「100人いたら、100通りのスウィングがあっていい」。それがTPIメソッド
O編 今回は、TPIについて聞いてみようと思うんだ。ほら、その名前とか存在は知っていても、詳しくはわからないって人も多いでしょ?
坂詰 なるほど。まず、TPIというのはTitleist Performance Institute の略です。和訳すると『タイトリストパフォーマンス研究所』ですね。簡単に説明すると、スウィングメカニズム、クラブフィッティング、身体の構造や機能など、あらゆる面から、どうしたら効率のよいスウィングができるのか。そのためにはどんなエクササイズやトレーニングをしたらいいのか、などを研究する施設ということになります。
O編 わきゅうは、そのインストラクターの資格を取って、そのメソッドを基にティーチングをしてるんだよね?
坂詰 そうですね。ボクは、レベル3 という資格を持っています。最近は日本でもTPIのインストラクターは増えてきましたけど、USPGAやUSLPGAのティーチングプロは、ほぼ全員がTPIの理論を学んで、資格を取っているんですよ。
O編 そうらしいね。ところで、わきゅうは、いつ頃TPIに出合ったの?
坂詰 2010年ですね。その頃、TPIのリードインストラクターの山口英裕さんに会う機会があって。で、話を伺ったら腑に落ちることばかりだったので、ちゃんと学んでみようと思ったんです。
O編 腑に落ちるって?
坂詰 当時は、まだ手探りでやっていたので、迷ったり、わからなかったりすることがたくさんあったんです。そういう疑問に対する答え合わせができたんですよ。
O編 TPIのメソッドの特徴は、どんなところにあると思う?
坂詰 それはもう、100人いたら、100通りのスウィングがあっていい、というところじゃないでしょうか。効率のよい体の使い方さえできていれば、デザイン=形は気にする必要はないって考え方なんです。
O編 それはいいよね。誰も形を考えて走ったり、モノを投げたりしないのに、ゴルフは型にはめようとすることが多いもん。
坂詰 だって、いくらタイガー・ウッズのスウィングがカッコいいからって、それをマネしても誰ひとり同じスウィングはできないわけです。そんなデザイン=形にこだわっても仕方ないんですよ。
効率のよい体の使い方ができるスウィングを目指す
O編 効率のよい体の使い方ができていれば、って言ってたけど、それってどんな使い方?
坂詰 エネルギーを下半身、上半身、腕、クラブの順で伝えていく使い方です。それができているなら、形は人それぞれでいいんですよ。
O編 形はそれぞれでいいって、具体的には?
坂詰 たとえば、トップで右わきが開いてフライングエルボーになるのはいけないって言われてますよね? でも、肩周りの柔軟性がない人に、「もっと右わきを締めなさい」って言ってもできないわけです。
O編 肩周りの硬い人は、トップでフライングエルボーになってもいいってこと?
坂詰 いいんです。効率のよい体の使い方ができていれば、フライングエルボーでも、ボールを狙ったところに運ぶ方法はありますから。人はみんな、骨格も違えば、筋力も、柔軟性も、可動域も全部違います。だから、人によってできる動きとできない動きがあるわけです。それなら、できる動きでスウィングすればいいんですよ。
O編 ま、確かに、ジャック・ニクラスだって、フライングエルボーだったんだから、それだけで悪いと決めつけるのはおかしいよね。
坂詰 でも、もし、そういう気になる動きを直したいなら、TPIには、そのためのトレーニング法やエクササイズもあります。動きを直したいなら、トレーニングやエクササイズで直す。そういうことをしたくないのであれば、動きを変えずにスウィングを作ればいい。TPIは、どちらの方法も提案できるんですよ。
O編 トレーニングやエクササイズで動きを直すのは時間がかかるよね。プロならともかく、一般のゴルファーは、自分ができる動きでやるのが現実的な気がするな。
坂詰 そこは個々のプレーヤーが好みで選べばいいんじゃないでしょうか。あと、伝えておきたいのは、TPIって、今までの研究結果や、トレーニング法などを、すべてホームページで公開してるんです。そういうことって〝企業秘密〟にすることが多いじゃないですか。でも、誰でも、すぐに、全部見られる。そこもいいんですよ。
O編 それは素晴らしいことだね。興味のある人は、ぜひ覗いてみてほしいですね。
※週刊ゴルフダイジェスト2023年5月23日号「ひょっこり わきゅう。第16話」より