地に足をつける~過去、未来ではなく「今」に意識を~
私たちは仕事やゴルフで目の前のことに集中しようと思ってもすぐに思考が過去や未来に向いてしまい集中が切れてしまいがちです。
「前のコンペでもティーショットでOB打ったな。なんか嫌だな(過去への思考)」
「このショットでOBになったら嫌だな(未来への思考)」
このように私たちはすぐに過去や未来にとらわれて感情を乱してしまいます。しかし、「過去」「未来」も基本的にはコントロールできないことですので、「アンコントロール(自分がコントロールできないことに気づくこと)」することで目の前のプレーに不必要な思考や感情を減らすことができるのです。
そして、アンコントロールした後は、今自分がコントロールできる思考や行動に意識を向けて行きます。これをインコントロールと呼んでいます。「深呼吸をしてリラックス」「球筋イメージを意識し、ゆっくりスウィング」と自分がコントロールできる行動に目を向けいくわけです。
これまでサポートしてきたプロゴルファーやプロ野球選手、Jリーガーに「パフォーマンスが高いときに頭では何を考えていますか?」と質問すると決まって、「何も考えていないですね。感覚でプレーする感じです」と口を揃えて話されます。きっとみなさんも同じだと思います。良いゴルフができているときはあれこれと考えてプレーしていないですよね。
そして、プロアスリートにさらに「そのとき頭にはどんなイメージが浮んできますか?」と質問すると多くの選手が「目の前のワンプレーに対してこうしようという良いイメージが常に出てきます」と答えられます。これはどんな状態かというと常に「今」だけに集中できている状態です。過去にも未来にも影響されずに今のワンプレー、今のワンプレー、今のワンプレー・・・に自然と注意が向いている状態です。
この良いプレーができている状態のように過去や未来もアンコントロールすることで「今」すべき思考や行動に注意を向けやすくなります。
この「今」に集中するということをわかりやすく表現している日本のことわざに「地に足をつける」という言葉があります。私はサポートする選手にも試合で浮き足立っていると感じたときは「地に足をつけてください」とリクエストします。これはどういうことかというと実際に「地面に接地している足の裏の感覚を感じること」をしてもらいます。
実際にあなたも今座っているか、立っているかどちらかだと思いますので地面や床と接地している足裏の感覚に注意をむけてください。右足の親指、人差指、中指、薬指、小指、左足も同じように床との接地面の感覚を意識していきます。
すると実際に「地に足がついている」状態、つまり時間軸を今に向けることができるのです。また、深い呼吸(例えば、3秒鼻で吸い6秒口で吐く)に最大限意識を向け、数回することで浮ついた心を落ち着けることも同じように地に足をつけるという行為です。
このように「地に足をつける」という言葉を実践することで「今」に注意が向きやすくなるのでゴルフのラウンド中に集中や切り替えをする上でおすすめですね。
元プロゴルファーの宮里藍さんも著書の中でこう言っています。
過去でも未来でもない、「今」に自分を置くこと。これがナイスショットを紡ぎ出すための大きな鍵<『I am here.1「今」を意識に刻むメンタル術』(角川SSC新書)>
私たちは日常生活でもスポーツでもすぐに過去や未来に感情を乱されてしまいがちですが「地に足をつける」意識を持つことでゴルフ、仕事でのパフォーマンスを向上に役に立つのではないかと思います。
撮影/増田保雄