メンタルトレーニングに興味があるゴルファーの中でも、とくに「ゾーンに入る方法」を教えてほしいという依頼は私の元によく届きます。今回は本番でパフォーマンスを発揮したいというゴルファー向けに、実践的な「ゾーンにアプローチできるセルフマネジメント」について紹介していきます。
ゾーンという言葉はスポーツ界では一般化されていて、ゴルフでも「今日の前半はゾーンに入っていた」というように普通に使われていますよね。そもそもゾーンとは“究極の集中状態”を表す言葉で、心理学では「フロー」と呼ばれます。フローはアメリカのクレアモント大学の心理学者であるハイ・チクセントミハイが提唱したもので、時間を忘れるほど完全に目の前のプレーに集中できている状態でハイパフォーマンスを発揮している様を指しています。
フロー状態はリラックスと集中がバランスのとれた究極の状態であり、ミリ単位でダイヤルがピタッとはまったような精神状態です。多くのゴルファーは何度かそのような究極の精神状態であるフロー状態を体験したことがあり、その時にハイスコア、ベストスコアを出せた経験をしています。あなたもそれに近い経験があるかもしれませんね。
ただ、試合本番などプレシャーのかかる「ここぞ!」という場面で、その完璧なフロー状態を自分の意図で出すことは簡単ではなく、むしろ至難の業です。
そこで私が競技ゴルファーに提案していることは「フロー状態にピタッと入る」というより「フローに近い状態へアプローチしよう」ということです。以下の図(画像A)を参考にフローへのアプローチを実践的に考えてみてほしいと思います。
図の横軸が緊張感(0~100)を示し、縦軸がモチベーション(0~100)を示しています。なぜ緊張感とモチベーションの2軸で考えるかというと、適度な緊張感だけ調整してもモチベーションが不適な状態であればパフォーマンスは出にくいですし、モチベーションだけ調整しても緊張感がそのゴルファーにとって高すぎたりするとパフォーマンス発揮は難しいからです。
適度な緊張感、適度なモチベーションが相まみえる状態がよりフローに近くなります。あなたが考えるべきは「自分がパフォーマンスが高いゴルフができている状態」のときに緊張感とモチベーションはどこに分布されるのかを、まずは感覚値で良いので考察することです。
画像A内のケース【1】のゴルファーは「モチベーション80/緊張感70」を示しています。このゴルファーは試合やコンペに対してしっかりとスコアや順位の目標やチャレンジするプレー目標を設定し、モチベーションが高い状態かつ緊張感が高い状態が良いゴルフにつながるタイプです。
ケース【2】のゴルファーは「モチベーション65/緊張感20」を示しています。試合やコンペに対し適度なやる気を持ち、ただいつものラウンドのようなリラックスした状態でこそパフォーマンスを発揮するタイプです。
ケース【3】のゴルファーは「モチベーション30/緊張感30」を示しています。このゴルファーは試合やコンペでも動機付けや緊張感はそれほど必要なく、いつも通りのニュートラルなメンタリティでプレーすることでパフォーマンスを発揮するタイプです。
あなたはいかがでしょうか、図のどこに分布すると思いますか? これが分かればモチベーション、緊張感の2軸で自信のパフォーマンスが高い状態を分析し、本番でモチベーションを上げる必要があるのか、ないのか? 緊張感は上げる必要があるのか、下げる必要があるのか? の答えが出るはずです。
ちなみにどのようにモチベーションを上げるか、緊張度を下げるかは過去にも解説してきたのでそちらをご覧いただければ幸いです。
今回は誰にでもできる実践的なフロー状態へのアプローチについて解説していきました。ぜひ参考にされてご自身のゴルフのパフォーマンスアップに活用されてください。