待ちに待った瞬間が遂に訪れた。タイガー・ウッズが12年ぶりにメジャーチャンピオンの座に戻ってきたのだ。21歳でメジャー初優勝を飾ったマスターズという最高の舞台で完全復活。「タイガー! タイガー!」の大合唱がオーガスタの杜にこだまするなか笑顔で家族に出迎えられた彼とハグした人々の顔ぶれをご紹介。

「パパよりメッシのほうがすごい」息子に見せた勝利の瞬間

22年前いまは亡き父・アールさんと抱き合ったグリーンサイドの思い出の場所でタイガーは10歳の息子チャーリー君をひしと抱きしめた。

「お父さんよりメッシのほうがすごい」といって父を苦笑いさせた少年の瞳に尊敬の念がこもる。「父親としていいところが見せられたかな」。

腰痛に苦しんでいたころは「床に座って一緒にレゴで遊ぶことさえできなかった。当時のことを思うと信じられない」という言葉はタイガーの率直な気持ちだろう。

続いて勝者の大きな体にすっぽりと包まれたのは母・クルチダさん。いいときも悪いときも息子に寄り添ってきた母を「悪いことがあってもその先に光明を見つけることができる。それは母の性格を受け継いでいるのだと思う」とタイガーはいう。

08年に全米オープンでメジャー14勝目を挙げたとき前妻のエリンさんに抱っこされ、きょとんとした表情を浮かべていた長女サムさんはもう11歳。いまではタイガーのガールフレンド、エリカ・ハーマンさんの背丈に並んだ。

愛娘サムさん、エリカさんも次々とタイガーとハグ。いつか復活しメジャーに勝つものと誰もが思っていたが、実際にこの瞬間が訪れるとは本人も家族もそして我々ファンも確信を持てていなかった。それをやってのけるのがスーパースターたる所以だ。

スコアカードを提出する前には後輩プロたちが勢ぞろいでチャンピオンを出迎えた。リッキー・ファウラー、ザンダー・シャウフェレ、ジャスティン・トーマスetc.。全米プロのときと同じく今回も優勝を争ったブルックス・ケプカとは健闘を讃え合う男同士の固いハグ。「去年メジャーで2つ続けて(全英オープン&全米プロ)優勝争いに絡んだ経験を生かすことができた」。

ではここでシーンを巻き戻そう。ウィニングパットを沈めたタイガーが家族より先に抱き合ったのは帯同キャディのジョー・ラカバだった。

画像: ウィニングパットを沈め、マスターズを制したタイガー(左)は帯同キャディ・ラカバ(右)と抱き合った(写真/Getty Images)

ウィニングパットを沈め、マスターズを制したタイガー(左)は帯同キャディ・ラカバ(右)と抱き合った(写真/Getty Images)

ラカバは元フレッド・カプルスのキャディ。いつ復活できるかわからず引退さえ頭によぎっていたタイガーが「他の選手のバッグを担いでくれていい」と背中を押したが「いや、キミのバッグを担ぐんだ」と頑として譲らなかった人物である。

ザ・仕事人のイメージがあるが元の雇い主カプルスが手袋をせずにプレーしていたためタイガーにも「ときどき手袋を渡すのを忘れるクセがあるんだよね(笑)」といわれるちょっと抜けた憎めない一面も。

「明日(最終日)はすごいものが見られるだろう」とトム・ワトソンやゲーリー・プレーヤーらレジェンドが期待を込めてSNS上でつぶやくなか主役が本当に“すごいもの”を見せてくれた。
思えばマスターズ4勝目を挙げた05年から長い歳月が流れた。最後のメジャー(08年全米オープン)からも11年が経っている。

「最後のグリーンジャケットから14年。長く不確かな時期を過ごしてきたのだろう。そのタイガーが不可能を可能にしてくれた。キミだけではなくキミの家族におめでとうといいたい。そしてゴルフというゲームに大きな貢献をしてくれてありがとう、と。健闘を祈る」。83歳になったプレーヤーは自身のツイッターにタイガーと家族の抱擁写真とともに最大の賛辞を贈った。

「家族、友人、ファンのサポートには感謝してもしきれない。家族の前で優勝することができた今日のことは生涯忘れることはないでしょう」

いや、感謝したいのはこちらのほうだ。タイガー、帰ってきてくれてありがとう!

2019年4月15日15時8分 文章を一部修正いたしました

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