シャフトが「ツアーAD XC」に。パターは「スクェアバック」を採用
ケンジロウです。今週は千葉県習志野のアコーディア・ゴルフ習志野カントリークラブに来ております。もうおわかりですよね?そう、ZOZOチャンピオンシップに来ております(2日目の競技は悪天候により順延になりました)。
日本で初のPGAツアーということで、かねてから話題になっていましたが、蓋を開けてみたら異常なほどの人の多さにびっくり。まさかここまでギャラリーが入るとは思ってもいませんでした。
タイガーの組にも人垣、松山の組にも人垣、マキロイの組にも人垣。練習場でもギャラリースタンドの上で熱心にプロの練習を観察する人たちがいて、初日からこんなにギャラリーがいる試合はアメリカの試合でもメジャーぐらいじゃないですかね。
実際に初日のギャラリー数をみてみると、1万8536人という驚異的な数字ですからねぇ。松山英樹の朝のスタート、1番ホールはティからグリーンまでずっと人垣ができていました。ティオフしていく松山に大声援を送る人たちを見て、これだけまだまだゴルフファンがいるんだと、私は感動すら覚えました。
さて、PGAツアー・シュライナーズホスピタルの試合以来、3週間ぶりに松山英樹のプレーを見ましたが、彼はその3週前とはまるで別人のように変化していました。
パッと見でわかる変化から言うと、まずクラブに微調整が二つ。
ひとつは使い慣れたツアーADのDIからツアーADのXC(TX)のに変わったこと。このシャフトは今シーズンのセーフウェイオープンで一度使っていましたね。
もうひとつはパターのヘッドがスコッティ・キャメロンのスクェアバックのモデル(ヘッドがお尻側に伸びた)になったことです。
新しいパターは先週のC.J.カップから投入した模様ですが、ヘッドが少しデカくなって、少しオートマチックに扱えるんですかね。
「(新しいパターに替えて)パットのフィーリングはさほど良くはなってないですけど、まあ入ってくれているんで」(松山)と試合後に語っていてまずまずお気に入りの様子でしたね。確かに昨日も、きわどい2メートルぐらいのパットや4~5メートルのバーディパットも決めていましたからね。
ドライバーショットが見違えるほど良くなった
さてさて、クラブの微調整の話はここまでにしておいて、今週の彼を見て一番驚いたのは、ショットが見違えるほどよくなったことです。特にドライバーがまるで別人。ティショットが右に行くミスの多い松山ですが、昨日の試合はドライバーを振りちぎって、右に行きそうにないつかまったドローを連発していました。
思えば今週は練習日から良かったですからね。「ドローボールを打つのが理想」とかねてから本人は言っていますが、練習場ではまさにその理想のハイドローでつかまりのいい球を打っていました。
本人も初日の試合後のコメントで、「(ドライバーは)フィーリングも悪くないし、最近の中だったら一番良かったんじゃないかな」と手ごたえを感じていた様子。
途中、多少右に行くシーンもありましたが、それでもフェアウェイ右サイドか、ファーストカットどまり。大曲がりはなく、今シーズンから取り組んでいる、スウィング調整とクラブ調整がうまくハマってきているのではないかという感じがしました。
わずか3週間前の試合では、3日目にドライバーがフェアウェイに行かず、「何をやっていいかわからない」(松山)と言うほどどん底状態にいましたが、この試合に向けてしっかり仕上げてくるところはさすが世界で戦う選手ですよね。
1打1打に意図が見える。11番でのドローボールは圧巻!
そんな世界基準が垣間見られたシーンが今週で一番タフなホールと思われる11番ホールでした。
486ヤードのパー4で昨日は左からのアゲンストが吹いていました。松山英樹はドライバーを手にすると、右のフェアウェイ狙いでドローを打っていました。
松山英樹のラウンドについて回っていたプロコーチの目澤秀憲さんは、そのティショットを見て、目を丸くしていました。
「右サイドにミスするのが嫌なロケーションで左からのアゲンスト、そして距離も出さなきゃいけない。ドローを打ちたいところですが、男子プロのヘッドスピードだと嫌がってチーピンやプッシュも出やすく、なかなかドローは打ちづらいシチュエーション。でもそこから逃げないでしっかりと松山プロはやりきりました。この状況下でしっかり右に球を打ち出せているのはいいですよね」(目澤コーチ)
またその前の10番ホール(376Yのパー4)のティショットにも目澤コーチは目を見張っていました。
10番ホールはタイガーウッズが朝イチに左のクリークに入れてボギーにしてしまったホールですよね。ここで松山英樹はドライバーを手に取り、フェードボールでフェアウェイの右サイドにおきました。
「距離は長くないのでドライバーを持つ必要はないですが、スプーンを持つと右にも左にもミスが出やすい。左にクリークがあるので、左のミスも避けたかった。ロフトの立っているドライバーなら左を消せるので、それでドライバーを持ったのだと思います」
そして2打目を右サイドから打ったのも、おそらく計算済みだったと目澤コーチは言います。
「松山プロもジョーダン(・スピース)もフェアウェイ右サイドから2打目を打っていましたが、右サイドはライが順目で若干つま先上がり。砲台のグリーンで落ちどころが見えない状況で明らかに右サイドのほうが打ちやすいロケーションでした。そこから2打目を打つことまで計算してティショットをドライバーで右サイドに打つことを考えていたんだと思います」
実際に、2打目をそのフェアウェイ右サイドから打った松山とジョーダン・スピースはバーディチャンスにつけて、見事バーディ。一方、フェアウェイ左サイドの逆目のライから打っていたアダム・スコットは2打目をショートして2パットのパー。
んー、レベルが高いハナシ。ドライバー以外にも、昨日の松山にはスーパーショットがいくつかあって、そのひとつは12番のパー4の2打目、まあまあの左足下がりのラフからでした。
残り160ヤードぐらいでしたが、その7ヤードぐらい手前で同じようなライだったジョーダン・スピースは、カットに打って、少し大きくて奥にこぼしてしまいた。一方の松山はカットに打たず、ライン出しのように真っすぐ狙ってグリーンの上にキャリーし、わずかに奥にこぼしました。
「スピースのようにカットに打ってくるかと思いましたが、このライだったらカットに打たずとも球が止まると思って打ったような印象でしたね。実際には少しこぼれましたが、ジョーダンとは違ってアプローチがやさしいところで止まっていました。こぼれてもパーは拾える、上手く止まればバーディチャンスにもなると考えた2打目だったんじゃないですかね」(目澤コーチ)
実際に、松山はあわやチップインでパーを拾い、ジョーダン・スピースはアプローチが左足下がりのライからで上手く寄せましたが2パットでボギーを打ってしまいました。
また他にも目澤コーチが注目したのは、バーディをとった15番ホールの2打目、残り120ヤードぐらいでしたかね。つま先下がり、左足下がりのライで右からのアゲンストの状況でした。松山はウェッジで打って、見事ピンそば1メートル強につけました。
「いくら右からアゲンストで奥にいかない状況とはいえ、あそこまで突っ込んでくるのは凄い。左サイドにミスしたあとが怖いので、僕がコーチしている選手たちには初日にあそこまで狙ってとは言えないですからね。世界のトップ選手は、初日からどんどんとバーディを狙ってくるんですね」(目澤コーチ)
結局7バーディ、2ボギーの5アンダーで2位タイスタートと好発進の松山英樹。久しぶりのPGAツアー優勝に向けて期待が高まりますね。タイガーが3連続ボギーから9バーディをとってくるなど、松山英樹以外にもあちこちでレベルの高い展開が繰り広げられているZOZOチャンピオンシップ。
PGAツアーが日本で開催されて、しかもその中で日本人選手が活躍している姿が見られるなんて……。いやぁ、ほんと鳥肌立って、ゾゾっとしちゃいますよね。
第2ラウンドは土曜日の朝6時30分からスタート予定です。
写真/有原裕
(一部間違いを修正しました 2019年10月25日 20時10分)