ゴルフに必要な「周辺ビジョン」とは?
視力とビジョントレーニングの違いを簡単に言うと、「視力」は静止したモノを見る力で、「ビジョントレーニング」は情報を眼から脳に入れて、それをもとに体を動かす一連の動きのこと。
今回はビジョントレーナーの尾形宏基さんにゴルフに役立つビジョントレーニングを教えてもらった。
「まず大切なのは、目に関わる事は眼科専門医に相談して、目に異常がない状態から始めることです。よく見えている状態から始めなければ、ビジョントレーニングの効果がわからず目に悪影響を及ぼす可能性もあるからです」
まずゴルフに必要な「周辺ビジョン」とは何なのだろう。
「人間の視界は200度あると言われていますが、ハッキリ見えるのは中心から2度くらいで、必要な情報を判別できる有効範囲は20度くらい。その他は、“だいたい”という感覚で見ているんです。その“だいたい”の範囲(周辺ビジョン)をビジョントレーニングで広げるわけです」
専用機器で視界の感知力を向上させるトレーニングがある。
「左右3個ずつの星型のターゲットが中心から放射線状に放たれ途中から回転を始めます。その中で最も速く回転しているものを見つけるのですが、ターゲットを目で追おうとせず、視線は中央に固定し周辺ビジョンを使ってターゲットを“感じる”ようにします」
大事なのは姿勢と頭の位置だ。
「姿勢が、猫背や反り腰にならないよう見る物に正対し、真っすぐ立ちます。そこが偏るだけで距離感覚がズレるからです。あとは、ターゲットを眼で追いたくなるので頭を動かさない意識が大事です。ゴルフでは球を追うヘッドアップなどにも繋がります」
では自宅でできるトレーニングを紹介してもらおう。
周辺感知を上げる眼球の親指トレーニング
「親指を目線の位置で合わせ徐々に両手を離していきます。姿勢と頭の位置を先ほど言った通りにして、指が見える範囲を広げていきます。次に「上下」、「斜め」も8セットずつ行います。普段意識して見ようとしていない視界の感覚を上げることで周辺ビジョンの範囲が広がっていきます」
そもそもゴルフにおいて、周辺ビジョンが広がることでどのような“良いこと”があるのかだが、実はけっこう凄いのだ。
まず、「ヘッドアップ」が減る。
ヘッドアップの原因に「結果を見たがる」ことが挙げられるが、上手くいけばアドレスの状態で200度まで視界が広がるので見にいく必要が無いわけだ。
「周辺ビジョンによって左側の視界が広がり、それが安心感につながると思います。周辺ビジョンの必要性は(数値で比較すると)野球が3でゴルフは5という違いがあります。そういった部分にも繋がるのかなと思います」(尾形さん)。
視野が広がることは、ボールを打つときの安心感につながる
この「左サイドの視野」が広がることは最大のメリットだ。例えば、プロのなかには短いアプローチは距離感を合わせるためにボールの落としどころを見て打てとアドバイスをする人もいるが、アマチュアにとってはボールを見ないで打つのは不安。
そこで、「右眼でボールを見て左眼で落としどころを見る」ということができればアプローチの距離感も成功率も格段に良くなるが、それは可能だろうか。
「それは可能だと思いますね。そのためにビジョントレーニングは効果的だと思います」(尾形さん)
この「右眼でボール、左眼は落としどころ」の使い分けはパッティングにも有効で、ショートパットなら右眼はボール、左眼はカップ、ロングパットなら左眼はスパットに向けることで、打ち出し方向が安定するのでラインを外すことが少なくなるというわけだ。
さらに、一連の周辺ビジョンなどの視機能を強化するトレーニングをすることで、「ダフリ」を減らすことも期待できる。
ビジョントレーニングでダフリが減る
「ビジョントレーニングに用いるV -Trainingの中に『中心部と周辺部の感知力』を強化するプログラムがあります。まず、画面中央に2つの指標となる●が表示されます。次にターゲットの●が『右から左』、『左から右』へ双方向から次々と流れ出てきます。この時に中央の指標の●の色と同じ色のターゲットの●が流れてきた時に素早くタッチすることでスコアが表示されます。
これによって集中力や周辺の視界、反射神経などが鍛えられるわけですが、このトレーニングのポイントは、次ぎ次に現れるターゲットに意識を集中させることなく、全体を見て目と手を協応させるということで、そのためには中心に視線を置き、全体をボーっと見るということが大事になってきます」(尾形さん)
ダフリは主に、アドレスからボールを凝視して、インパクトで当てにいく入れ込み過ぎによることが多い。それを避けるためにプロはよく「アドレスでボールはボォ~っと見る」というアドバイスをするが、周辺の視界を鍛えるトレーニングによって、見えている所の中心部に集中しながら周辺部にも意識を配る「全体をボーっと見る」という、プロが言うテクニックが身に付くというわけだ。
最後に、周辺ビジョンを生かしたアドレスの入り方を紹介する。
“スポーツビジョン 流”のアドレスの入り方
まずステップ①で、ボールの後方からターゲットを確認する。
この時に、ボールとターゲットの距離感と打ち出しの方向を決め、そのイメージを脳にフィクス(固定)させる。
このイメージのフィクスのトレーニング方法に関しては、「自宅で出来る ビジョントレーニング」を参照のこと。
ステップ②はアドレス入った時にチラッとターゲット方向を見る動きだが、これは省いてもいい。
ステップ①で距離と方向をフィクスした際に、さらに横向きの状態でターゲットを見ることで脳が混乱することもあるので、左眼でチラッとターゲットを確認するくらいにしよう。
ステップ③はアプローチと同様に、右眼でボールを、左眼でターゲットをボーっと見る。
結果は恐らくナイスショットになっているはずだ。
自宅でできるビジョントレーニング
ターゲットトレーニング:見た情報を脳に記憶させ動きに再現する。最初に眼を開けて机の下を潜るイメージをフィクスし、次に眼を閉じて潜ってみる。
瞬間視記憶:9つのマスに0.1秒間表示される0 ~ 9の数字を記憶し再現する。自宅では誰かに紙に書いた数字を瞬時に出して伏せてもらう。
TEXT /Masaaki Furuya THANKS/メガネのイタガキ高崎本店
※週刊ゴルフダイジェスト2023年5月2日号「不調の原因は”眼”にあった!? ゴルファーのための『スポーツビジョン』」より