スポーツ・バイオメカニクスの世界的権威、ヤン・フー・クォン教授によると「地面反力」を最大限活かすにはそのベクトルをコントロールすることが重要だというが、実はそのコツは昔から語られる“ゴルフスウィングの常識”とも言える教えにあるのだという。クォン教授と吉田洋一郎プロの共著「驚異の反力打法~飛ばしたいならバイオメカ」より、2日連続で「地面反力で飛距離が上がる仕組み」について解説するシリーズ、その後編をお届けする。

従来の方法論を科学的に体系化したのが「反力打法」

「地面反力」のベクトルをコントロールするためには、左右の足で地面に異なる圧力をかける必要があります。「地面反力」は、プレーヤーが地面にかけた圧の反作用として上方向に生じますが、人間が両足で地面に立ってスウィングしている以上、地面への圧力は両足から別々に生じ、その左右の「地面反力」の合力として作用します。

そのため、右足で地面にかける圧よりも左足で地面にかける圧のほうが大きければ、その反力の合力は体の正面から見て右へ傾くというわけです。その結果、「地面反力」は重心から右にズレたところを通過し、モーメントアームが長くなって、大きな回転力を生むのです。

画像: 左足を右足よりも強く踏み込むことで、「地面反力」のベクトル(F)は正面から見て右(飛球線方向)に傾き、モーメントアームを長くする。回転力Mは「F(地面反力)×d(モーメントアームの長さ)」で決まる

左足を右足よりも強く踏み込むことで、「地面反力」のベクトル(F)は正面から見て右(飛球線方向)に傾き、モーメントアームを長くする。回転力Mは「F(地面反力)×d(モーメントアームの長さ)」で決まる

古くから「切り返しで左足を踏み込め」という指導が行われてきましたが、これはまさに、右よりも左を強く踏み込むことによって「地面反力」のベクトルが右に傾き、モーメントアームが長くなって回転力が増すという経験則からきた教えだったと言えます。

「地面反力」が傾くということは、「地面反力」の水平成分が大きくなっているということです。左足で踏み込むことで確実に左足側に働く力が大きくなり、COP(足の加重の中心)が左足側に移動しますが、それがベクトルを傾けるうえで必要不可欠なのです。

同様に「頭を右に残せ」という指導も、頭という重量物を右寄りに残しておくという意味では体の重心、すなわちセンター・オブ・マスが左に流れるのを防ぎます。ダウンスウィングのときには上半身が目標方向に傾き、重心が左に流れることを防ぎます。結果として「地面反力」と重心との距離を確保し、モーメントアームを長くする効果があるのです。

画像: 昔から言われている「インパクトの際は頭を右に残せ」という指導も、地面反力を効果的に使うための動きのひとつだ(撮影/姉崎正)

昔から言われている「インパクトの際は頭を右に残せ」という指導も、地面反力を効果的に使うための動きのひとつだ(撮影/姉崎正)

このように、古くから言われてきたゴルフスウィングの「常識」の多くは、「地面反力」を効果的に使うという目的と合致しています。「反力打法」は、まったく新しいスウィング理論なのではなく、グッドスウィングの新解釈であり、これまで経験則として曖昧に語られてきた方法論を、科学的に証明し大系化したメソッドなのです。

「驚異の反力打法~飛ばしたいならバイオメカ」(ゴルフダイジェスト社)より

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