2300メートルの高地で開催される「WGCメキシコ選手権」。その朝の練習場では、世界のトップ選手たちが弾道計測器「トラックマン」を用いてキャリーをチェックする様子が。その意図とは? 月刊ゴルフダイジェストのツアー担当・ケンジロウが現地からレポート!

デシャンボーは前からも後ろからもチェック

こんにちは、ケンジロウです。メキシコシティのチャプルテペックゴルフクラブからお届けしております。メキシコ選手権の3日目が終わりました。日本人選手は松山英樹が4つ伸ばして4アンダー、
今平周吾は2つ落としてイーブンパー、小平智は5つ落としてトータル10オーバー。残りあと1日
上位に食い込んで欲しいですね。

さて、今日の話題は、プロの血圧チェックならぬ、弾道測定器を使った"キャリーチェック"です。
最近こちらの選手の練習を見ていて思うのは、みんな打席の後ろにトラックマンやフライトスコープを置いて、何やらいろいろとチェックをしながら練習しているということ。デシャンボーなんかは、後ろにフライトスコープ、ボールの前にGC4という解析器を置いて、後ろから前からあらゆるデータをチェックしています。日本のツアーでも弾道測定器はだいぶ普及してきましたが、アメリカのPGAツアーではプロが早くから練習に取り入れていましたよね。

今回気づいたのは、試合のスタート前にもこうした計測器を置いて、打ってはその都度iPhoneやiPadの画面とにらめっこして何かをチェックしているんです。でも、試合前にどんなデータをチェックしているのか?

画像: 試合中の朝の練習場でトラックマンを使ってキャリーを計測するダスティン・ジョンソン

試合中の朝の練習場でトラックマンを使ってキャリーを計測するダスティン・ジョンソン

トラックマンを常に置いて練習をしているダスティン・ジョンソンに話を聞くと、「キャリーだよ。番手によってどれくらいのキャリーが出ているかチェックしているのさ」とのこと。確かにD.J.の朝の練習を見ていると、ウェッジに始まりドライバーまで含めて、どのくらいキャリーしているかをチェックしていますね。

2018年のブリヂストン招待(平地のファイヤーストーンCC)でスリークオータースウィングの数字を見せてもらったところSWが90ヤード強、PWで120ヤード強でした。今週の試合はとくに高地ということもあり、キャリーの距離がいつもと大幅に違うとあってみなこぞってトラックマンやフライトスコープを置いてウォーミングアップしています。置いてない選手のほうが珍しいぐらい。タイガーも毎日後ろにトラックマンを置いて練習していますね。

画像: トラックマンを使って高地でのボールの飛び方をチェックする松山英樹

トラックマンを使って高地でのボールの飛び方をチェックする松山英樹

では、なぜ朝のキャリーチェックが大事なのか? プロはなぜ弾道測定器を練習に持ち込むのか? その辺りの事情をトラックマンジャパンの中越豪さんに話を聞きました。

「各番手の飛距離というのは、測ってみるとわかるんですが、その日の体調や天候でもだいぶ変わってくるものです。選手はその日の朝に球を打ってみて、『今日はどのくらい飛ぶか』を確認しているんです。最終日最終組だったらアドレナリンも出て、いつもより飛びますからね。もちろんドライバーからアイアンまで各番手をしっかりとチェックし、またフルショットだけでなく、スリークォーターだとどれくらいなのかも見ています」(中越さん)

なるほど。では練習日とはトラックマンの使い方も違うのか? 再び中越さんに聞いてみました。

「練習日はむしろ入射角を見たり、スピン量を管理したり、スウィング面での用途が多いんです。クラブパス(インパクト時のクラブ軌道)とフェーストゥパス(フェース向きとクラブ軌道の関係で生まれる数値。弾道の行方を左右する)も見ているはずです。インサイドアウトがフック、アウトサイドインがスライスと言われてきましたけど、今はフェースアングルで方向性が7割がた決まるという事実が浸透してきました。海外の選手はそこが大事だとわかっているので、フェーストゥパスをよく見ていると思いますよ」。

なるほど~、弾道測定器ひとつで、日々いろんな項目をチェックしているんですね。またデータ蓄積がスウィングの向上につながると中越さんは言います。

画像: 練習場で2種類の弾道計測器を使ってチェックするブライソン・デシャンボー

練習場で2種類の弾道計測器を使ってチェックするブライソン・デシャンボー

「練習場でスウィングのデータを蓄積することで、調子が良かった時どうだったのか? 悪くなった時どうだったのか? というのも後から分かるのが大きいですよね。選手のコーチも選手とデータを共有しているので、数字を裏付けにしてコーチングもしやすいんです。またコーチがいなくてもセルフコーチとして自分でもチェックできるのも大きいと思います」(中越さん)

ちなみに、PGAツアーの選手のドライバーの入射角は未だにアッパー軌道が多いそうです。ヘッドスピードがよっぽど速くない限りは、やはりアッパーにしないと飛ばないですからね。ただしPGAツアーには、ドライバーをダウンブローで打つバケモノみたいな選手が2名いて、それがブルックス・ケプカとキャメロン・チャンプとのこと。

なんか納得できますよね……。「彼らはドライバーをダウンブローで打てるので、アイアンのスウィングとの相性はいいはずです。アッパーがキツイと、どうしてもアイアンであおり打ちやすいですからね」(中越さん)

なるほど~。強い選手と言うのは、それなりにデータの裏付けもあるんですね。プロの弾道測定器事情、また情報入ったらお届けします。

撮影/姉﨑正

(一部内容を修正しました 2019年2月24日 13時50分)

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