先週開催されたザ・メモリアルトーナメント最終日、私は松山英樹選手の組について観戦していました。そのとき同組でプレーしていたのがパトリック・カントレー。そのカントレーが、すごいゴルフをしていたんです。
球は曲がらないし、距離も出ている。アプローチは寄るし、パットも決まる。「完璧なゴルフってこういうことだな」と思わされました。マスターズで9位タイ、全米プロで3位タイ、そしてメモリアルで優勝と、調子がいいのも頷ける、圧巻のプレーでした。
カントレーは、直近のマスターズでも見ています。小平智選手、そしてババ・ワトソンと同組でプレーしていたのですが、そのときもババと変わらないくらい飛んでいました。身長も180センチ弱と大きくないですし、外見も地味。でも、常に上位にいます。
スタッツ的にも、総合力を示す指標であるストローク・ゲインド・トータルがダスティン・ジョンソン、ロリー・マキロイに次ぐ3位であることが、カントレーの実力を証明していると思います。
スウィングも素晴らしい。上半身には力感がなく、腕と体の同調性を保つ以外ほぼなにもしていません。それに対して下半身はすごく動く。バックスウィングを上げている途中で左足が動いて切り返すのですが、そのときの運動連鎖が非常にスムーズなんです。
インパクトでは左足が伸び、地面反力をうまく使っています。自分のパワーではない、外力を巧みに用いたスウィングは、力の向きと、その効率性が極めて高く、バイオメカニクス的に非の付けどころがありません。端的にいえば、力を入れている感じがしないのに、めちゃくちゃ飛びます。
多くのPGAツアーの選手を生で見ていますが、久しぶりに「これはヤバいな」と感じました。ブルックス・ケプカとか、それくらいのレベルになっても不思議ではありません。メジャーを勝つチャンスも当然ながら十分にあります。
メモリアルの12番パー3、トップに立っていたカントレーは、外せばすぐ池の右サイドギリギリに立てられたピンを狙ってきました。一筋違って池に入れればトップから滑り落ちる状況。普通は、センター狙いです。それでも狙うのは、攻撃的というよりも、「いつも通りのプレーをしている」という印象。ロボットかと思うくらいの落ち着きっぷりです。
たとえるならばゴルフサイボーグ。きれいではないかもしれないけど強いスウィング。崩れないスウィング。そして、優勝争いの渦中でも揺れないメンタル。世界にはすごい選手がいるものです。
来週の全米オープン、パトリック・カントレーが上位に来たら、ぜひ注目してみてください!