間もなく幕を開けるWGCメキシコ選手権。そこに取材に訪れている月刊ゴルフダイジェストのツアー担当・ケンジロウが、選手や関係者たちを悩ませる、この試合ならではの裏事情を紹介!

小平智は“いつもの距離にプラス18%”で計算

こんにちは、ケンジロウです。メキシコシティに来ております。

世界選手権がマイアミのドラールからメキシコに移ってきてから3年が経ちますが、私もなんだかんだで毎年メキシコに来ていますね。もう3年も経つのか、早いもんですね。

さて、本題に入る前にせっかくメキシコで行われる大会ですので、メキシコの話を少ししておきましょうか。

メキシコと言えばスペイン語ですが、実は私スペイン語がペラペラ……、とまでは言いませんが
"ペラ"ぐらいは喋れるんです。ですからメキシコに来ると、スペイン語が話せるのでなんだか嬉しいんですよね。地元の人に英語で話しかけられても、積極的にスペイン語で返すようにしています。メキシコのスペイン語は南米のようにあまり発音にクセがなくて、いわゆる標準語(カスティジャーノ)の発音に近く、すごく聞き取りやすい気がします。

メキシコシティは標高2250メートルという高地にあるため、普通に過ごしていても空気が薄い気がします。2200メートルといえば富士山の5合目ぐらいの高さですからね。コース内のアップダウンのあるところを歩いていると、すぐに息が切れてきます。トレーニングと思って割り切れたらいいかもしれないですけどね。標高が高いからか日差しも強く、2月というのに日差しで肌がジリジリとしてきます。

空気は非常に乾燥していて、気候はとてもカラッとしています。ホテルのベランダに干していた洗濯物はあっという間に乾きました。月曜日に小平智にその乾きが早いという話を伝えると洗濯好きの小平プロは、「よーし、今日は洗濯するぞ!」と意気込んでおりました(笑)。

画像: 昨シーズンのこの試合では距離の計算に苦労したという小平。普段の距離に「プラス18%」

昨シーズンのこの試合では距離の計算に苦労したという小平。普段の距離に「プラス18%」

さて、今大会の難しさとして、選手が口をそろえて言うのは、距離の計算が難しいということ。2200メートルの高地だと気圧の関係でやはり球が飛ぶんですね。各番手の距離が普段と変わってしまうので、慣れるのに大変なわけです。だいたい、いつもの15%飛ぶ計算で考えているプロが多いようです。練習場にトラックマンを持ち込んで、球を打っては距離を書き込んでいる姿を何人も見ましたよ。あまりトラックマンを使わないタイガーですら、今回は練習場に持ち込んでいましたね。

画像: タイガーも練習場にトラックマンを持ち込んでいた

タイガーも練習場にトラックマンを持ち込んでいた

小平プロに聞くと、彼は18%で換算しているとのこと。「去年15%でやったんですけど、けっこうオーバーしてしまって計算が合わなかったんです」(小平)と昨年の反省を踏まえて大会に臨んでいる様子。

練習ラウンドでも、残り191ヤードのところをなんと8番アイアンで打っていました。8番アイアンは普段165ヤードだそうです。

デシャンボーなどは、練習ランドでコースにフライトスコープを持ち込んでまでして距離を計算していました。いかにも“らしい”ですよね。

でも、ちょっと待ってください。メキシコ選手権の最大の敵は、その距離感の難しさでもなく、ジリジリと太陽が照り付ける暑さでもなく、空気の薄さでもありません。その答えは「腹痛」です。過去、何人もの選手が食あたりで煮え湯を飲まされてきました。

大会がスタートした一昨年は初めてメキシコシティに来る選手も多かったのか、まったく免疫もなく食あたりの被害者が続出しました。

ケビン・ナがその1人で、腹痛と戦いながらもなんとかプレーしていました。途中フェアウェイにへたり込んでしまうようなシーンもありました。なんでもホテルのルームサービスのサラダがあたったみたいなんです。生野菜がダメとは聞いていましたけど、高級ホテルが出すものなら信じて食べてしまいますよね。サラダを洗う水道水から菌が入ってしまうようです。

こんなことを書いている私も実はその年に食あたりを経験しました。ケビンと同様にサラダがあたり、しばらくは仕事にならなかったですね。コースでは常にトイレの場所を確認して取材していたのを記憶しています。

画像: 選手も関係者も、トイレの場所の確認は欠かせない

選手も関係者も、トイレの場所の確認は欠かせない

ヘンリク・ステンソンも同じく食あたりで、彼は初日が終わった段階で棄権してしまいました。

フィル・ミケルソンの当時のキャディ・ボーンズも食あたりにあい、急きょフィルの弟・ティムがキャディをしていましたね。ちなみにティムはその後正式にフィルのキャディになりました。

実は2年前にWGCメキシコ選手権に出ていた谷原秀人も洗礼を受けた一人。谷原プロは練習日の早い日にちの段階での発症だったので、試合にはなんとか出場することができました。

原因は、どうもお酒に入れていた氷みたいなんです。水はみんな気をつけていましたが、まさか氷であたるとはねぇ。当時のトレーナーさんも同じようにあたってしまい、トイレの前に布団を敷いて寝ていたそうです。

今年は今のところ、そういった"食あたりニュース"は入ってきていませんから、みんな細心の注意を払っているんでしょう。

火曜日の練習後の囲み取材のときに、「2年前にお腹を壊している選手が多かったですけど、今年は今のところ大丈夫ですか?」と松山英樹に水を向けたてみました。すると、「2年前は確かにそうでしたね。僕は壊してないので(その大変さが)わからないですが、逆に今年は怖いですね。早速、昨日の夜お腹痛かったので」と答えたので、一瞬ヒヤッとしましたが、実際は疲れが溜まってお腹が痛くなっていたとのことでした。連戦が続いているので、試合までの残り時間をしっかりと疲労回復に当ててもらいたいですね。

いよいよ明日からWGCメキシコ選手権、開幕します。

撮影/姉崎正

This article is a sponsored article by
''.