コーチ専用のゴルフスウィング解析アプリ「スポーツボックスAI」は、スウィング動画をAIによる3 D解析技術でデータ化することができる。今回は海外メジャー「全英オープン」を制したブライアン・ハーマンのドライバースウィングをゴルフコーチ・北野達郎がAIを使って分析した!

ワイドスタンスでも身体の回転量が大きい

皆さんこんにちは。SPORTSBOX 3D GOLFスタッフコーチの北野達郎です。今回は全英オープンで、ただ1人の二桁アンダーで見事な初優勝を遂げたブライアン・ハーマンのドライバーショットをスポーツボックス AIで分析してみましょう。

画像: 海外メジャー「全英オープン」を制したブライアン・ハーマン(写真は2023年の全英オープン 撮影/姉崎正)

海外メジャー「全英オープン」を制したブライアン・ハーマン(写真は2023年の全英オープン 撮影/姉崎正)

彼は身長170センチと小柄な選手ですが、そのスウィングは、身体とクラブをフルに使った実にシャープで鋭いスウィングです。特徴は、①ワイドスタンスでも身体の回転が多い、②手首のコックによるクラブのラグが大きい、③アドレスとインパクトでシャフトの角度がほぼ重なり、前傾が深くキープされている、の3点が主です。それでは早速見てみましょう。

まずアドレスで特徴的な点は、スタンス幅が広く、ボールをかなり右足寄り(右利きの左足)に置いている点です。このボールポジションについては、インパクトの際に後述します。

画像: ワイドスタンスで、右腕からクラブまでが一直線になるよう構えることで、ハンドファーストなインパクトポジションをアドレスの時点で作っている

ワイドスタンスで、右腕からクラブまでが一直線になるよう構えることで、ハンドファーストなインパクトポジションをアドレスの時点で作っている

また、右腕からクラブまでを一直線に構えて、ハンドファーストのインパクトポジションをあらかじめアドレスで作っています。正面からスウィングを見た時のシャフトの角度を表す「SHAFT ANGLE FACE ON」は、−4.1度で、ややハンドファーストのポジションです。

この構え方は、インパクトポジションをアドレスの段階からイメージしやすくなる効果があり、ハーマンはこの角度がインパクトでほぼ誤差なくボールにコンタクトします。

続いてトップを見てみましょう。トップでの1つ目の特徴は、スタンス幅が広いワイドスタンスながら胸と骨盤の回転量が大きい点です。胸の回転を表す「CHEST TURN」は−93.2度、骨盤の回転を表す「PELVIS TURN」は−45.4度、胸と骨盤の捻転差を表す「X-FACTOR」は−52.8度と、それぞれ十分な回転量と捻転量があります。通常スタンス幅が広くなると身体の回転は制限されるのですが、ハーマンの場合はスタンスが広くても十分な回転を出せるフィジカルの持ち主であることが分かります。

画像: ワイドスタンスながら身体の回転量が大きい。また、手首のコック量もPGAツアープロの平均を大きく上回っている

ワイドスタンスながら身体の回転量が大きい。また、手首のコック量もPGAツアープロの平均を大きく上回っている

そして、トップでのもう1つの特徴が手首の柔らかさです。左手首(ハーマンの場合はレフティなので右手首)の縦コックの量を表す「LEAD WRIST ANGLE」は、67.8度で非常に鋭角な角度です。SPORTSBOX AI社が独自で統計を取ったPGAツアープロの範囲(レンジ)は、78.3度~99.3度ですので、それを大きく上回る角度です。次の切り返しのP5(腕が地面と平行のポジション)での手首のコックの角度も74.4度と鋭角に保たれており、「ラグ」と呼ばれるクラブのタメに繋がっています。

インパクトで頭の位置を下げて側屈と前傾をキープする

そしてインパクトを見てみましょう。先ほど「インパクトのポジションをあらかじめアドレスで作っている」と解説しましたが、写真を見てもお分かりのようにアドレスとインパクトでクラブのポジションがほぼ同じです。インパクトポジションでの「SHAFT ANGLE FACE ON」は、−5.3度、先ほどのアドレスでのシャフトの角度は−4.1度、その差たった1.2度です。昔から「インパクトはアドレスの再現である」とよく言われますが、ハーマンは見事にそれを再現していることが分かります。

画像: インパクトとアドレス時のクラブのポジションはほぼ同じ。ただ頭の位置はアドレス時より下に動き、前傾と側屈がキープされている

インパクトとアドレス時のクラブのポジションはほぼ同じ。ただ頭の位置はアドレス時より下に動き、前傾と側屈がキープされている

ただし、そのポジションを作る為にアドレスと異なる点もあります。それは頭の高さを表す「FORHEAD LIFT」、胸の側屈を表す「CHEST SIDE BEND」、胸の回転を表す「CHEST TURN」の3点です。

まず頭の高さですが、インパクトで−3インチ(約7.6センチ)、頭がアドレスより下に動いています。この記事をご覧頂いているゴルファーの方にも「インパクトで頭を残す」というレッスン用語をお聞きになったことがあるでしょう。ただし、「頭を残す」だけでなく、胸の側屈も前傾のキープには重要な動きです。

ハーマンの胸の側屈はインパクトで38.9度アドレスより大きく左サイドに傾いています。このように左サイドへの側屈が入ることで前傾は保たれますが、その2点だけでも「インパクトでアドレスの再現」をするには不十分です。何故なら胸の左側屈が入るとクラブの最下点はボールの手前になりやすく、ハンドファーストになりにくいからです。

なので胸の回転も重要になります。インパクトでの胸の回転は41.3度で、こちらもアドレスのポジションに比べるとかなり回転していることが分かります。この胸の回転が多くなることでクラブが遅れるので、アドレスのシャフトアングルとほぼ変わらないハンドファーストの角度でインパクトを迎えられる訳です。

これだけハンドファーストに打てるので、先述しましたボールの位置は右足寄りにしないとフェースアングルがスクエアに戻ってきませんし、入射角(アタックアングル)もダウンブローになってしまいますので、この右足の前のボールポジションは必然と言えます。

今回はブライアン・ハーマンのドライバースウィングについて解説させて頂きました。全英オープンらしい風雨の厳しい天候の今大会で、クラッチパットをことごとく決める粘り強いゴルフで独走した彼のプレーは、体格のハンデを全く感じさせない見事なものでした。

彼は小柄でPGAツアープロの中でも決して飛ぶほうではないですが、スポーツボックスのスウィングデータが示す通り、その体格を補えるだけの柔軟性やフィジカルは十分に持っている選手。「小手先で置きにいくスウィング」ではなく「身体とクラブをフルに使ってシャープに振り切るスウィング」だからこそ全英オープンで優勝出来たと思います。小柄なハーマンの切れ味鋭いスウィングは、我々日本人ゴルファーにも良い参考になるでしょうね!

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