個性的なスウィングの持ち主であり、世界屈指のロングヒッターとして知られるマシュー・ウルフ。プロゴルファーの吉田一尊によると、今どきの「シャローイング」を正しく身につけるために役立つポイントがたくさんあるという。

マシュー・ウルフはバックスウィングから独特な雰囲気がありますね。体の回転でクラブを上げていきながら、体から腕がどんどん離れていく感じ。そして、右腕が伸びている代わりに、左腕が曲がってくるんです。クラブがかなり前に傾いた状態でテークバックが上がっていく。まるで野球のホームランバッターを思わせるフォームです。

画像: 手元よりヘッドが先行する形をキープしつつ、腕を体から話すようにテークバックする(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

手元よりヘッドが先行する形をキープしつつ、腕を体から話すようにテークバックする(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

重要なポイントは、ヘッドの位置がグリップよりも前にあること。クラブの構造上、どうしてもヘッドが右に傾く=フェースが開きやすいものです。すると球が右へ飛んだりスライスしたりしやすいので、つかまえようとして手を返したり肩が突っ込んだり余計な動きが入ってしまう。手元より前にヘッドがあって前に傾いた状態をキープできれば、方向性が良くなってきます。それを極端にやるとマシューのようになりますが、その量が“少量”であればすべての人が真似できると思います。

後方から見ると、クラブがかなりアウトに上がりますが、右腕の前腕が回内(手のひらが下を向くように回転させる動き)をしながらテークバックが上がっていきます。トップからはヘッドを回す動作(ヘッドが頭の周りを回る)が入ってクラブをループさせながら、右ひじが内側を向いてくる動きに変わる。これがいわゆる「シャローイング」という動きになるんです。

画像: 右腕前腕を回内させつつアウトサイドにクラブを上げていき、トップにかけてヘッドを回す動作が入りクラブが背中側に倒れる。これがいわゆるシャローイングの動き(写真は2019年のシュライナーズ・ホスピタルズ 撮影/姉崎正)

右腕前腕を回内させつつアウトサイドにクラブを上げていき、トップにかけてヘッドを回す動作が入りクラブが背中側に倒れる。これがいわゆるシャローイングの動き(写真は2019年のシュライナーズ・ホスピタルズ 撮影/姉崎正)

トップで右腕が高い状態(フライングエルボーのようなカタチ)から、腕を回しながらダウンスウィングに入ってクラブが倒れてくる。そうすることによってクラブが体に巻きつくようにシャローに入り、インサイドから下りてきやすくなります。

画像: 左足かかとが外側を向くくらい強く踏み込み、クラブが体に巻きつくようにダウンスウィング(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

左足かかとが外側を向くくらい強く踏み込み、クラブが体に巻きつくようにダウンスウィング(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

ただし、トップでここまでヘッドを動かすのは、かなり難しいでしょう。でも“気持ち”クロスするくらいのトップだったら、切り返しでクラブを倒す動きもしやすいですよ。シャフトがあまり寝ないように、少し立てるイメージで上げていくんです。

そうすると、ダウンスウィングでアウトから入って肩が突っ込んだり、ヘッドがスティープ(鋭角)に入ってくるのではなく、シャローに入れるポイントにもなります。こういう要素を少し取り入れるのは、大事なポイントじゃないでしょうか。

ダウンスウィングでは“アウトステップ(左足のかかとが構えた位置よりも外に出る)”を踏みますが、これは飛ばし屋に特有の動き。これはドローヒッターの飛ばし屋に多い動きですね。

ダウンスウィングで注目したいのが、スタンスの幅がフォローにかけてだんだん狭まっていくこと。切り返しで“アウトステップ”をして、そこから体が回って両足のつま先が内側を向いてる状態から、フォローにかけてつま先が外向きに開きながら足の間隔が近づいてくる。かなり独特な動きですね(笑)。

画像: 踏み込んだ左足を後ろ側に蹴ることで、インパクトからフォローにかけてスタンス幅が狭くなっている(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

踏み込んだ左足を後ろ側に蹴ることで、インパクトからフォローにかけてスタンス幅が狭くなっている(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

このアクションをひも解くと、インパクトにかけて踏み込んでから“上”ではなく“後ろ”に脚を蹴ってるんです。後ろに蹴る動きを多く入れることによって、ヘッドが前に出ることと体が後ろに行くことによる“引っ張り合い”が起きて、ヘッドを走らせられる。それにしても、ここまで強烈にできている選手は珍しいですね。

ダウンスウィングからインパクトにかけて、お尻の位置がアドレスよりもだいぶ後ろに下がっています。上半身を押さえ込むのではなく、下半身を後ろに引っ張るほど前傾はどんどん深くなるし、前傾角をキープしやすくなる。上体が起き上がってあおってしまったり、インパクトでひざが前に出ながら上体が起き上がってしまう人は、このように下半身を後ろに引く動作を真似することによって、前傾をキープしやすくなります。反対に、上半身を押さえにいった前傾キープは、基本的にカット軌道のスライスになりやすいんです。

画像: ダウンスウィング~インパクト時のお尻の位置がアドレスよりも背中側に引かれていることで、前傾角をより深い状態でキープできている(写真は2019年のシュライナーズ・ホスピタルズ 撮影/姉崎正)

ダウンスウィング~インパクト時のお尻の位置がアドレスよりも背中側に引かれていることで、前傾角をより深い状態でキープできている(写真は2019年のシュライナーズ・ホスピタルズ 撮影/姉崎正)

テークバックでクラブが前にある状態から、切り返しでループしてシャローにインサイドから入る。そのままだと単なるプッシュアウトかチーピンになるのを、下半身を後ろに引くことでフォローを低い位置に振っていける。

「シャローイング」を取り入れて失敗する人はけっこう多くいますが、それはシャローな動きが入っても、そこから体が浮いてしまうとまったく当たらないから。フォローも低い位置で振る必要があるんですが、自分の体が浮いてしまうと低い位置に振れないので、そのためにも足が下がる動きがポイントになります。

スウィング自体は独特ですが、素晴らしいエッセンスがたくさんありますね。それらすべてを大げさにやっているのがマシューです。ここまでを真似しようとすると、かなり大げさで難しいでしょう。

考え方としては“練習ドリル”というイメージ。クラブがインサイドに入って寝てしまう、上体が起き上がってしまう、踏み込む動作ができない、腰が引けてしまう、といった課題に対して“練習ドリル”くらいのイメージを持っていただければ、取り入れやすいのではないでしょうか。

“完全な真似”というよりは、どちらかというとマシューの要素を“自分のスウィングを改善するための練習ドリル”くらいの感じで取り入れてみましょう。

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