「我が子がゴルフで成功するのためには、何をすればいいのか」。多くのジュニアゴルファーの親がその答えを探し、日々悩んでいることだろう。300人を超すトップジュニアを取材してきた武市悦宏プロ(47)と、渋野日向子はじめ多くのジュニアゴルファーを育ててきた青木翔コーチ(40)、そして、文武両道を貫きツアープロとして活動する上田敦士プロ(26)の3人に、「答え」を出すために集まってもらった。120分間に及ぶガチンコで話し合った結果、出た結論は……。

ゴルフで結果を残す選手の共通点とは?

青木 武市プロは、週刊ゴルフダイジェストの『キミこそ王子だ!』というジュニアゴルファーを取り上げる連載で、インタビュアーをしてますよね。

武市 もう9年近く続いていて、中高生を中心に300人以上に話を聞いてきたよ。

青木 300人も! しかも大会で上位に入っているような子ばかりですよね。たとえば誰に会いましたか?

武市 女子だと畑岡奈紗選手、小祝さくら選手、岩井姉妹選手。全米女子アマに勝つ前の馬場咲希さんとか。男子も金谷拓実選手や青木コーチが教えてた蝉川泰果選手とかね。実は300人のジュニアに会った中で、一番多く「先生」として名前が挙がってたのが青木コーチでした。

青木 本当ですか? うれしいです。ツアープロのコーチとして紹介されることがほとんどだけど、ジュニアはずっと昔からがんばっているので。

武市 で、その連載の第1回に登場してくれたのが上田敦士プロだったんだよね。

上田 当時は高校2年でした。でも、その頃はプロゴルファーになる気はなくて、特に将来目指すものとかはありませんでした。

武市 そう言ったのは、300人会った中で2~3人くらいだね。他はみんな「プロを目指してます!」って言ってたから。

画像: 青木翔(右/1983年生)、渋野日向子の全英女子優勝をサポート。2020レッスン・オブ・ザ・イヤー。武市悦宏(左/1976年生)、ツイスト打法考案、飛距離を100Y伸ばし2013レッスン・オブ・ザ・イヤー。上田敦士(中/1997年生)、名古屋大卒プロ。アジアを中心にツアー挑戦中

青木翔(右/1983年生)、渋野日向子の全英女子優勝をサポート。2020レッスン・オブ・ザ・イヤー。武市悦宏(左/1976年生)、ツイスト打法考案、飛距離を100Y伸ばし2013レッスン・オブ・ザ・イヤー。上田敦士(中/1997年生)、名古屋大卒プロ。アジアを中心にツアー挑戦中

上田 自分が「ツアープロになりたい」って思ったのは、大学2年のときです。

武市 経歴を考えると変わってるよね。中学から超名門の私立校に受験して入って、大学も国立の名古屋大学に現役合格。頭もキレキレなんだよ。

青木 すごいね! 親御さんたちが思い描くお手本みたいな感じだ。

武市 そうそう。だから今回来てもらったんです。頭のいい子もプロになる子も数は結構いるけど、両方できちゃってる子ってなかなかいないから。

青木 僕がこれまで教えてきたジュニアたちも、ほとんどがプロ志望だったかな。当時の“上田くん”は何をモチベーションにゴルフをしていたの?

上田 ただただ上手くなりたいって、それだけでした。僕、ゴルフが好きなんですよね。

武市 それ、その後プロになって活躍した子はほぼみんな口にしてた。

青木 結局、好きじゃないと技術を突き詰められないんですよ。お二人はわかっていると思うけど、きれいなスウィングで振れたり、いい球を打つのってある程度がんばればできるようなる。

上田 なるほど、そうかもしれませんね。実際、周りでも上手な子はいくらでもいましたから。

青木 でも、そこから先のプロテストに合格するとか大事な試合で勝つことをイメージして地道な基礎練を続けるみたいなのって、本当にゴルフが好きじゃないとできなんですよ。自分がどんな選手になってどう活躍するかって好きだったら勝手に考えるけど、好きじゃなかったらずーっと言われたとおりに球を打ってるだけだから。

武市 上達する方法って、球を打つだけじゃないもんね。僕もジュニアの頃からゴルフが大好きだったから、棒状のものを見つけたら所かまわず振っちゃってたわ。ずーっとゴルフのこと考えてたな。

上田 自分も今、歩き方とかを結構気にしてて、日々どうやって身体を動かしたら、スッとアドレスに入れるか、なんてことばっかり考えてます。

武市 相当好きだね(笑)

画像: ゴルファーである前に、人としてどうあるべきかを考え、ジュニアやプロの指導にあたっているという青木コーチ。スマホ撮影した渋野日向子のスウィングを、本人と確認し合う(今年の初旬、練習場で撮影)

ゴルファーである前に、人としてどうあるべきかを考え、ジュニアやプロの指導にあたっているという青木コーチ。スマホ撮影した渋野日向子のスウィングを、本人と確認し合う(今年の初旬、練習場で撮影)

青木 そういうのって「プロになりたいならこれくらいやりなさい」って言ってもできるものじゃない。プロテスト合格前の渋野は、週3日、僕のアカデミーに通って何百球も単調なアプローチ練習を繰り返していました。遊びたい盛りの年頃でも、本当にゴルフだけの生活だった。好きじゃなきゃそこまでできなんですよ。

我が子をゴルフ好きにするには?

上田 じゃあ、どうやったらゴルフが好きになるんですか? って質問がきそうですね。

武市 さすが、先読みするね。

青木 ずばり、ゴルフを好きにするのは無理です。

上田 その答えだと親御さんたちが困っちゃいますよ。

青木 でも、上田プロは親から「好きになれ~」って言われ続けたわけじゃないでしょ?

上田 勝手に好きになっていました(笑)

武市 上田くんってゴルフを始めたキッカケはなんだったけ?

上田 小学生のときは野球少年だったんですが、ひじをケガして小学6年から遊び感覚でゴルフを始めました。ちなみにテニス、ラグビー、スポーツ以外でもピアノとか、とにかく「やりたい」と言ったことはなんでも経験をさせてくれて、残ったのがゴルフだったという感じです。

武市 じゃあ、タイミングによっては他の道に進んでいたかもしれないってこと?

上田 野球もすごく好きで、小学生のときは1年のうち360日くらいやってました(笑)。そしたらひじを壊してしまって。正直、ケガをしてなければ野球を続けてたと思います。

青木 子どもって何に“ハマる”か分からないんですよ。だから、それが見つかるまでとにかく色んな経験をさせてあげることが大事だと思います。

武市 その上でゴルフを好きにならなかったら仕方ないよね。もうその道じゃないってことだもん。

画像: アマチュア時代の岩井明愛・千怜姉妹と、弟の岩井光太くん。週刊ゴルフダイジェストの連載「武市悦宏の、キミこそ、王子だ!」取材時

アマチュア時代の岩井明愛・千怜姉妹と、弟の岩井光太くん。週刊ゴルフダイジェストの連載「武市悦宏の、キミこそ、王子だ!」取材時

青木 僕もあまりレッスンが楽しそうじゃない子には、ゴルフより好きなことがあるか聞きます。「ある!」って言われたら、じゃあそっちやったほうがいいよ!って。ゴルフの記事でこんなこと言うと怒られちゃうかもしれないけど(笑)。

上田 好きじゃないのに続けるのはツラいですもんね。

青木 強くなる子=ゴルフが好きっていうのはそういうことだよね。

武市 親は子どもにゴルフをさせたい気持ちはわかるけど、主役の子どもがやりたくないと言っているなら尊重しないといけない。子どものことを本当に愛しているなら、親自身が気持ちの切り替えが必要だと思う。そうしないと、子どもだけじゃなく家庭全体が不幸になってしまう可能性があるからね、これホントに。

ゴルフが好きになるほど上達するというのが共通した3人の意見。では、もし子どもがゴルフを好きになったら、親は何をすべきなのか。続いて、親の役割から子どもがゴルフで成功する方法を考えようと思ったところ、3人の口から飛び出したのはゴルフ界にはびこるとんでもない毒親たちの実態だった。

我が子をゴルフで成功させる唯一の方法(後編)はこちらから

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