多くのゴルファーに愛され、ゴルフの楽しみを提供した話題のクラブに贈られるゴルフダイジェストアワード2023のクラブ・オブ・ザ・イヤー。ドライバー部門、アイアン部門、特別賞、それぞれの受賞クラブが生まれた背景に迫った。その1回目は、ドライバー・オブ・ザ・イヤー受賞のローグST MAX FAST。

ロースピン・スタンダード・ドローバイアスそして第4のモデル…

ここ数年、ドライバーブランドの多くが、「ロースピン」、「スタンダード」、「ドローバイアス」の3タイプをラインナップしてきた。そのなかでキャロウェイは、2020年のマーベリックシリーズから、MAX FASTという「軽量モデル」を数カ月遅れでリリース。

そして、翌年のローグSTで、MAX FASTを含めた4タイプを同時発表した。

画像: 2022年、ローグSTドライバー4ラインナップのひとつとして売り出されたローグST MAX FAST

2022年、ローグSTドライバー4ラインナップのひとつとして売り出されたローグST MAX FAST

1991年、当時としては画期的な大型メタルドライバー・ビッグバーサを発売し、国内で10万本を売り上げたキャロウェイ。

以来、従来の手法にとらわれない発想のクラブを生み出してきた。近年では2017年に革新的な2本の柱・ジェイル ブレイク テクノロジーをヘッド内部に搭載したGBBエピックが大ヒット。

2019年には、人工知能AIによるフェース設計を取り入れたエピックフラッシュをリリースし、2020年2月にはAIがさらに進化し、芯を外しても飛ぶ、というマーベリックシリーズ3モデルを発表した。

ところが7月になると、突然、‟第4のモデル”となるライトウェイトのマーベリック MAX FASTをリリースした。

MAX FASTはヘッドスピードを上げたい人のための軽量モデル

「MAX FASTは、グローバルモデルよりもかなり軽量なクラブで、ヘッドスピードを上げたいアベレージゴルファーのために開発されたモデルです」とは、日本のキャロウェイでクラブ開発に長年携わってきた茂貫太郎氏(キャロウェイゴルフ マーケティング ハードグッズ アジアプロダクトマネジメント シニア マネージャー)。

「軽量モデルのドライバーは、マーベリックが初めてではありません。覚えておられる方もいらっしゃると思いますが、2017年のGBBエピックでは『サブゼロ』『スター』の2モデルをラインナップしてました」

「この『スター』は、日本限定モデルで、グローバル展開の『サブゼロ』よりも軽量。そのためシャフトは着脱式ではなく接着式のネックを採用しました。ただし、この『スター』はレガシーユーザーに買い替えを促すために作ったモデルでした」(茂貫氏)

ここで日本でのキャロウェイの歴史を振り返っておこう。日本では1988年から住友ゴムがキャロウェイ製品を扱っていた。

しかし1999年、キャロウェイは住友ゴムとの代理店契約を更新せず、2000年には日本法人を設立しキャロウェイゴルフを誕生させた。

キャロウェイブランドが扱えなくなった住友ゴムは、ゼクシオブランドを立ち上げ、これが大ヒットとなり、一躍‟国民的ブランド”になった。

独立したキャロウェイは、E・R・C、E・R・CⅡが‟飛ぶ”と人気になる一方、‟球が上がりにくい”、‟難しい”というイメージもあった。

「E・R・Cシリーズは飛距離を求めるゴルファーのニーズに応える一定の役割を果たしました。そして次に進むべく、日本専用モデル・レガシーを開発したんです」

だが、当時はゼクシオを意識していたわけではなかった。

「日本のアベレージゴルファーをターゲットにした2008年の初代レガシーは、Rシャフトモデルでも約300グラムあり、ゼクシオユーザーを意識したスペックではありません」

画像: 日本のキャロウェイゴルフでクラブ開発に携わり、アメリカ本社との折衝なども行う、アジアプロダクトマネジメント シニアマネージャー茂貫太郎さん。右は2008年登場、キャロウェイ初の日本モデル・初代レガシー

日本のキャロウェイゴルフでクラブ開発に携わり、アメリカ本社との折衝なども行う、アジアプロダクトマネジメント シニアマネージャー茂貫太郎さん。右は2008年登場、キャロウェイ初の日本モデル・初代レガシー

「しかし、4年後の2012年モデルを出したときに、『ゼクシオのような軽量スペックがほしい』という声がありました。そこで2014年にグローバルモデルのビッグバーサ アルファが出たときに、日本専用の軽量モデル・ビッグバーサ ベータを出したのが始まりです」

キャロウエイ史上最軽量を謳い、Rモデルで約267グラムというゼクシオより軽いビッグバーサ ベータだったが、思ったほど反響がなく、ゼクシオの牙城を崩すには至らなかった。

ところが2017年のGBBエピックの大ヒットにより、GBBエピック スターが売れに売れ、知らぬ間に一部のゼクシオユーザーをも取り込むようになったという。

「だからといって、すぐに次モデルをゼクシオのようなスペックにしようとは考えませんでした」

「2018年のローグ、2019年のエピック フラッシュでも『スター』は継続ラインナップしていますが、すでに翌年のマーベリックが完成に近づいていた2019年8月のこと。再び、『ゼクシオのようなスペックがほしい』という要望があったのです」

「しかし、そこから日本専用モデルを作るとなると最低2年はかかるし、コストも膨らみます。そこで既存のグローバルモデルをベースに日本(アジア)モデルを作ってほしいと米国本社を説得しました」

軽くするにはネックの調整機能はつけられないと接着式のホーゼルを採用。それでも完成までに時間がかかり、2020年2月のグローバルモデルに遅れること約半年、ようやく、マーベリックMAX FASTが発売された。

「マーベリックでは、まずMAX FASTのドライバーを作ったのですが、予想以上に日本人のニーズがあることが分かりました。そこで翌2021年のエピック MAX FASTでは、アイアンまでフルラインナップしました」

「マーベリックに続き、グローバルモデルから半年遅れの夏の発売でしたが、おかげさまで評判は上々でした」

画像: マーベリック(2020年)、エピック(2021年)、ローグST(2022年)。3代続けたMAX FASTでは軽量感を出すためにシルバー基調のコスメを採用したが、グローバルモデルと別シリーズに見えるとの声も出ていた

マーベリック(2020年)、エピック(2021年)、ローグST(2022年)。3代続けたMAX FASTでは軽量感を出すためにシルバー基調のコスメを採用したが、グローバルモデルと別シリーズに見えるとの声も出ていた

「タレントの関根勤さんと、三浦桃香プロのCMも話題となり、多くのゴルファーに関心を持っていただけました。ならば、最初からグローバルモデルと一緒に発売したほうが、ゴルファーの選択肢が増えるだろうと、2022年のローグSTからはグローバルモデルとMAX FASTを同時発売することになったんです」

どこよりも早く、ロースピン・スタンダード・ドローバイアス、そしてライトウェイト、という4タイプをラインナップしたキャロウェイ。

画像: 最新モデルのパラダイム MAX FASTでは、グローバルモデルと同様のコスメを採用

最新モデルのパラダイム MAX FASTでは、グローバルモデルと同様のコスメを採用

23年前、キャロウェイと別れたことで誕生したゼクシオが開拓してきた軽量ドライバー市場で、MAX FASTがゼクシオの牙城を崩し始めている。

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※週刊ゴルフダイジェスト2023年4月11日号より

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