サンデーバックナインで立て直す対応力
畑岡奈紗選手は、もしかしたら我々が考えていたよりも、さらにポテンシャルが高いのかもしれません。
今回の畑岡選手は、必ずしも絶好調という風には見えませんでした。勝つときはショットとパットが噛み合ったときと言いますが、パッティングこそ安定していたものの、ショットはバラつく場面も散見されました。
それでも勝った。そこに、畑岡選手の真のポテンシャルを見た思いです。
強さを感じたのは最終日の13番ホール、そして14番ホールでした。前半で4つ伸ばし、10番でもバーディを奪って独走するかと思いきや、11番、12番で連続ボギー。後続に並ばれて迎えた2ホールです。
まず13番、畑岡選手はドライバーを左に曲げます。つま先下がりのライからの2打目もグリーンへ届きませんでしたが、奥のピンに対してPWで打ったアプローチを寄せてパーセーブ。そして14番ではまたもやドライバーを左に曲げて、クロスバンカーに打ち込んでしまいます。
テレビや現地で観戦した人も多いかと思いますが、そこから起死回生のベタピンショットでバーディ。この一打で一歩抜け出し、終わってみれば後続に2打差の逆転優勝。2位に終わった日本女子オープンのリベンジを果たしました。
13番でアプローチを寄せしっかりと踏ん張り、14番の2打目のベタピンショットで自ら流れを呼び戻すところは19歳とは思えないプレーぶりでした。日本女子オープンでも調子はあまりよくないとコメントしていましたが、最終日に向けて調子を上げ優勝争いに絡むなど、まるで松山英樹選手やシン・ジエ選手のような、初日は出遅れても気がつけば最終日優勝争いをしているような、強さに芯のあるゴルフを見せてくれています。
ティショットを曲げながらもスコアを作った、という印象ですが、それはスタッツにも表れています。パーオン率は88.8%で全体の2位と極めて高く、そのこともあって3日間でボギーは4つ。これならスコアは崩れません。
反面、フェアウェイキープ率は44位とフィールドの中で高いとはいえません。平均249ヤード(18位)飛ばす飛距離のアドバンテージとアイアンの精度を活かして高確率でパーオンし、そこからのパッティングでスコアを作っていることがわかります。
実際、畑岡選手の今季の米女子ツアーでのスタッツをみると、パーオン率は70.08%で50位と振るいませんが、平均パットは28.95で6位と、米女子ツアーでは高いパットの技術によって成績を残していることがわかります。今回の勝利で、パーオン率が高い週は優勝争いができることを証明してみせました。
今回の畑岡選手のプレーからは、3日間の中でどうすれば調子を上げていけるのかを自分の頭で考え対処できる対応力の高さを感じました。
思い返せば昨年、米女子ツアー参戦初年度の畑岡選手は前半戦に結果が出せず苦しんでいました。一時帰国した際に世界ジュニア出場時の監督である井上透プロコーチに相談し、バットを使った練習が足りていないことを指摘され、調子を取り戻すと日本女子オープンを含む2週連続優勝。そして迎えた今年は米女子ツアーで2勝と、19歳とは思えない活躍ぶりです。
米女子ツアーは残すところ2試合、参戦2年目にして賞金ランク5位(11月5日現在)に大躍進した畑岡奈紗。来季以降メジャー制覇や、米女子ツアーの賞金女王、世界ランク1位さらには東京オリンピックでの金メダル……と、楽しみはふくらみます。
そのポテンシャルはどれだけあるのか。まだまだ、底は見えません。
写真/岡沢裕行