練習ラウンドではちゃんとできていた、手前から攻めるはずの戦略が、本戦が始まったとたん、なぜかできなくなっていた。それが山下の焦りに繋がったように見える初日のラウンドだった。
「1番ホールも2番ホールも、フェアウェイのいいところからのボギーだったので、そこがやっぱり一番もったいなかったなと思います」と、山下は振り返る。
1番ホールは、フェアウェイの絶好のポジションからピンまで残り121ヤードを右手前バンカーに入れた。今週はショットがブレていたという山下は、続く2番パー5でもセカンドショットが少し左に飛び、木が邪魔でサードショットが狙えなかった。思いもかけない連続ボギースタートによって、遅れを取り返そうと山下は強引に攻めていった。
「攻めてしまう気持ちがあって、やはりもったいなかったと思います」(山下)
一方、山下と同じ組で回ったキム・ヒョージュは、山下がやりたかった攻めと守りの緩急をつけたゴルフで4アンダー、トップタイでフィニッシュした。
たとえば平均スコア4.460と最難関の10番パー4は守りのホール。キムはあえてこのホールでグリーンを狙わず、バンカーに届かないクラブで打ち、グリーンの手前から楽なパーを取っている。一方の山下は、ピンまで届かせようと、絶対に寄せられない左のバンカーに入れてしまいボギー。ただし、このホールのキムの攻め方を見て、山下のゴルフは徐々に本来の落ち着き取り戻してきたように見えた。
「マネジメントのミスがあったと思います。奥につけてしまっていたのは、まだまだ計算ができていない証拠ですね」(山下)
芽がきついポアナ芝(スズメノカタビラ)のグリーンは、傾斜通りになめらかに転がるベント系の芝とは違い、グリーンが読みにくい。ましてや14時2分からスタートして19時過ぎにフィニッシュする山下の組にとっては、多くのプレーヤーに踏み荒らされたグリーンは、下りのラインがとくに難しくなる。おそらく頭ではわかっていたはずだが、早くボギーを取り返したい山下は、4番、7番、9番、14番でピン奥に付けてしまい、なかなかバーディが取れない。苦しいラウンドが続く山下にようやくバーディが訪れたのは15番。最終18番でも見事なサードショットでピン手前につけ、バーディを奪った。
1番、2番、10番、12番でボギーを打ち、15番、18番で取り返し、初日を2オーバー39位タイで終えた山下美夢有。
「明日は今日のことを忘れて、できるだけボギーを減らして、バーディチャンスにつけたいと思います」と前を向いた。
PHOTO/Yasuhiro JJ Tanabe