最近は、ひとりではなく複数のコーチに師事する選手がいる。スウィング、パッティングやショートゲーム、フィジカルなど、各コーチの担当が違うのだ。指導を細分化することで、効率よく上達が望めるという発想だ。コーチの細分化は、海外のプロの間では今や当然の流れになっている。
最新機器を導入してパットを科学する橋本真和コーチ
日本でも、かつてはひとりの師に師事することが多かったが、それぞれの分野に専門のコーチをつける選手が増えている。橋本真和コーチは日本ではまだ珍しいパッティング専門コーチ。最新測定器とデータを駆使して数多くのプロを指導して結果を残しているが、パッティング専門コーチが生まれたのは、最近のコースセッティングと関係があると、タケ小山は言う。
「昔はトーナメントといえども、グリーンの芝が不揃いなコースが多く、感性に頼らざるを得ない部分が多々ありました。しかし、現在のグリーンは芝の刈込みが均一でローラーもかけられており、絨毯のようにピュアな芝なので、ボールの打ち出しや回転数など、毎回同じように打てることが重要視されています。そして最新機器のおかげで転がり出す瞬間の回転はもちろん、インパクト時のパターの角度など、ほとんどすべてのことが数値として確認できます」(タケ小山・以下同)
「パッティングに特化した橋本真和コーチは、人の目には見えない数値もビジュアル化して教えてくれます。ただ、彼のレッスン動画を見たのですが、距離感や上り下りのスピードの違いなど、数値だけではないフィーリングの観点からもレッスンしており、そこが多くの選手から支持される理由でもあるのでしょう」
不調のパットを指導、藤田さいきを復活優勝へ導いた大本研太郎コーチ
昨年、11年ぶりに優勝した藤田さいきのスウィングコーチは父親だが、パッティングが不調になり、4年前から大本研太郎コーチをパッティングコーチにつけて結果を出した。
「最近はデータ解析が多くなったことで、かつての『レッドベターのアスレチックスウィング』のように、独自の理論で教えるコーチが少なくなりました。そんななか大本研太郎コーチは数少ない独自性が高い自分のメソッドで指導するコーチです。プロアマ問わず、多くの選手から支持されているのは彼の理論が優れている証拠だと思います」
さらに、フィジカルコーチをつけてトレーニングを行う選手が増えてきているが、今後は、さらに細分化が進むとタケ小山は予想する。
「ひと昔前のプロゴルファーは、走り込みなどはしていたものの、現在のようにジムでのトレーニングで本格的に体を鍛えるプロはいませんでした。それが私の師である故・金井清一プロが初めて大学教授のもとで科学的トレーニングを取り入れ、今ではそれが当たり前になっています。金井プロは特定の師匠がいなかったこともあるせいか、色々なプロによく“教えてもらいに”行ってました。『このショットならこの人、あれはあの人』みたいな感じです。やっぱり指導者にもそれぞれ得意な分野がある。だからレッスン界も『フェアウェイウッドなら』『ロブショットなら』といったように、もっと細分化されていくと思います」
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※週刊ゴルフダイジェスト2023年2月21日号より(PHOTO/Hiroyuki Okazawa、Hiroaki Arihara、Yasuo Masuda)