多くのゴルファーに愛され、ゴルフの楽しみを提供した話題のクラブに贈られるゴルフダイジェストアワード2023のクラブ・オブ・ザ・イヤー。ドライバー部門、アイアン部門、特別賞、それぞれの受賞クラブが生まれた背景に迫った。その2回目は、アイアン・オブ・ザ・イヤー受賞のフォーティーンTB-5フォージド。

1981年にクラブデザイナーだった故・竹林隆光氏が創業したクラブ設計会社、フォーティーン。国内外を問わず多くのメーカーから依頼を受け、クラブを設計した。

フィーリング重視だったクラブ作りに、いち早く「重心」という数値を取り入れ、データを蓄積し、誰も思いつかなかったような構造を実現してきた。

フォーティーンとは、「すべてのゴルファーにベストな14本を」という思いからつけられた社名。モデルごとにターゲットプレーヤーを設定したクラブ作りは、創業当初から変わらない。

「TB-5 フォージドはもともと、競技ゴルファーであるスタッフが年齢を重ね、練習機会も少なくなったが、やっぱり軟鉄鍛造アイアンでプレーしたい、という思いに応えて、やさしさを追求したモデルです。フォーティーンのアイアンはモデル名に冠される数字が機能を表しています」

画像: フォーティーンTB-5フォージド

フォーティーンTB-5フォージド

「最もシビアなモデルが9で、7、5、3と数字が小さくなるにつれ、やさしくなっていきます。5シリーズは、程よいやさしさを持ち、前モデルTC-544も軟鉄鍛造のキャビティアイアンで、やさしく飛ばせると評価をいただいていました」

そう話すのはTB-5フォージドを企画したフォーティーンの池田純氏。

常識を疑え

「では、そもそも軟鉄鍛造を好む人が求めているものは何か? それを考えたときに、やはり“打感の軟らかさ”が第一ではないかと」

「マッスルバックの打感がいいのはフェースが肉厚だから。一方でキャビディ構造ではバックフェースを薄肉化して、やさしくすることと引き換えに打感を犠牲にしている。では、キャビティ構造の寛容性を落とさずに打感をよくできないのか? 試行錯誤を繰り返す日々が続きました」(池田氏・以下同)

そのうち、「なぜ、やさしい軟鉄鍛造はキャビティ構造なのか。何でこの形なんだろう?」と、かつて故・竹林氏がつねに実践して示してきた「常識を疑え」という言葉が浮かんできた。

ベースとなるTC-544のバックフェースを削り、平らにしてキャビティ構造のトウヒールの縦の壁を崩す。

そこに金属パテを盛りバックフェースのデザインを作っていく。削ったぶんの余剰重量を、ソール部とフェースの裏側に盛ったときに、低重心化と打感の向上が実感できた。

そこから削っては盛り、打って試す。これを数えきれないほど繰り返して、手作りのモックが完成した。

「自分が開発者ではないからできたのだと思います。開発者だと、これまでの常識や経験から『寛容性を求めるならキャビティだよね』と、こういう形にはなっていなかったでしょう」

「単純に、ゴルファーとして『打感をよくしたい。形はもっとシャープでカッコイイのがいい』という思いがあったから、この形が作れました」

完成したモックは開発チームに渡り、CADに取り込まれデータを整えて、マスターモデルが完成した。

画像: ベースのTC544アイアンのバックフェースを平らに削り、削ったぶんの余剰重量を金属パテで盛りデザインを考えていった。試作を繰り返しモックが完成。CADに取り込みデータ補正してマスターモデル完成

ベースのTC544アイアンのバックフェースを平らに削り、削ったぶんの余剰重量を金属パテで盛りデザインを考えていった。試作を繰り返しモックが完成。CADに取り込みデータ補正してマスターモデル完成

「モックを渡すときに『湾曲したデザインにしてほしい』と言ったら、誰かが『劇場みたいだね』と言ったんです。そこから“シアター”となってシアターブレード(TB)という名が生まれたんです」

トウとヒール側になだらかな厚みを持たせ、バックフェースが湾曲した「シアターブレード構造」は「クラブは美しくなければならない」という創業時からフォーティーンが守り続けるテーマも具現化した。

画像: トウとヒール側になだらかに厚みを持たせ、バックフェースが湾曲しているシアターブレード構造。「劇場のよ うな形状だね」の言葉からTB(TheaterBlade)と名付けられた。開発の中心となったフォーティーン池田純氏

トウとヒール側になだらかに厚みを持たせ、バックフェースが湾曲しているシアターブレード構造。「劇場のよ
うな形状だね」の言葉からTB(TheaterBlade)と名付けられた。開発の中心となったフォーティーン池田純氏

「これも竹林が言っていた言葉ですが『きれいなレストランでも、厨房ではバタバタしている。そういうのは見せてはいけない』という思想が伝統的に受け継がれています」

「なるべく何かをしていることを見せない。それはTB-5フォージドに当てはまります。ターゲットはアベレージゴルファーなので、ややグースをつけ、つかまりをよくしています」

「ソール形状はフォーティーン独自のスクープソールではなく、やさしいウェッジDJ-4で培った、ユニバーサルソールをアイアンに初採用。アベレージでも使いやすく、インパクトでソールが滑ってくれます」

画像: 程よい大きさのセミラージサイズ。HS40m/s前後の人にとっての打ちやすさを追求し、滑りがよく寛容性の高いユニバーサルソールを採用

程よい大きさのセミラージサイズ。HS40m/s前後の人にとっての打ちやすさを追求し、滑りがよく寛容性の高いユニバーサルソールを採用

見た目は硬派な軟鉄鍛造、しかし打ってみればやさしく、マッスルバックに通じる打感と美しさ。発売から2年経ち、フォーティーン史上最高の販売数を記録している。

「今のところ完成形で、これを改良する余地はありません」。あと2年、モデルチェンジはしない。

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※週刊ゴルフダイジェスト2023年4月11日号より

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