の繰り返しでのプレーオフ。その1ホール目、本戦同様3番ウッドで放ったティショットはフェアウェイ右サイドをキープ。1時間半の中断を挟んでのプレーオフ2ホール目も、3番ウッドで打ち、フェアウェイセンターをとらえました。このように、シン・ジエ選手はホールを追うごとにティショットの精度が上がっていました」(中村)
この修正力の高さが、結果的には傑出した安定感につながっていると中村は分析する。では、具体的にどのようにその“修正”を行っているのか。中村がテレビ放送をチェックしたところ、左ラフに行った54ホール目から、プレーオフではわずかにスタンスの向きを変えてしっかりとフェアウェイをとらえていたという。
「スウィングで修正しようとするとそれがうまくいかなかったときにスウィング自体がバラバラになりどうにもならなくなる可能性があります。それに比べてスタンスの向きやボールの位置などセットアップでの修正であれば、今できるスウィングはそのままでも入射角やフェースの向き、クラブ軌道を変化させることができます。シン・ジエ選手の場合は自分なりの修正法をしっかり持っていて、ラウンド中に実践できるところ。それが崩れない秘訣になっているんだと思います」(中村)
スウィングそのものではなく、細かい部分を微調整することで球筋を修正していく。元世界ランク1位。百戦錬磨の経験の中で培われたその修正力の高さが、シン・ジエの強さを支えているようだ。