男子ゴルフの海外メジャー初戦・マスターズで14年ぶり5回目の優勝を果たし、完全復活を遂げたタイガー・ウッズ。メジャー制覇は2008年の全米オープン(トーリーパインズGC)以来、11年ぶり15回目。メジャー歴代最多18勝のジャック・ニクラスにあと3勝と迫った。
昨シーズンからツアーに本格復帰し、全英オープン(カーヌスティGL)で最終日に一時は単独首位に立ち、全米プロ(ベルリーブCC)でもブルックス・ケプカと優勝争いを展開。そしてPGAツアーのプレーオフ最終戦ツアー選手権(イーストレイクGC)では、5年ぶりとなる優勝でツアー通算80勝を達成するなど、完全復活の兆しを見せていたタイガー。
プロコーチの内藤雄士は、そんなタイガーのスウィングをこう分析する。
「一時は腰の痛みで体をまったくコイル(ねじる)することができず、飛距離は出るものの、ドローしか打てず、安定性も欠いていました。それが昨季の本格復帰後は、しっかり体もコイルできるようになり、丸山茂樹プロも『あんな大ケガだったのに、ここまで体の状態が良くなるとは信じられない』と驚いていました。私自身もあとはパターの調子さえ戻ってくれば、今年のマスターズで勝つチャンスがあるんじゃないかと思っていましたが、それが現実になりましたね」(内藤、以下同)
マスターズ優勝で完全復活を遂げた、タイガーの現在のスウィング。内藤は続ける。
「タイガーはいま、自分がいちばん良かった大学生時代や、絶好調だった2000年ごろのスウィング動画を見て、参考にしているそうです。たしかに、以前に比べるとフラットにはなりましたが、バックスウィングの上げ方の雰囲気などは、2000年ごろのスウィングにかなり近づいていますね。とはいえ、絶好調だった時代のスウィングに完全に戻そうということではなく、彼が過去の自分のスウィングで参考にしているのはリズムやテンポ、回転のスピードといった部分。それと最新のスウィング理論を上手にミックスしているように思います」
最強を誇った時代のスウィングと大きく進化しているのは、ダウンスウィングからフォローの動きだという。
「ハーフウェイダウンからインパクト直前で手元がヘッドよりも先行し、かなりハンドファーストにボールをとらえています。まずここに以前との大きな違いが見て取れます。フォローでも左ひじをたたまず、やや外側に向いてますが、これはボールをつかまえるための、手のロールを使っていない証拠。フェースの開閉を極力抑えて振るのは、最新のギアにマッチしたスウィングです。またインパクトでは、以前は顔が右下を向き、ビハインド・ザ・ボールが強かったが、いまはフォローでキャップのツバが目標を向くのが早くなっています。無理に顔を残し、ヘッドとの引っ張り合いで飛ばすのではなく、目標方向に素早く体を回して、回転のスピードで飛ばしています。このほうが体への負担が少なく、ケガをする確率も低くなる。多くのケガを経験したことで辿り着いたスウィングともいえますね」
メジャー第2戦・全米プロの開催コースは、2002年にタイガーが全米オープンを制したベスページブラックコース。そして続く第3戦の全米オープンは、やはり2000年に全米オープン初優勝を果たしたペブルビーチGLが舞台。どちらも得意とするコースだけに、43歳にして進化を遂げたスウィングでメジャー連覇への期待も膨らむ。