「一番大きい目標は団体戦金メダルだったんです。先輩方にお世話になったので、金メダルが取れてよかったです。個人の結果も大事だと思っていましたが、それ(団体金メダル)に向けてプレーした結果、チームのためにという思いがあったから、個人戦も金メダルをいただけたと思っています」
アジア大会金メダルの要因を問う質問にこう答えた中島。受け答えは非常に落ち着いており、適切な言葉を必要なだけ口にする様子はいい意味で大人びている。重ねてプレー面での勝因を聞いても、同様に極めて冷静な分析が返ってきた。
「コースはフェアウェイが広めでグリーンも大きかったんですけど、毎日15回くらいパーオンして、フェアウェイを外したのも1、2回でした。グリーン外した場合にラフ(からのアプローチ)が難しいのがわかっていたので、しっかりとグリーン面を広く使ってセーフティに攻められた結果、ピンチがなかった感じでした」
自分のゴルフをしっかりと分析し、コースに対してマネジメントを徹底したからこその勝利であったことが、このコメントからも分かる。若さに任せてガンガン攻めて気がついたら勝った、といった勝ち方ではなく、勝つべくして勝ったのだろう。ジュニアの大会ではなく、アジアのアマチュアゴルファーNO.1を決める試合でそれができるのが凄い。
「セーフティ」を強調する中島だが、飛ばないわけではまるでない。現在参戦中の男子ツアー「アジアパシフィックダイヤモンドゴルフ」では初日に平均飛距離292.0ヤードを記録している。PGAツアーの今シーズンのツアー平均飛距離が296.0ヤードだから、現時点ですでに飛距離は申し分ないレベルだ。
では、コーチの目から見て、中島は技術的にはどのような点が優れているのか。コーチでプロゴルファーの岩本肇は言う。
「とにかくボールコントロールが抜群ですね。多少スウィングを崩してでも狙ったところに飛ばせる力に秀でています。結果的にスコアを作るのが上手なんです。コースに出たらスウィングの良し悪しよりもターゲットに飛ばすことを優先するので、パットの出来次第でスコアは変わりますが好不調の波が少ないのも強いところです」
さて、高校3年生でこれだけの実力を持つとなれば注目されるのは進路だが、中島はすでに大学への進学を表明している。国内か、海外かは未定のようだ。
「アジア大会の金メダルについても、彼は通過点だと考えていると思います。まだまだ上手な選手と回ってみたい、世界中のコースで戦いたいという思いが強いですから。そういうことから、大学進学を決めたのもあると思います。英語も勉強して少しづつ話せるようになってきていますし、これからが楽しみな選手です」(岩本)
タイガー・ウッズも、ジョーダン・スピースも、ジャスティン・トーマスも、大学ゴルフで腕を磨き、その後にプロに転向して世界ランク1位にまで上り詰めている。大学生ゴルファーとして世界のライバルたちとしのぎを削り、やがては……。大器・中島啓太の進む未来を楽しみにしたい。