6番ホール、池越えのパー5で常識外のマネジメントを選択する選手が続出
タイガー・ウッズと松山英樹の優勝争いで、大いに盛り上がったZOZOチャンピオンシップ。そんな中、3日目あたりから大ギャラリーの間で話題になっていたホールがある。池超えの名物パー5である6番ホールだ。
L字型に大きく曲がった右ドッグレッグのホールで、池超えのショートカットに成功すれば、2オンも可能なホールだが、右端ギリギリを狙って池を越えるには、キャリーで300ヤードは必要だろう。飛ばし屋マシュー・ウルフは、アゲンストの風の中、池のはるか先まで飛ばしていた。
優勝したタイガー・ウッズは、池のプレッシャーがほとんどない曲がり角付近まで運び、2打目でグリーンに近づけてから、バーディを奪っていた。危険を冒さずバーディーを奪うという、いかにもタイガーらしいインサイドワークだ。
ギャラリーの話題になっていたのは、L字型に曲がったホールをショートカットで狙う選手が続出したことだ。6番ホールの右隣は、試合で使われていない習志野CCクイーンコースの13番と14番(※試合の6番ホールは、通常営業のクイーン12番)。そこに向かって、ティショットを放ち、距離を稼いで2オンを狙うという戦略だ。
とはいえ、習志野CCは密集した林にセパレートされたコースで、林のプレッシャーは、4日間世界のトップ選手たちを苦しめていた。6番ホールのティイングエリアから、右方向を狙うには林の間、4〜5mを抜いていく必要がある。最初にトライしたのは、ローリー・サバティーニらしいが、バッバ・ワトソンを始め、多くの選手が、この常識はずれのショートカットに挑戦していた。その中には、日本の今平周吾もいる。
ショートカットを狙った選手の一人、ジョーダン・スピースのティショットを間近で見たというギャラリーに話を聞いてみた。
「6番のティイングエリアからショートカットするには、かなり右に打つ感じです。林の間は狭いし、ギャラリーも多かったので、正直、危ないなと感じました。それをスピースはマン振りに近いくらいドライバーを振って、“嘘でしょ”と思いましたよ。あの後、スピースがどうなったのか、気になります」
スピースは、そのホールで見事2オンに成功し、イーグルを奪った、と書きたいところだが、実際にはボギーフィニッシュだった。
スピースが打ったのは、通常営業の14番ホール方向。今平やハロルド・バーナーもそのルートらしい。そこから13番ホールをまるまる超えるかたちで、6番のグリーンを狙う。航空写真を見ればわかるが、その間はびっしりと林でセパレートされている。
実は、リスクを負ってショートカットを狙った選手たちは、思いの外、苦戦していて、バーディー以上をとった選手がほとんどいなかった。残念ながら、この奇策は成功したとは言い難いようだ。
海外のメディアでもこのショートカットは話題になっていて、4ラウンド目のバッバ・ワトソンのティショット動画が拡散していた。ワトソンは大きなスライスで13番方向に打ったようだ。ちなみに、第3ラウンドで、選手のショートカットが続いたせいか、第4ラウンドでは看板とドリンク箱を右に置いて、打てなくしていた。ところが、ワトソンはドリンク箱をどかせて打っていた。どうしても右に打ちたかったのだ。
ツアー9勝、最近は解説でもおなじみの佐藤信人プロに、サントリーオープン開催時代(1974年〜1997年)に、このルートを選択した選手がいたか尋ねたところ、佐藤のプロの知る限り、そんな選手はいなかったという。
前述のギャラリーは、2017年の全英オープンで、スピースがアンプレアブルから、駐車場付近まで下がり、グリーンそばまで飛ばしてボギーでしのいだシーンを思い出したと話してくれた。PGAツアーの選手は、コースを我々の想像よりも遥かに俯瞰で見ていて、自身にとって最上の選択は何かを常に考えているのだ。
とはいえ、そもそも隣ホールが使われていないことを前提としたショートカット戦略だ。アマチュアに参考になるところはなさそうだが、プロたちのクリエイティビティの一端をうかがい知れるシーンだった。