
今季4勝目を挙げた山下美夢有。「結果で恩返しすることができて、本当にうれしいです」と父に感謝のスピーチ(撮影/大澤進二)
「コーチである父は本当にいつも支えてくれて……」(山下)
女子ゴルフの今季国内ツアー第16戦、ニチレイレディース最終日が18日、千葉県の袖ヶ浦CC新袖C(6621ヤード、パー72)で行われ、単独首位から出た山下美夢有(21)が3バーディ、ボギーなしの69で回り、通算17アンダーで逃げ切った。3日間トップを譲らない完全優勝で今季4勝目、通算10勝目。
史上初めて姉妹で最終日最終組を回った岩井ツインズの姉・明愛が通算14アンダーで2位、妹・千怜が通算12アンダーで佐久間朱莉と3位を分けた。
山下は熱い思いが込み上げ、思わず声を詰まらせた。
18番グリーン上で行われた優勝スピーチ。
「今日は父の日に10勝目を挙げることができてすごくうれしいです。コーチである父は本当にいつも支えてくれて……。ゴルフ以外でも私のために頑張ってくれているので、結果で恩返しすることができて、本当にうれしいです」
この日は父の日。優勝の喜びをコースで見守ってくれた父・勝臣さんに真っ先に届けた。
まったくスキを見せなかった。2位に4打差をつけ、最終組で岩井姉妹とともにスタート。8番で岩井明愛がグリーン左ラフから右手一本だけでチップインバーディを決め、この時点で2打差に追い上げられたが、冷静さを失わなかった。
10番で3打目を2メートルにつけてバーディを奪うと、13番はピンまで残り154ヤードの2打目を1メートルにピタリ。逃げ切り優勝を確実にした。
山下はコーチの父に感謝! 岩井姉妹は父に「2人の夢」をひとつ叶えた!

史上初の"姉妹最終日最終組対決"と山下VS岩井姉妹の"ライバル対決"で今大会は大いに盛り上がった(撮影/大澤進二)
山下は昨年、母の日にワールドレディスサロンパスカップで優勝。
最終日が父の日に当たる今週は勝臣さんへの感謝の気持ちを原動力にした。アマチュア時代に必死に練習に取り組んでいた頃を振り返り、
「父は仕事からの帰りが(午後)8時くらいと遅かったのに、そこから12時頃まで毎日欠かさず練習についてきてくれた。そういう思いがあったので、今大会は強い気持ちで挑みました」
と感慨に浸った。
岩井姉妹も山下と同じように、今週は父・雄士さんへの思いを強く抱いていた。
岩井明愛は前日の第2ラウンドでトーナメントコースレコードを更新する62の自己ベストマーク。最終的には2位に終わったが
「今日は父の日なので(姉妹で最終日最終組を回れて)、2人の夢がひとつ叶った。少しは喜んでもらえたのかなと思う」
最終日4連続バーディで追い上げた岩井千怜も
「自分のプレーは悔しいけど、夢がひとつ叶った日。うれしい気持ちもあります」
と充実の笑みもうかべた。
山下と岩井姉妹の強さの秘密は100Y以内の精度の高さ!?

平均ストローク唯一の60台でツアートップの山下。100ヤード以内の精度の高さが際立っている(撮影/大澤進二)
それにしても、今季前半戦は山下と岩井姉妹の活躍が際立っている。ここまで16試合を終えて、年間女王争いでもトップの山下が4勝、岩井千怜が2勝、岩井明愛が1勝を挙げている。5月のRKB×三井松島レディースではこの3人でプレーオフを行い、岩井明愛が優勝。
山下はそこで悔し涙を流したが、今季の女子ツアーがこの3人を中心に回っていることを印象づける大会となった。
この3人の強さと安定感を支えているものは何か。
プロコーチの大西翔太氏はこう話す。
「山下選手は100ヤード以内の精度が非常に高いです。私が青木(瀬令奈)プロのキャディで一緒に回った時も、全ショットがピンに”筋”っていました。具体的には100ヤード以内は毎ホールがチャンス。150ヤード以内でも3、4メートルに寄せてくる感覚ですから、同組の選手はこれじゃあ勝てないと思ってしまいます。
100ヤード以内の精度は岩井姉妹にも共通するものがあります。この3人はゴルフが本当に好きなんだと思います。どの選手も皆努力はしますが、好きという気持ちには勝てない。この3人はゴルフが好きな上に人一倍努力をしている。この勢いは当分続くと思います」
今季は次戦のアース・モンダミンカップ以降22試合が残っている。
山下、岩井姉妹がどこまで勝利を積み上げるのか――。