どんな動きができるのか、苦手なのかをチェックする
O編 前回、TPIについて話を聞いたけど、TPIのインストラクターって、レッスンの前に、テストをするじゃない?
坂詰 あぁ、スクリーニングテストですね。
O編 そうそう。あれって何をチェックしているの?
坂詰 身体のいろいろな部位のモビリティ(可動性)、スタビリティ(安定性)、フレキシビリティ(柔軟性)をチェックしてるんです。それを見ることで、そのプレーヤーがどんな動きができるのか、どんな動きを苦手にしてしまうかを診断するんです。TPIのインストラクターはみんなこのテストをやるし、USPGAの選手などは、ほとんどの人がそれを経験しているんですよ。
O編 テストは何種類あるの?
坂詰 全部で16種類ですね。
O編 そ、そんなにやるの?
坂詰 ええ。基本的には全部やります。全部やって、そのプレーヤーができる動きとできない動きを確認したり、その結果をもとに、弱い(硬い)ところを直したりするんです。
O編 われわれアマチュアも全部やるべきなの?
坂詰 理想的には、全部やったほうがいいと思います。ただ、アマチュアの人って、即効性を求めるじゃないですか。たとえば、柔軟性が足りなくて、ある動きができなかったとしても、それを直すために毎日トレーニングする人って、あまりいないと思うんですよ。
O編 そこまで意識の高い人は少ないかもしれないね。
坂詰 でしょ。そういう場合は、スウィングの核となる体のローテーションに関わるテストを4つくらいやってみるといいんじゃないでしょうか。
O編 4つって?
坂詰 ①骨盤傾斜、②骨盤回旋、③上半身回旋、④90/90の4つです。
O編 具体的に教えてよ。
坂詰 では、骨盤傾斜のテストから紹介しましょうか。まず、クラブを持たずに、5番アイアンくらいのアドレスを作ります。そうしたら、なるべく頭や脚を動かさずに、骨盤だけを前傾、後傾させてください。
O編 骨盤の前傾と後傾? ど、どんな動き?
坂詰 前傾というのは、お尻を後ろに突き出しながら、背中を反らせ、おへそを地面に向けていくような動きです。それに対して、後傾というのは、お尻を前に突き出しながら、背中を丸め、おへそを正面から空に向けていくような動きです。
O編 こ、骨盤だけを動かす……。なかなか難しいね。
坂詰 そうですね。前傾はできても、後傾ができないという人も多いですね。Oさんも、前傾はスムーズにできていますが、後傾するときに身体がシェイクして(震えて)ます。それは、骨盤周りの柔軟性が足りない証拠なんですよ。
骨盤の前傾後傾ができない人は、前傾角度が崩れやすい
O編 むー。なんだかできないと悔しいね。
坂詰 訓練すれば、誰でもできるようになりますよ。もし、アドレスの姿勢では上手く動かせないということであれば、四つん這いになって、背中を反らしたり(前傾)、背中を丸めたり(後傾)すると、骨盤を動かす感じがつかめると思います。
O編 あー。ホントだ。四つん這いになると、骨盤を動かしやすくなるね。で、このチェックで何がわかるの?
坂詰 たとえば、これができない人はアーリーエクステンション、つまり、ダウンスウィングで体が起き上がって前傾角度が崩れる動きになりやすいんです。
O編 前傾を保って打てない人は、ここに原因があるということ?
坂詰 もちろんほかの要因もありますが、骨盤の前傾後傾ができない人は、間違いなく前傾角度が崩れやすいでしょうね。
O編 ってことは?
坂詰 前傾を保って打ちたいなら、骨盤周りの柔軟性を高めて、骨盤の前傾後傾ができるまでトレーニングをする必要があるわけです。でも、もし、それをしたくないというのなら、前傾が崩れる動きを受け入れなくちゃいけない。
O編 なるほど……。
坂詰 それと、骨盤の前傾後傾ができない人は、腰痛にもなりやすいんです。とくに、構えたときに背骨が反ってしまう人は要注意ですね。
O編 それを直すには、やっぱり柔軟性を高めて、骨盤の前傾後傾ができるようになる必要があるわけだね。
坂詰 はい。それができれば、腰を反らさずに構えられますから。でも、もし、そういうトレーニングはやりたくないということであれば、構えたその場で体を回旋させてスウィングするのではなく、左右に体を揺さぶるような動きでスウィングすればいいんです。
実は、ボクのスクールには、腰痛の人がひとりもいないんです。そういう意味でも、TPIを学んでよかったなぁと思ってるんですよ。
※週刊ゴルフダイジェスト2023年5月30日号「ひょっこり わきゅう。第17話」より