3番アイアンで249ヤード! なのにスピン量もバツグン
篠塚氏は、オーストラリアに留学中の、アダム・スコットとルームメイトだったという旧友。スコットのスウィングや人柄をよく知る人物だ。
そんな篠塚氏がスコットの弾道を計測したのは今週の水曜日。日本オープンの練習ラウンド、古賀ゴルフ・クラブ10番ホールのティイングエリアでのショット。ゆるやかな打ち下ろしのホールで3番アイアンでティショットしたスコットのショットを、トラックマンで計測した。

現在開催中の日本オープンに出場しているアダム・スコット
まず目につくのは249ヤードという飛距離。クラブスピード(=ヘッドスピード、HS)は44.5m/秒に達し、アマチュアの飛ばし屋のドライバーショットに匹敵する。

アダムの3番アイアンの計測結果
「実はこれはほんの少しダフリ気味で、フェースの少し上めに当たっていますので、ティショットでクリーンにボールをとらえられればあと10~15ヤードくらい飛ぶでしょうね。アダムは積極的に筋力トレーニングを行っていますので、このHSは強い筋力の賜物でしょう」(篠塚氏)
ボール初速も非常に速く、スマッシュファクター(ボール初速をクラブスピードで割った数値で、ミート率とも呼ばれる)が1.49とドライバー並みの数値だ。
「アタックアングル(入射角)を見ると、5.4度と強めのダウンブロー。3番のような長いアイアンでもかなり鋭角な入射角でボールをとらえています。その結果3925回転/分と、高いスピンレート(バックスピン量)を得ています」(篠塚氏)

練習ラウンドでもトラックマンを設置し、自身のショットを計測しているアダム
アイアンのバックスピン量は、プロの場合、一般的に番手×1000回転/分くらいが理想と言われている。つまり3番アイアンなら3000回転/分前後だが、スコットのアイアンショットはそれを1000回転/分近く上回っているということだ。アマチュアの感覚では、ドライバーの飛距離でショートアイアンのように止まる球を打っていると想像すれば近いかもしれない。
石川遼はドライバーを積極的に採用すると宣言し、比嘉一貴は反対にドライバーを抜いて挑んでいることからも明らかにように、コースへのアプローチはクラブ選択に表れる。果たしてどの戦略が正しかったかは間もなく明らかになるが、ロングアイアンでもスピンを入れられるスコットにも大きな注目が集まる。
ただ、そんなスコットも初日はシビアなグリーン上でのパットに苦しみ、+5と出遅れてしまった。PGAツアーとは違う日本独特のセッティングに対応し、スコアを伸ばしていけるのかにも注目したい。