ゴルフダイジェストアワードで、馬場咲希がジュニア大賞を受賞した。今年2月から毎月、その姿をプロのトーナメントで見ているが、まだ高校3年生の“ジュニアゴルファー”なのだ。 その馬場に、子どもの頃(とはいえわずか7、8年前だが)のことを振り返ってもらうと……。
画像: ジュニア大賞受賞後のインタビュー撮影で、笑顔でジャンプする馬場咲希(Photo/Satoru Abe)

ジュニア大賞受賞後のインタビュー撮影で、笑顔でジャンプする馬場咲希(Photo/Satoru Abe)

「プロゴルファーになりたいという思いがどんどん強くなってきた」(馬場)

「実は初めて全国規模の大会に出たのはゴルフダイジェスト・ジャパン・ジュニアカップでした。4年生だったかな。成績が何位だったかは覚えていないんですけど、とにかく『楽しい』って思った記憶があります。当時はプロになりたいとも思ってなかったですし。夏休み、大会前にお父さんの会社の人たちとかと練習ラウンドしたりして……。

練習ラウンドといってもコースチェックとかはしてなくて、コンペみたいな感じで楽しく回って。とにかく、そのときは『楽しい』でいっぱいだったから、大会の順位もスコアも覚えてないです(笑)。でも、ほかのジュニアの選手と出会って『おお、こんな上手い子もいるんだあ』とは思いました」

試合を「楽しい」と感じた馬場は、その後、本格的に競技の道を歩み全国大会の常連に。そして、2002年8月、17歳での全米女子アマ制覇へとつながっていったのは、読者の皆さんもご存じのとおり。 

プロトーナメントで活躍する現在の環境に

「去年はテレビで見ていた選手たちと一緒の舞台で戦っているなんて、なんだか信じられないような、不思議な気持ちがすることはあります」

と馬場。しかし“テレビの人たち”がしのぎを削るトーナメントは華やかではあるが、同時に常に結果が求められるシビアな世界でもある。それでも馬場は「楽しい」と話す。

「まず、ギャラリーのみなさんの応援がめっちゃうれしいです。ジュニアの大会ではなかった経験なので、プロの試合で拍手や声援をもらって、プロゴルファーになりたいという思いがどんどん強くなっていきました。こんな声援をいつも受けたいなって思います」 

「トッププロの強気のパッティングを見て自分の“甘さ”みたいなものを感じた」(馬場)

そして、かつて“テレビの人たち”だったプロのプレーを間近で体感できるのが大きな刺激になっているという。

「トッププロってほんとにすごいんです。たとえば、小祝さくらさん。感情の浮き沈みがないというか、ボギーを叩いてもごく普通な感じで、で、次にバーディでサラッと取り返す、みたいな。メンタルの保ち方、すごいなーって。しかも優しくて面白い方なんです。いろいろと話しかけてくれるんですが、お話ししていると、なんだか癒されちゃう(笑)」

吉田優利とは対談をしたことがあるという。

「とにかくかっこいいんです! すごくオーラがあって“プロゴルファー”って感じ。パッティングも強気で、見ている人を惹きつけるプレーをしますよね。憧れます」

馬場は自身の課題としてパッティングを挙げる。

「去年の10月の富士通レディースで、小祝さんや優利さんと一緒に回ったとき、二人の強気のパッティングを見て自分の“甘さ”みたいなものを感じたんです。実は私、そのとき、プロの試合に少しずつ出させてもらうようになったこともあって、ちょっとプレッシャーを感じていて……。怖がっていたんです。特にパッティングに“怖さ”が出てしまっていたと思います。全然打てていなかったんです。

でも、小祝さんも優利さんもプロだから、周囲の期待やプレッシャーはアマチュアの私よりずっと大きいじゃないですか。そんななかでも、強気で攻める姿勢がまったく崩れないんです。その姿を見ていたら、ああ、私は甘いなって。怖さに打ち勝つようなプレースタイルを確立したいと思って、今も特にパッティングで強く意識しているんです」

大事なことは「成功体験」と「チャレンジ」

画像: 昨年5月全米女子アマを制した馬場。7月は全米女子オープンに挑戦する予定だ(Photo/Yasuhiro JJ Tanabe)

昨年5月全米女子アマを制した馬場。7月は全米女子オープンに挑戦する予定だ(Photo/Yasuhiro JJ Tanabe)

“強い思い”に関しては、昨年5月、まだ全米女子アマ制覇の前だが、貴重な経験があったという。

「ブリヂストンレディスにどうしても出たかったんです。ブリヂストンさんにはずっと良くしていただいていたので、恩返しじゃないですけど『この大会に出たい』と、すごく思っていたんです。それでマンデートーナメントにチャレンジしました」

結果、マンデーをトップ通過。本戦出場が叶うと、予選も通過し、28位タイに食い込んだ。それまでは、楽しんでプレーして結果がついてくるというケースも少なくなかったが

「そのときは、どうしても出るんだと思ってマンデーに臨んで、実際に結果が出せた。気持ちの持ち方がそれまでとは違っていたんです。あれは大きかったです。成功体験っていうのかな、間違いなくそのひとつだったと思います」

小さくてもいいので成功体験を積み重ねていくのは

「ジュニアゴルファーにもいいことだと思います」

と馬場。“積み重ね経験者”の言葉が響く。

「あとはチャレンジも大事かな。去年から、全米女子アマもそうですけど、海外でのプレーが増えています。最初はドキドキでした。でも、最近は選手の輪にも入っていけるようになりました。“Hi ,I m Saki Baba みたいな感じで自己紹介しながら話しかけて。拙い英語でも、こちらが伝えようとしていると相手も聞き取ろうとしてくれるんです。

だから、間違ったらどうしよう、恥ずかしいとかじゃなくてチャレンジです。顔見知りの選手も増えてきたので、再会したときには“Long time no see とか“Nice to see you againとか。選手はだいたいインスタをやっているのでメッセージを送り合ったりもします」

「将来の夢は海外のメジャーで勝つこと」(馬場)

迷ったらチャレンジしてみるのも馬場咲希流だ。2月の米女子ツアー、ホンダLPGAでは

「チョン・インジさんが話しかけてくれたんです。私のことを覚えていてくれたんだーと思ったら嬉しくて」

そんな嬉しさも成功体験のひとつ。

「将来の夢は海外のメジャーで勝つこと」

と話す馬場。米メジャー出場は昨年の全米女子オープン、今年のシェブロン選手権で経験済み。7歳のとき、小さな試合で競技を始め「最初は強い選手じゃなかった」けれど、「楽しい」「できた」「嬉しい」「やるぞ」の体験を積み重ねて、今、自分の夢を明確に描けるステージにいる。 

4月25日に18歳になったばかり。

「買い物に行ったり遊んだりとかは全然です。昨年末、タイでちょっと行ったのが最後かな。でも、私は今“そんな時期”だと思うから、つらいとか不満とかじゃないんです。頑張れるし楽しい」

アワードの授賞式は、ツアーの合間の月曜日に行われた。

「疲れていない?」と聞くと「昨日10時間寝たから大丈夫ですー」。 

予定では、6月8日から宮里藍サントリーレディスオープン、7月6日から全米女子オープンに参戦予定。

「忙しいけれど楽しみ」と目をキラキラさせる18歳が上る階段を見守りたい。(文中・敬称略)

※週刊ゴルフダイジェスト2023年6月13日号「インタビュー・さあ、世界は舞台だ」より

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