速くて、正確。まるで野球の“レーザービーム”。
「そもそも、今のクラブは低重心でスピンが減りやすく、ボールも低スピン傾向。実は、普通に打つとボールは上がりにくいんです。つまり、キャメロン・チャンプは『意識して低い球を打っている』わけではなく、『意識して球を上げようとしていない』と考えるべきなんです」
そう語り始めた中井学。今の時代のギアは低い弾道のほうが飛ばせる……わけではななく、弾道計測器・トラックマンなどで計測すれば、打ち出し角はやはり高いほうが飛距離はやっぱり伸びる。つまり、信じがたいことに、チャンプはマックスの飛距離を“出そうとしていない”ということになる。
「野球のボールを遠くに投げようと思ったら、普通高い放物線を描くボールを投げますよね。それが自然だし、理にかなってもいる。チャンプは、たとえるならばイチロー選手の“レーザービーム”のような弾道で、ボールを遠くに飛ばしているということです」(中井)
となると気になるのが、チャンプがなぜ低い球を選んでいるのかという点だが、前述のようにそもそも今のギアはボールが上がりやすくないから。そして、それを無理に上げようとしてないから。さらに、低いボールはコースを攻略する上で怪我が少ないから……などの理由が考えられる。
「つまり、飛ばしを目的としているんじゃなくて、コース攻略を目的として、低い球を打っているんです。無理に上げようという動きがないから、アイアンのスウィングとの整合性も取りやすいんです。また、もちろんしっかり振ってはいるんですが、いわゆるマン振りはしていないんですよね。それでも平均335ヤード飛ぶわけですから、野球でいう“地肩がいい”というか、良すぎるというか、スピードもパワーも規格外です。」(中井)
なぜ低い球で平均335ヤードも飛ばせるのか、その理由がまさにこの“地肩の良さ”だ。もっと思い切り振れば、もっと打ち出しが高くなるように振れば、あるいは表示ロフト9度のG400MAXドライバーのロフトを10度や11度にすれば、きっともっと飛ぶ。でも、その必要がないから低い球でコースを攻める。
PGAツアー参戦9戦目にして初優勝を遂げ、来年はメジャーでも活躍が期待されるチャンプ。いやはや、とんでもない選手が現れた。