
今シーズン、初優勝を挙げた岩井明愛、吉本ひかる、山内日菜子、神谷そら(左から)。次に続くのは……
次の初優勝選手を予想したのは南秀樹プロ―コーチ。香川県内の4つの練習場で「3.7.3ゴルフアカデミー」を主宰し、過去に鈴木愛、岡山絵里、木村彩子などを指導、いずれも優勝に導いてきたコーチ。今回は、スウィングの安定感・精度・ショットの力を中心に解説してもらった。
菅沼菜々(23)。初優勝への下地は十分、左1軸的な独創スウィング

菅沼菜々。2000年2月10日生まれ、東京都出身。2018年プロテスト合格。2020~21年シーズン初シード獲得。個性的なスウィンガだが、南秀樹コーチの評価は抜群
昨シーズン、優勝こそなかったがトップ10入り15回と何度も優勝争いに絡んだ菅沼菜々。
今シーズンは、ここまで(リシャール・ミル ヨネックスTまで)トップ10が2度だけと本調子でないようにも見えるが、それでも初優勝にもっとも近い選手だと、南コーチ。
「もともとパッティングが上手い選手ですが、今季は少し感覚が合っていないのかパッティングに苦しんでいるように見えます。そのせいで成績が思ったように伸びていないのだと思います。ショット自体は昨年に引き続きかなりいいのでパッティングが落ち着いてきたら、昨年のように優勝争いに必ず絡んできます」
「スウィングは、とにかく『左に行かないように』との意思を感じます。バックスウィングでワイドにクラブを上げ、左に重心を保ちながらトップへ。トップはいわゆるリバースピボット気味ですが、切り返しで右肩が下がらないようにすることで、クラブ軌道をオンプレーンにうまく乗せています」
「切り返しで早めに腰を切って、下半身のリードでクラブを下ろしているのでハンドファーストにインパクト。このとき右ひじを伸ばし切らずボールを丁寧に押し込んでいるので狙ったラインへボールコントロールもできるのです」
「まったくと言っていいほど腕は使わず、体の大きな捻転と腰のキレが飛距離と正確性の源。ショット力の高い選手ですが、それもこのスウィングのおかげです」
金澤志奈(27)。基本に忠実な回転重視スウィングは、難コースでも力を発揮

金澤志奈。1995年7月29日生まれ、茨城県出身。2017年プロテストに合格、その年のステップ・アップ・ツアーで優勝。2020~21年シーズンに初シード獲得
今季4戦目のアクサレディスでは3位タイ。スタジオアリス女子から4戦連続予選落ちしてしまうが、5月のサロンパスカップでは、3日目終了時に7位(最終20位タイ)など、好不調の波が激しい反面、難しいセッティングを苦にしない強さを持つ。
「アプローチとパターが上手い、ショートゲーム巧者。どんな難しいコースでも対応できるのが金澤プロの強みです。勝負強さという課題はありますが、いつ勝ってもおかしくない選手だと思います」
「スウィングの特徴は、まずはテンポ。金澤プロは最近の選手では珍しく、スウィングテンポがかなりゆっくりしています。164センチと身長があるので、普通なら、‟飛ばそう”と強く振っていきそうなものですが決して強振しません」
「正確性重視のスウィングがFWキープ率11位の成績に表れています。スタンス幅が狭く、左右方向の体重移動がかなり少ないのも特徴で、おそらくドライバーからウェッジまで、すべてのクラブを同じ感覚で振りたいからだと思います」
「体重移動をせずにその場で体を回してトップで捻転差を作ります。そこから左ひじが体の遠くを通るように下ろして遠心力を生かしながらも緩やかなアッパー軌道でボールをとらえています」
「バックスウィングの初期でリストコックするのも彼女の特徴ですが、その角度をフォローまでキープすることでフェースローテーションを抑えて、正確なショットにつなげています。派手さはなくとも基本に忠実なスウィングなので、コースを選ばずに活躍でき、とくに難しいコンディションに強いと思います」
佐久間朱莉(20)。ジャンボさん仕込みの高&強弾道のショット力が際立つ

佐久間朱莉。2002年12月11日生まれ、埼玉県出身。2020年度プロテスト合格、2021年11月下部ツアーで優勝。ジャンボ尾崎ゴルフアカデミー1期生
今季2戦目の明治安田生命レディス初日、大会コースレコードの63を記録した爆発力を持ち、5月のサロンパスカップでは最終日最終組を経験。
さらにリゾートトラストで3位、リシャ―ル・ミル ヨネックスではプレーオフでの2位と着実に優勝へ近づいている。
「初めて練習ラウンドで見た時、球の高さと強さにびっくりしました。ワイドスタンスからクラブをワイドに上げていき、トップでの捻転力が凄い。左足を踏み込んで切り返し、手を低く保ちながらシャロー軌道でインパクト」
「手の位置が低くハンドファーストも保たれているので、シャロー軌道であってもクラブがやや上から入ります。とくにアイアンには好影響の入射角。パーオン率の高さもこのスウィングの賜物で、グリーンの大きなサントリーレディス(6/8~・六甲国際GC)、ショットメーカーが有利なニチレイレディス(6/16~・袖ヶ浦CC新袖C)は期待できます」
竹田麗央(20)。肩を縦に回転させる現代的スウィングの持ち主

竹田麗央。2003年4月2日生まれ、熊本県出身。2021年プロテスト合格。昨季メルセデスランク58位とシードにあと一歩及ばず。今季はQT22位で出場
竹田麗央は、昨シーズンCAT Ladies、ミヤギテレビ杯で最終日最終組を経験。今シーズンはブリヂストンレディス8位タイ、翌週のリゾートトラスト15位タイと上位に顔を出している。
「力感のないトップから、切り返しで一気にクラブを加速させて振り切っていきます。腰はレベルに回転しているのに、インパクト直前は右肩で押し込むように肩は縦回転。インパクト直前の右ひざの位置が左ひざよりも低い位置にあるようにフットワークが巧みです」
「男子選手的なスウィングで、アイアン精度も高い。試合会場では辻村明志コーチも『すごい選手!』と評価するとおり、ポテンシャルはピカイチ。飛距離が出るので、長いコースや雨のコンディションにも強い。梅雨が続く、これからの時期はとくにチャンスだと思います」
※週刊ゴルフダイジェスト2023年6月6日号より(PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroyuki Okazawa、Shinji Osawa)