「自分に合わせたパーを設定。"マイパー”で苦手なものが見えてきます」というのは、レッスン歴31年の吉澤昌也プロ。今年のPGAのティーチングプロアワードで優秀賞を受賞した吉澤の教えを聞いてみよう。
画像: 吉澤プロが作成したオリジナルの「マイパースコアカード」。「RANGE」にはそのホールのヤーデージ、「MY PAR」に『目標マイパー/実際のスコア』を記入。「MY PAR ON」「MY PUTT」も同様に目標を設定

吉澤プロが作成したオリジナルの「マイパースコアカード」。「RANGE」にはそのホールのヤーデージ、「MY PAR」に『目標マイパー/実際のスコア』を記入。「MY PAR ON」「MY PUTT」も同様に目標を設定

スコアカードの"パーの数字”にしばられなくていい

「僕は最初からゴルフのセンスがなくて(笑)。でも職業にしたかったので、当初からティーチングプロになろうと考えていたんです」

親しみやすいソフトな語り口で話すのは吉澤昌也。

「日本ってトーナメントに出られないからしょうがなくレッスンする風潮もあります。でも職業として、ゴルフの楽しさも伝えるフィールドがあると思うんです」

そんな吉澤が考案したのが「マイパー(My Par)」という発想だ。

「スコアカードのパーにしばられて、楽しくなさそうな人が多かったんです。考えたのは10年前、実際取り入れたのは5年ほど前です。“パーおじさん”と闘うのがゴルフの本質だとボビー・ジョーンズが言っています。その“パーおじさん”が“マイパー”なんです」

レッスンプロたちはよく「ボギーペースで回ろう」などと言うが、「生徒さんにはピンとこない。それで、スコアカードのパー4の欄に『6』と書くと、上手くいってないと思ってしまう。自分のレベルに合わせたパーを設定することによって達成感も出ますし、次のステップにいくために必要な技術も明確になるんです」

吉澤が作成したオリジナルのスコアカードに記入していく。

「1、2週間前から、コースを確認し、自分の実力などを考えながら『マイパー』を決める。マイパーは、9つのステップに分けているので、そちらを基準にしてください(※①)。生徒さんとはコースごと一緒に考えます。今のスコアを聞いて少し上を設定する。コースを事前に知ることも勉強になります」

ポイントは1ホールごとに「マイパー」を考えること。

「マイパーを出すための各ホールの攻め方を考えるんです。たとえばパー3は必ず1オンを狙いがちですが、2オン2パットでいいと考えることもできるはずです。そして、たとえばマイパーを『6』に設定したホールは、それに対して3オン、パット数は3、というような自分なりの目標を立てます。

あとは当日設計図通りにいかにプレーするか。『上手くいけば……』『あわよくば』を排すんです。そしてプレー後に実際の数字を書いてもらう。これを見ると、グリーンに乗るまでがダメなのか、パッティングがダメなのかすぐにわかる。課題を明確にすることによって、次の練習課題を決めるんです」

無理してチョロするより、確実に3オンするという意識が大事だと吉澤。

「やっぱり言うことを聞いてくださらない方もいますよ。でも、繰り返し言い続けています。絶対2オンしたいと考えている人も、このスコアの付け方で意識は変わる。飛ばしもゴルフの楽しみではありますけど、スコアという結果に出てくると納得してくれます」

最近は空欄に、「50ヤードから何回でグリーンオンしたか」も記入してもらう。「アプローチの重要性が見えてくるんですよ」。すごくシンプルに思えるが、やってみればその効果に驚くはず。

「他のスポーツでは監督が指示を出して実行するのは選手。ゴルフって指示を出す人がいなくて、皆さん選手しかやっていない。その監督となるのが『マイパー』。監督は選手の意識を高めるため、実力に合った作戦を立てます。この監督と選手の両輪が回り始めると、スコアが出るんです」

※①→吉澤はマイパーを「9つのステップ」に分けて提唱。●9級/コースデビュー ●8級/ 144 ●7級/ 126 ●6級/ 108 ●5級/ 99 ●4級/ 90 ●3級/85 ●2級/79 ●1級/72という具合だ。

3つのスウィング×5本のクラブが基本になる

「マイパーを設定すると、具体的になぜダメだったのかがわかるので練習が具体的になるんです」

吉澤の技術面の教えは、PGAの教本に沿っている。

「ユーチューブなどでは難しい理論も多い。初心者の方が置いてきぼりをくうし、こんがらがってスクールに来る人も多いんです。100を切るために、そんなに難しい技術はいらないんです。そしてスコアの作り方を覚えましょうと伝えます。

目標スコアを達成するためにはどの技術が必要か、と逆につなげてきてほしい。技術は必要なものだけをシンプルに。それができたら次のステップに行く、の繰り返しです。どうしても打つ技術のことばかりが一人歩きしています。考え方と技術がリンクしてくるといいんです」

技術面のポイントは、4時→8時、3時→9時、L字→L字の3つのスウィングを徹底して覚えること。

「この3つは必須科目です。そしてクラブはドライバー、ユーティリティ、7I、9I、サンドウェッジの5本で考えて、あとはパター。3つのスウィング×5本のクラブの組み合わせで、アプローチ(ランニング、ピッチ&ラン)からティーショットまで打てます。

7Iまでは、3つのスウィングを使い、ドライバー、ウッド系はL字→L字のみでもいいと思います。そしてやはり、飛ばしたいという欲は大敵。ミート率を上げていけば飛距離は出ますから」

画像: 「『4時→8時』と『3時→9時』はコックを使わず。『L字→L字』はコックを使っても、深くなり過ぎないように注意します」(吉澤)

「『4時→8時』と『3時→9時』はコックを使わず。『L字→L字』はコックを使っても、深くなり過ぎないように注意します」(吉澤)

"3オン1パット"を目指せば、スコアは劇的に良くなる!

「飛距離が180Yでも70台は十分出ます」と吉澤。

「3オン1パットです。2打目の長いクラブの精度を上げて、エッジまで持っていき、寄せワンを狙う。50ヤードから3回でホールアウトすることができない人は意外に多い。それなのに、『自分は飛ばないから……』という方向で考えてしまう。

飛ばなくても、50ヤードから3回で終われると90は出ます。80台を出すにはさらにパーを増やさないといけないので、寄せワンを増やす。こうして、目標スコアから逆算してください」

ジュニア、女性、シニア、トップアマなど、多様なゴルファーを上達させてきた。

「お会いしたとき『85』くらいのスコアだった生徒さんが今は『78』も出て、神奈川県アマの決勝にいったり月例競技で優勝したりしています。意識が変わり、練習の内容がガラッと変わったと。

以前は『飛ばしたい、スウィングをよくしたい』から入っていたのが、寄せワンを拾うのが大事なことを理解し、アプローチ練習に徹するようになったんですね。すると、インパクトゾーンのクラブの動かし方がよくなるから、結局大きく振っても精度は上がます」

「マイパー」を使い、自分で自分を理解したからこそ、自分の心身をコントロールできるのだ!

THANKS/第百ゴルフクラブ PHOTO/Yasuo Masuda

※週刊ゴルフダイジェスト2023年5月9・16日号「『My Par GOLF』でシンプル上達」より

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