上半身と下半身を分離して動かす
O編 TPIのスクリーニングテストについて聞いてるけど、アベレージゴルファーには、最低限4つのテストをやってもらいたいってことだったよね。1つめは骨盤傾斜のテストだったけど、2つめは?
坂詰 骨盤回旋です。これは、アドレスした状態で、骨盤だけを左右に回旋できるか、というテストです。
O編 詳しく教えてよ。
坂詰 両腕を胸の前で組んで、5番アイアンのアドレスを作ったら、上半身を一切動かさず、その場で骨盤を回旋させるんです。
O編 こ、こんな感じ?
坂詰 お、分離動作はできてますね。でも、ちょっと腰が後ろに引けちゃうかなぁ。
O編 分離動作ができてるって?
坂詰 上半身を動かさずに骨盤を動かせる。つまり、上半身と下半身を分離させて動かすことができるってことです。実は、これができない人、結構多いんですよ。
O編 骨盤だけを動かそうとしたとき、上半身がつられて動いちゃうってことかな?
坂詰 そういうことです。
O編 その分離動作ができないと、どんなデメリットがあるの?
坂詰 たとえば、下半身リードで切り返す動きなんかができないんです。
O編 上半身とクラブをトップの位置に置いたまま、下半身を先行させてダウンスウィングに入っていくような動きだよね。
坂詰 ええ。そのとき、分離動作のできない人は、下半身を先行させられない。下半身と上半身が一緒に動いちゃうんですよ。
O編 下半身リードで切り返したいなら、分離動作ができるようにならなくちゃいけないってことか。
坂詰 そういうことです。で、もし、分離動作ができないままやるなら上半身と下半身を同時に回していくスウィングを受け入れるということになります。
O編 それだと、クラブが外から下りやすいんじゃないの?
坂詰 その場合は、スライスを持ち球にすることになるでしょうね。
O編 上半身と下半身が同時に動いたら、スピードも出にくいよね?
坂詰 そうですねぇ。その人の持つ最大のパワーを引き出すには、やはりエネルギーを下半身、上半身、腕、クラブの順で伝えていくことが大切ですからね。それを可能にするには、分離動作ができるように訓練をする必要があると思います。
O編 訓練したら誰でもできるようになるの?
坂詰 ほとんどの人は、上半身と下半身を分離させて動かすなんて、考えたこともないと思うんですよ。だから、最初は難しく感じるかもしれませんが、努力次第で誰でもできるようになるはずです。
O編 そういえば、さっき、骨盤を回旋させたとき、ちょっと腰が引けてるって言われたけど?
坂詰 理想的には、なるべく骨盤の位置を変えずに、その場で骨盤を回旋させたいんです。それができると、実際にスウィングしたときにも、その場で体をローテーションさせることができますからね。ただ、股関節周りの柔軟性が足りないと、腰が後ろに引けたり、左右にスライドしたりして、骨盤の位置が動いちゃうんですよ。
O編 あぁ、それが実際のスウィングにも表れちゃうってことか。
坂詰 ええ。腰が引ける人は、そういう動きになりやすいし、骨盤が左右にスライドする人はスウェイしやすいんです。
O編 だから、プロみたいに軸のブレない動きができないのかなぁ・・・。
分離動作だけは頑張ってほしい
坂詰 まぁ、プロでも少し腰が引けたり、骨盤がスライドしたりする人もいますからね。それは確かにエネルギーのロスにはなりますけれど、絶対にダメってわけじゃないんです。セルヒオ・ガルシアなんかも腰が右に少し流れるクセがありますし。
O編 そうか。TPIは、100人いたら100人のスウィングがあっていいんだもんね。
坂詰 はい。そのとき、よりエネルギー効率のよい動きを求めるというのであれば、股関節周りの柔軟性を高めて、その場で骨盤を回旋させる動きを身につける。そうでないなら、多少軸が動くスウィングを受け入れて、それでやっていく方法を探るということになるわけです。
O編 それは、それぞれのプレーヤーが判断して選べばいいんだよね? ってことは、分離動作ができないのもアリなのかな?
坂詰 う~ん、どうしてもできないというなら仕方ないんですが、多少腰が引けたり、スライドしたりしてもいいから、分離動作はなるべくできるようになってほしいんですよねぇ。分離動作ができないとスライスが直らないし、スピードも出ませんから。テストを4つに絞ったのは、その4つだけはある程度できるようになってほしいという願いを込めているんですよ。
※週刊ゴルフダイジェスト2023年6月6日号「ひょっこり わきゅう。第18話」より