先日行われた米シニアツアー「マスターカード・ジャパン選手権」で日本のファンに元気な姿を見せてくれたトム・ワトソン。今年古希を迎える69歳は、いまだドライバー平均飛距離は250ヤードを超える。その錆びないスウィングを、ゴルフスウィングコンサルタントの吉田洋一郎が分析した。
筋力ではなく遠心力や地面反力を使い、クラブに仕事させる
今年の9月に70歳となるトム・ワトソンだが、米シニアツアーの公式サイトによればその平均飛距離は253.0ヤード。フェアウェイキープ率は78.57%と極めて高く、まさに「ファー&シュア」を地でいく数字となっている。パッと見、軽〜く振っているように見えるが、なぜこんなに質のいいドライバーショットが打てるのだろうか。
吉田洋一郎は、「軽く振っているのに飛ぶ人には、ある特徴がある」と言う。
「たとえば最近のタイガー・ウッズは、以前に比べて軽く振っているように見えますよね。でも、飛距離はむしろ今のほうが出ている。これは、内力と呼ばれる筋力やパワーに頼らず、外力、すなわち遠心力や地面反力、重力などの力を上手く使っている証拠です」
それが最も表れているのがワトソンのフットワークだと吉田。テークバックで左足かかとを上げ、それを下ろすことにより切り返す。そのタイミングが絶妙だという。
「ワトソンは、クラブがトップに上がりきる直前に左足を下ろして切り返しています。つまり、切り返しは左足始動。それにより、足、体、腕、クラブという順に運動連鎖が起こります。これがすごく重要なポイントで、一流選手に共通した動きなんです」
さらに、クラブに上手に仕事をさせるのもワトソンの特徴。バックスウィングでの早いコックでクラブの運動量を増やし、インパクト直後にはクラブを放り出すようにし、遠心力を上手く使っている。
「自分が頑張る」のではなく、クラブに仕事をさせ、遠心力や地面反力といった、自分の外にある力を利用する。69歳のレジェンドのスウィングが錆びない理由は、どうやらこのあたりにあるようだ。