「反力」を使うデメリットはない
「地面反力」を使ってスウィングできるようになるとどんなメリット・デメリットがあるのか。
率直に言うと、デメリットは何ひとつなく、メリットはあらゆる範囲に及びます。飛距離アップ、方向性の安定、そして体への負担の軽減。悪いことはひとつもありません。
虫のいい話に聞こえるかもしれませんが、「地面反力」を使ったスウィングは、バイオメカニクス的に自然な動きなので、物理的にたいへん効率がよく、理にかなっているのです。むしろ、「地面反力」を使わずにスウィングするほうが(実際には、『地面反力』をまったく使わずにスウィングするのはほぼ不可能で、多かれ少なかれ誰もが使っているのですが)、余計な動きや負担のある動きにつながりやすいと言えます。
なぜ、そんなに素晴らしいと言われている力が、いままで注目されずに来たのか。それは、ゴルフスウィングがバイオメカニクスの観点から研究されるようになってからまだ日が浅く、ゴルフ的な理論とバイオメカニクス的な理論の関連性が細部まで明らかにされていなかったからでしょう。
たとえば、従来のゴルフスウィングを説明する際に使われていた「右足を蹴る」とか「腰を切る」「左のカベ」というような感覚的な表現が、バイオメカニクス的にどんな動きを意味するのか、その動きのなかに「地面反力」がどのように使われているのかが、やっと解明されてきた結果、最近になってやっと、「地面反力」を効率よくスウィングのなかに取り入れるにはどうすればいいかということが理論づけられるようになったのです。
私(編集部注:クォン教授)はそのために多くのゴルファーのさまざまなデータを採取し、ヒロ(吉田洋一郎)や、かつてタイガー・ウッズのコーチだったクリス・コモらのゴルフの専門家と協力しながらそれらを分析しました。
「地面反力」の正体
ではまず、「地面反力」とは何なのかと言えば、まさにその言葉どおり、「地面から跳ね返ってくる力」(Ground Reaction Force)。足が地面に対してかけた力の反力が「地面反力」です。これは、物理学では当たり前の理論で、「作用・反作用の法則」で説明されます。
「作用・反作用の法則」とは、ニュートン力学の「運動の第3法則」とも呼ばれるもので、「物体に力を加えたときに、それと同じ大きさで、かつ逆向きの力が同時に働く」という、物体の運動を説明した基本的な物理法則の1つです。
たとえばキャスターつきの椅子に座った状態で目の前の壁を押すと、椅子は後ろに下がっていきます。これは、手で押した「作用」に対して壁からの「反作用」が働いて起こる現象です。この壁を地面に置き換えて考えたものが「地面反力」なのです。ゴルフのようにクラブをスムーズに、速く振ることでボールを効率よく飛ばすことを目指す場合、この「反力」をうまく使うことが非常に重要な意味を持ってきます。
「驚異の反力打法~飛ばしたいならバイオメカ」(ゴルフダイジェスト社)より *一部改変
撮影/姉崎正