先の「全米女子オープン」でメジャーチャンピオンに輝いた笹生優花。憧れているロリー・マキロイのスウィングを意識するなど、海外の女子プロにも負けないパワフルなスウィングと圧倒的な飛距離を持ち、東京オリンピックではフィリピン代表として活躍が期待される。プロゴルファーの吉田一尊曰く、笹生のスウィングにはスライスを解消できる極意が詰まっているとか。詳しく話を聞いてみた。

まずはアドレスからテークバックにかけて見てみましょう。テークバックのときに腕が早い段階で曲がるということは、手先でひょいっと上げていることになります。でも、笹生優花選手のようにひじが伸びたままテークバックするということは、体の回転に伴ってクラブを上げないとできません。

画像: ひじが伸びた状態を維持しながらのテークバックは、体の回転でクラブを上げている証拠

ひじが伸びた状態を維持しながらのテークバックは、体の回転でクラブを上げている証拠

また、マキロイと笹生に共通しているのが、最初に一瞬だけ体を自分から見て反時計回りに、クラブを上げる方向と逆回転させるような動きを入れてから、少し右へシフトするように始動している点です。後方から見ると一瞬、左足が少し後ろに下がりながら伸びて、そこから左ひざが前に出てきてテークバックしているんです。

画像: 後方から始動を見ると、アドレス時(左)より体を自分から見て反時計回りに回し(中)、反動をつけてからテークバックしている(右)

後方から始動を見ると、アドレス時(左)より体を自分から見て反時計回りに回し(中)、反動をつけてからテークバックしている(右)

始動のタイミングで悩んでいる人もけっこういると思いますが、ここは真似できるポイントの一つです。手先で上げてしまうとか上げ方が分からないという人がいたら、一瞬だけ左ひざを回す(伸ばす)ような動きで“逆回転”を加えることによって、その反動でスムーズに始動できるでしょう。

トップでは左腕がしっかり伸びているし、関節が柔らかい女子プロにありがちなオーバースウィング気味にならず、右腕の角度も曲がり過ぎていません。右ひじが曲がる角度は90~110度がもっとも力が入ると言われていますが、曲がり過ぎると力が抜けてしまいます。すると、バックスウィングの勢いで軌道がズレたり暴れたりなど、不安定な要素が生じてしまいます。

画像: トップでも左腕がしっかり伸び、右ひじも曲がり過ぎていない

トップでも左腕がしっかり伸び、右ひじも曲がり過ぎていない

でも、右ひじが曲がる角度を適度にキープできていれば、切り返しで下半身がグッと先行して勢いがついても、腕の位置が暴れません。笹生選手が飛距離と方向性を両立できる要素の一つだと思います。

ここもアマチュアのみなさんが真似できるポイント。トップを深く入れず、右ひじを曲げ過ぎないよう気を付けてみてください。右ひじを伸ばしたままバックスウィングをして、その勢いでちょっと曲がるくらいで十分です。

それよりも曲げて軌道がブレると、速く振れたとしても球が曲がってしまうし、曲がり幅が増えたら飛距離をロスします。安定する要素をしっかり作ることで、よりフルスウィングができるようになるでしょう。

ダウンスウィングも同様で“タメ”がスゴくて手首は曲がっていますが、右ひじの角度を見るとそんなに大きく曲がっていません。ココが曲がり過ぎると、当たれば飛ぶかもしれませんが、球が曲がる要因に。右ひじの角度をキープすることによって安定感が生まれます。「手首は柔らかく、ひじは突っ張る」くらいの感じで、ちょうどいいでしょう。

画像: ダウンスウィングでは体を下方向に沈め、地面反力を使ってスウィングの出力を上げている。力を入れてグッと踏み込むのではなく、力を抜いて体を落とすことがポイントだと吉田は言う

ダウンスウィングでは体を下方向に沈め、地面反力を使ってスウィングの出力を上げている。力を入れてグッと踏み込むのではなく、力を抜いて体を落とすことがポイントだと吉田は言う

そして、ダウンスウィングで踏み込む動作、これが飛距離のポイントになってきます。いわゆる“地面反力”を上手く使えているポイント。ただし、この踏み込む動作を間違って認識している人がけっこういます。

グッと力を入れて踏み込もうとする人がいますが、実はこれ、フッと力を抜いて“落ちるだけ”なんです。自分の体が落ちることで、その落下速度が生まれて強い力を生む。筋力を使うんじゃなくて“落下エネルギー”を使うということです。クラブや腕を落下させるのではなく、自分が落下することでひざがグッと曲がる。力を入れてひざを曲げたり屈伸するのではなくて“落ちるだけ”。そして、落ちたモノを跳ね返す力を使うことで、飛ばしのエネルギーが生まれてくるんです。

ダウンスウィングで曲がったひざが、当たる瞬間にピンと伸びるのも特徴ですが、ひざの伸び方は人によって違います。例えば、ダスティン・ジョンソンは左足が伸びますが、笹生選手やマキロイやタイガーたちは両足が伸びます。左ひざが伸びると、体が回転しやすくなるのでフェードが打ちやすい。右ひざも一緒に伸ばすと、体の回転が一瞬止まることでヘッドが走るので、ドロー系の球が打ちやすくなるんです。

画像: ダウンスウィングで左サイドへ回転してきた右ひざを、インパクトで逆方向にツイストさせることでさらにヘッドを走らせている

ダウンスウィングで左サイドへ回転してきた右ひざを、インパクトで逆方向にツイストさせることでさらにヘッドを走らせている

さらに一瞬だけ右ひざが“逆回転”して戻っているように見える動きがあります。一回左に乗っていったものが、右ひざが伸びることで、インパクト前後で“逆に動く”=ツイストするような動きが生まれていて、するとヘッドがスゴい走りドローが打ちやすくるわけです。

これに関してはカンタンに真似できるポイントではなく“超ウルトラ難易度”にはなります。でも、これが真似できたら球をバシバシつかまえられるので、飛距離アップにもつながりやすい。真似する価値はあると思います。

笹生選手のスウィングのポイントを大まかにまとめると、始動は小手先ではなく体を使ってクラブを上げる、テークバックで右ひじが曲がり過ぎないので安定感が高まる、ダウンスウィング~インパクトで右足を伸ばす。この足やひじの動きをしっかり真似できれば、ヘッドが走ってスライスやプッシュアウトなど球が右へ行くことがまずなくなります。ちょっと難しいかもしれませんが、真似していただければスライスを解消できると思うので、ぜひチャレンジしてみてください。

写真/2021年のTポイント×ENEOSゴルフトーナメント 撮影/大澤進二

画像: オリンピックでも注目!笹生優花のスウィングをマネしてスライスを直そう! youtu.be

オリンピックでも注目!笹生優花のスウィングをマネしてスライスを直そう!

youtu.be

This article is a sponsored article by
''.