怪我で飛距離が大幅に落ちたときにもスコアをまとめる“ゴルフ力”
吉田優利選手を間近で見たのは渋野日向子選手が初優勝を挙げた「ワールドレディスサロンパスカップ」でした。3日目と最終日を最終組で回り4位タイでフィニッシュしましたが、とくに目についたのはアプローチの上手さです。
光っていたのは、ボールのある状況からどの種類のアプローチを選択するかという状況判断とイメージした通りに打てる技術。強い風が吹く最終日こそ2オーバーとスコアを崩し、優勝争いには加われませんでしたが、日本女子アマ、日本ジュニアのタイトルは伊達じゃないことは十分に示しました。
その印象もあり、2000年度生まれのプラチナ世代のなかで、個人的に非常に注目しているのが吉田選手。そのコーチは、上田桃子、小祝さくらといった女子プロたちを指導する辻村明志プロです。辻村プロは言います。
「ケガで2か月近くクラブを握れない時期があったんです。ケガ明けのラウンドはドライバーは200ヤード、5番アイアンでは150ヤードしか飛ばせなかったのですが、その中で1オーバーで回ってきたのを見て、ゴルフ力の高さを実感しました。そのとき、ゴルフができる喜びを感じた姿は忘れられないですし、ケガをしたことで体を鍛えることもできました。もともと勘のいい子でしたが、勘だけでは“上”では戦えません。ケガをしたことで体作りの重要性もわかってよかったと思います」(辻村)
と、“怪我の功名”があったことを明かしてくれました。見たところ、吉田選手のドライバーの飛距離は平均240ヤードほど。ドライバーが40ヤードも飛ばなければ、使う番手も大きく異なったはずですが、そのなかでしっかりとマネジメントができ、組み立てができるからこその1オーバーなのでしょう。
では、スウィングを見てみましょう。画像Aをごらんください。背筋から頭まで真っすぐと伸びたきれいなアドレスです。そこから手元を体の正面にキープしつつ背中を回すようにテークバックしています。左肩が下がっているように見えますが、アドレス時の前傾角度に対して90度の角度できれいに肩が回っている証拠と言えます。
画像Bの写真左はトップを迎えた直後、切り返しの瞬間をとらえた一枚ですが、背中の筋肉が伸張され、フェースの向きは45度とスクェア。ベルトのラインが肩のラインと平行になっていることから、骨盤も同じように前傾角度をキープしていることが見て取れます。
画像B写真右を見ると、そこから沈み込むように、前傾角をキープしたままダウンスウィングに入ることで、左肩が低く回っています。切り返しから左肩が上がると体は伸び上がりタメがほどけてしまう原因になりますが、そのような動きは見られません。
画像Cの写真左はインパクトの瞬間。スウィング中に頭の高さがほとんど変わらず、前傾した体の軸がブレていないことから、しっかりと回転して打てていることがわかります。
スウィングには左右に動く力(ホリゾンタル)、回転力(トルク)、地面反力(バーティカル)の3つの力が作用しますが、吉田選手の場合、左ひざに余裕があることからも踏み込んで伸ばす縦の力(バーティカル)を多く使うタイプではなく、回転力(トルク)を使う割合が多いタイプのスウィングといえます。もちろん、それは選手それぞれの個性で、いい悪いはありません。
ケガを乗り越えプロテスト、QT(予選会)を勝ち上がり、プロツアーの切符を手にするとともに大きく成長を遂げた2019年を越え、今週から開催される米ツアー「ISPSハンダ女子オーストラリア・オープン」から今季初戦を迎えるといいます。
プラチナ世代注目の一人として2020年の活躍に期待したいですね。